エリーザ・ホーフェンのレビュー一覧
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ネタバレドイツの法律家で作家さんとなると、真っ先にシーラッハが思い浮かんだ。あちらは淡々とした文章が魅力で、こちらも簡潔な文章ではあるものの、主人公の迷いや苦悩を感じられ、読者も思わず一緒に腹を立ててしまうような、より肉付けがされた物語となっている。
主人公の女性弁護士エーファは、刑事事件が専門。有能で世間の注目を集めるような大きな事件を担当することも。
プライベートも割いて仕事に没頭してしまうのは、昔自分の結婚式や新婚旅行で、結果を過信し、対応がおざなりになり、想定外の裁判結果に絶望した依頼人が一家心中をしてしまったから。
だが、依頼人は弁護人に真実を語るとは限らない。時には利用され、有罪の人物を無罪にしてしまうことも。またはその逆も。
短編はどれもめちゃめちゃ面白い。続編も楽しみ。 -
Posted by ブクログ
裏表紙の著者紹介を見ると、エリーザ・ホーフェンという方は刑事法を専門とする現役のライプツィヒ大学法学部教授兼ザクセン州憲法裁判所判事となっています。
主人公エーファ・ヘアベアゲンは六十代の刑事弁護士、夫ペーターは仏文学者の大学教授という設定です。
彼女が弁護士として扱った九つの事件それぞれを法律ミステリーの短編として描いていますが、それぞれが微妙に彼女の心情に影響するという仕立てになっています。
①正当防衛
②生かしておく
③少年兵
④塩
⑤人食い
⑥遺稿
⑦強姦
⑧自白
⑨シュテファン・ハインリヒ
最初は、ちょっと読みにくかったのですが、読み進むにつれて加速していき、最後の方では頁を繰るのがもどかしいくらいになりました。
日本語訳の問題かなと思っていたところ、途中からどうもドイツ語原文が、刑事法学者らしく事実関係を厳密に書き込んでいることに起因するのかも知れないと感じるようになりました。
ともすると冷たく冷徹な印象を持たれがちな法律、その中でも厳密なドイツ刑法学の素材ではありますけれども、結構浪花節的なところを前面に出しています。
原題は「Dunkle Momente」、暗黒というよりは「どす黒い」、瞬間という意味もありますが「Moment」には、辞書的には要因とか契機、局面という意味もあり、全体的には「どす黒い契機」という感じの短編集です。
付箋を貼ったところ
・拘置所長はたいていの場合、収容者の生活を少しでも耐えやすくしようと多大な努力をしている。拘置所で働く人の多くは大学で社会教育学を修めており、アメリカの映画に出てくる拘置所職員とはまったく違っている。(173頁)
・ドイツの検察官は有罪判決を勝ち取るようにとの圧力を上層部から受けたりはしない。(187頁)
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Posted by ブクログ
ネタバレ弁護士が依頼人を信じて味方にならなきゃいけないのはわかるけど、エーファが結構色んな人に嘘つかれまくってて、見抜けないのかな?って少々不安になる。私だったら人を見る目がない自分にイラつくし、こんなに護ってるのに裏切られるなんてやってられっかあ!!ってそっこー転職するなと思った。
とはいえ色々な事件の話を読んで、そりゃあ、あの時こうすれば、っていうのはいつも後になって、客観視したときに見えてくるものだよね、、とかも思った。
何よりペーターが常に味方で、側にいてくれて、なんでも相談できる存在というのが素敵だった。
★・・・面白かったな指数
①クレーバッハ★
正当防衛のフリして実際は怒りに身を任せて少年を殺害。
(エーファのうっかりレベル2)
「娘の大学のレポート書くのに手伝ってほしい」と言われて助言したが、実はそれはクレーバッハが助かる方法を教えちゃっていた。
②ラリッサ★★
マネージャーである兄のクリストフを殺害。
本は全部自分で書いたものではなく、兄のゴーストライターだっただけ。ある日兄が「やっぱ自分の名前で本出したい!」と言い出したのでキレて殺しちゃった。
(エーファのうっかりレベル3)
ラリッサに「昔、兄に虐待されてて、、」と悲劇のヒロイン演じられて信じてしまったので、自首はせず、兄を埋めなさい&行方不明ってことにしておくよう助言をしてしまう。
③オケロ(旧:デンべ)★
少年兵。
(エーファのうっかりレベル0.5)
「アサンテ生きてるかもって言ったけど死んだよ。でもそう言ってあげたらキアノさん喜ぶと思ってー」と嘘のハッピーエンドを提供しているやつだったということに気付けなかった。
④ゼルマ★★★
不倫相手が奥さんと別れて、自分と一緒に住んでくれることになったところまでは不倫の成功パターン。ただし週替わりに連れ子のキーマの相手しなくちゃいけなくて、しかもその子が結構厄介。ある日怒りがピークになった時、チョコプリンに塩かけてたキーマに「全部食べろ」と言って食べさせたら、ナトリウム中毒になって死んだ。
(エーファのうっかりレベル1)
不倫相手のパトリックはまた不倫してるだろうしクソすぎる環境の中頑張ってたゼルマだけど反省をして刑務所に行くことを望んでいたのに、エーファが無罪にしてくれて、それがゼルマには耐えられなくて家を出てどっか行っちゃった。
⑤シャンツァー★
