エリーザ・ホーフェンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレドイツの作家さんはほとんど初めてかも。(ミヒャエル・エンデくらいかな)
この作家さんは法律家でもあるとあって、とにかくリアリティがすごい。
まるで自分がその事件そのものの目撃者かであるように感じさせてくれて、気づけば没入している。
内容としてはいくつかの事件にまつわる短編を読み進めるうちに、主人公エーファの暗黒の瞬間が浮き彫りになってくる、という連作短編集の構成。
ひとつひとつの物語についても考えさせられるし、全体を通してみたときにエーファの弁護士人生の暗黒の瞬間が浮き彫りになっていくところが、読みたいのに読みたくない何とも暗い気持ちにさせてくれる。
人は誰でも間違えるし、時にはとんでもない間違いをおかしてしまうこともある。裁判はその一瞬の側面を切り取って裁かなければならないのだな…と改めて重く感じたし、人間は多面的であるので悪人や善人と簡単にカテゴライズすることもできない、もどかしいところを絶妙に突いてくる本だなと。
訳者のあとがきにも似たような表現がありましたが、後半はもう流れがわかってくるので「ああ〜そっちじゃないエーファ!そっちじゃない!」ってもう見てられない状態に。
見てられないと思いつつ、読む手を止められないのが匠の技ってやつでしょうか。
一冊読み終えた頃にはすっかり人間不信になってしまったけど、なんとも言えない読後感がクセになる。
本国では続編がでているとか。絶対に読みたい!! -
Posted by ブクログ
連作短編集は、せっかくどっぷりハマった世界から離れることなく、違った角度から短編ごとに楽しめるのでそもそも好きなのだが、これはまた、ものすごく面白いじゃないですか!
最初の「正当防衛」で掴まれました。
そして、主人公の弁護士エーファがここまで事件に真剣に向き合うのはなぜか、それが短編の最後に投げかけられる。なにか、あるんだね、最後に明かされるんだね、と思いつつ次々読み進む。
どの事件も、判決が出た後に、思いがけないことが起こる。コントロールできないものがいつも残される。
どの事件も専門家ならではの、法律の穴があり、そうきたか!と唸らされるのだけど、「強姦」は特に、おー、そんな方法が!と驚かされた。
この小説、とっても読みやすいのがすごいと思う。読みやすさと安易さは仲良しだけど、この作品は、この質にしてこの読みさすさ。作家もよければ、翻訳家も優秀なのだと思う。
他の本を脇に置いて一気読みでした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレおもしろかった!
60代の女性弁護士エーファが主人公の連作短編リーガルミステリ。
法を守り、被告人に過剰な罪を与えないようにすればその人の心まで救えるかというとそれはまた別の話なんだなと。
「正義」とはなんなのか?正しい選択をすることの難しさを考えさせられた。
どの話もよかったが、特に心に残ったのは「少年兵」、「塩」、「人食い」、「強姦」。
「正当防衛」
強盗を殺してしまった場合、正当防衛と認められるには。
「生かしておく」
人を殺してしまっても、まだ生きてると世の中に思わせることで完全犯罪とする。殺人者の冷酷さと、被害者のやるせなさ。シュテファンの件での後悔がまたひとつエーファの罪を作ってしまう。
「少年兵」
真実を語ることだけが正義なのか。嘘をつくことで救われる人もいる。
「塩」
子どもが塩をあの量食べると亡くなる可能性があることは私も知らなかった。罪を与えないことが逆に本人にとっては一番重い罪となる。
「人食い」
お互いに了承を得ていれば、自殺を助けて死後解体して食べたとしても本当に罪にならないのか。
「遺稿」
「少年兵」と似たような展開。
「強姦」
11人中1人だけが強姦に加わっていないが、そのひとりを特定しない限り全員が無罪になってしまう状況で、はたしてどうするのが正解だったのか。
「自白」
魅力的な夫が妻を庇っているかと思いきや……まさにサイコパスという感じの夫だったが、なんだか詰めが甘かった。
「シュテファン・ハインリヒ」
会社のためにやってきたことでも、最終的に邪魔な存在となれば会社から切り捨てられてしまう。