人を食べることに憧れがあって、ネットで出会った「食べられる願望」がある人とそれを実行。
(エーファのうっかりレベル1)
確かに人を食べたけど、人殺しはしてなくて、「自らで死んだ人を食べただけなんです!」と庇い、結局執行猶予付きに持っていくことができた。
が、後日シャンツァーはまた同じようなこと繰り返すことになる。
⑥遺稿
記憶に残ってないので飛ばす。
⑦ゾフィア★★★
クラブで10人の男にたらい回しにレイプされる。
仲間の1人は途中で抜け出したためこれに加わってないことがケバブ屋の証言からもわかっているが、
男たち数人が「僕がその1人です」と言った為
ゾフィアとその母(マルティナ)が作戦に出る。
多分ケバブ屋にお金渡して嘘の証言をさせて、「10人では無く、11人全員に強姦されました、てか殺されそうになりました」という事実を作り上げる。
(これはエーファ途中で降りたのでうっかり無し。)
抜け出した1人(たぶん花婿)がかわいそうすぎた。けどこれはもう「こういう人たちとつるんでた自分が悪い」と思ってくれ。
⑧ルートヴィヒ・フリートリクセン★★
イケメン医師。母親も妻もウザいので、一緒に始末してしまおう作戦を決行する。人を騙す力に長けてる+イケメンなので色々上手く行った。
(エーファのうっかりレベル3)
おいおいおいおい。うっかりしすぎ。自白したイケメン医師を庇って、妻に違いない!と決めつけマスコミにもホラ吹いて法廷でもホラ吹いて、「これは私が作り上げた嘘です。その嘘に乗ってきたということは・・・あなたは嘘をついています!」とコナンばりに決めたのに(コナンがそんなこというのか知らんが)バッチリ犯人はルートヴィヒでした。
⑨シュテファン・ハインリヒ★
美人な奥さん持っちゃったもんだから周りに負けないように出世に必死になり、裏口座作ってロシアに賄賂したらバレた。長年会社全体でやってきたことだから助かると思いきや同僚であり友人でもある財務部長に裏切られ、もうダメだーとなり一家心中。
(エーファのうっかりレベル3)
エーファは結婚式と新婚旅行の準備で忙しかったから途中でこの件は新人に交代。まさかこんな大惨事になるとは思わず。
「すべてよし」
なにがどう「すべてよし」なのか分からないが、ルートヴィヒだけは許すまじ!となって体に携帯貼り付けて録音。それをマスコミに送る予定とのこと。 -
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SNSで見掛けて気になっていた作品。
30年以上のキャリアに幕を引くことを決意した、ベルリンの刑事弁護士エーファ。凄腕で知られる彼女は、多くの忘れがたい事件を手がけてきた。子供を誘拐して少年兵として訓練してきたウガンダ反政府軍の元兵士、己の性的欲求を満たすため人肉を食べた学校教師、不倫で奪った男の子供に危険な量の塩を食べさせた女子大学生ー…。
ドイツを舞台にした法と罪を巡る連作短編集。
タイトル通り、まさに「暗黒の瞬間」が描かれていて、人間の弱さ、身勝手さ、狡猾さを改めて思い知らされた。
特別な悪人が出てくるわけではなく、猟奇的とか非現実的なことが描かれているわけでもなく。
「自分を守るための嘘」や「その場の感情」、「ちょっとした欲」みたいな、誰でも持ち合わせているものの積み重ねの結果が「罪」に繋がるというリアルさが怖かった。
「法」がテーマなので正しさと感情がせめぎ合う構図に強く心を揺さぶられ、読み応えがあった。
短編集ってサラッと読める分、内容を忘れがちで( 'ᵕ' ; )
でもこちらは1つ1つの事件に重みがあって、いつまでも心に残り続ける感じがしたし、何より物語の構成が私の好みど真ん中♡
特に第4の事件、第7の事件、第8の事件が印象的で「そう来るか…!」と、静かに打ちのめされた。
罪を犯した人だけではなく、弁護士エーファの内面がしっかり描かれていることで、結局人ってどの立場にいても人間でしかないんだよな…と感じた。
人は誰しも間違いを犯してしまう。
大切なのは、その事実にどう向き合うかだ。
ドイツでは5月に続編が刊行されるそうで。
日本でも刊行されたら絶対読みたい!\( ˆoˆ )/
短編集が苦手な方にもオススメです✧*。 -
Posted by ブクログ
ネタバレミステリとして、ものすごく秀逸である本作。
けれど滲み出る人間の欲深さや執念に恐れ慄きました。
特に「強姦」。中でも1番センシティブな話であり、個人的には1番人間の醜さを感じた話でした。手を出した男たちが100%悪い。
けれど、ただ1人罪を犯さなかった男。その1人が誰かわからないために、全員が無罪にされる可能性がある。本当にしていない男が1人いるけれど、他は自分が無罪になりたいがために嘘をつく。この期に及んで逃げようとする悪質さに嫌気がさしました。
対して被害を受けたゾフィア。彼女と母は全員が無罪になってしまうのであれば、罪を犯していない1人も含めて全員有罪になればいい。そう考えて行動する。彼女は確かに被害者だったけど、加害者にもなってしまった。
本当はああだろうと思いつつ、その証拠がない以上法律に則って判断しなければいけない、弁護士という職業は難しい。望んでいなくとも加害者になりうる職種ではないかと気付きました。本作はあくまでミステリだけれど、私には恐ろしいホラーのように感じました。