弁護士の甘い考えがどれだけの影響を与えることになるのか。 -
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鬼★5 いかに悪魔になってしまうのか… 法の隙間から漏れ出た人の醜さを描いた犯罪小説 #暗黒の瞬間
■あらすじ
ドイツの刑事弁護士であるエーファ・ヘアベアゲン。凄腕弁護士の彼女が担当した事件と弁護を認めた物語。まもなく引退が近い彼女は、これまでの加害者の害悪性と法律で解決できることの差異に罪の意識が芽生えていく。
■きっと読みたくなるレビュー
鬼★5 正当防衛、過失、少年犯罪、偽証など、刑事弁護士が法の隙間から漏れでた人間の醜さを描いた犯罪小説。
誰しも人を傷つけることなく幸せに暮らしたいと思っている。でも決して犯罪はなくならない。どうして人は犯罪に手を染めてしまうのか… 心が空っぽになった瞬間に人は悪魔になってしまうのです。そんな人間たちを刑事弁護士からの目線をとおして、物語が綴られています。
また本作は弁護士エーファ自身も事件に関わってしまうのが特徴的。自身が担当する事件の依頼人を思ってする行動が実は… といったことがありがち。しかしそれは正義感から故の行動、でも少しずつ精神が腐食していくのを感じるんすよ。弁護士だってひとりの人間、身近で素朴な人に違いないんです。
また本作は人間ドラマだけでなくエンタメとしても楽しめる。作品それぞれにテーマがあり、驚きの真相が待ち受けます。読んでると実際にありそうなのよ、しかも綿密で淡々とした筆致で書かれるから現実味がありすぎる。
■おすすめ短編レビュー
・生かしておく
兄を殺害してしまった女性作家の物語、長年兄から虐待を受けていたらしく…
何が正義で何が犯罪か分からなくなる、なんか胃が痛い。終盤のエーファ目線での語りがやたら事務的で印象的。
・人食い
人肉を食べたという男が捕まる。メディアは大騒ぎとなり裁判が注目されるが…
世間は面白いことが大好きで、本当に困っている人に手を差し伸べてくれないよね。腹立たしくて涙が出そうになった。
・強姦
集団強姦の事件、目撃者の証言より11人中1人だけが無実がいるらしい。全員が無実を主張すると…
誰が可哀そうなのかコンフュ状態。犯罪が起こると関わった人全てが不幸になっちゃうよね、虚しい。
・自白
母殺しの容疑者である夫、どうやら妻が犯した罪をかぶっているようで…
人間の邪悪性に、ただただ途方に暮れてしまうよね。人間不信に陥らずにはいられない。
■ぜっさん推しポイント
読み終わってからタイトルを見ると… シンプルかつ核心をついてますね。きっと根っからの悪い人なんてほとんどいない。普段は家族を愛し、友人のために時間を当てられる優しい人たちに違いないんです。
人生がしんどくなった時、どのように心の隙間を埋めるのか、自身の倫理観を守るのか。難しいことだと思うけど逃げないようにしたいと思いました。 -
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ネタバレこれは今年度のベスト10にランクインするのではなかろうかと思える良作。
饒舌なシーラッハというような印象。
シーラッハと「饒舌」は相反するものだが、主人公エーファが弁護士で過去の自分の携わってきた事件を振り返っていくというスタイル、その扱ってきた事件のひとつひとつのあらましに妙にリアリティを感じる描写、そして事件のオチが醸し出すどうにも暗澹とした気持ちになる、一筋縄ではいかない人間の暗部を日の目に晒す様がそう感じさせた。
シーラッハのように切れ味鋭く、ときに不親切とも思えるほどの感覚的な文章という訳ではなく、いたって読みやすく書き込みがされているという点が「饒舌な」という印象に由来する。
とても読みやすい、でもそれぞれの物語のオチのエグさがとんでもない。
めちゃくちゃイヤミス。
変な見方すると主人公、バッドエンディング案件ばっかりだけど、本当に優秀な弁護士?とすら思ってしまう。
まだ40代だという著者。
本国では既に続編も出版されているという。
今後の活躍が楽しみな作家のひとりになった。 -
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法は人を救わない。
社会で共有されたルールであり、ひとつの判断基準でしかなく、そこに正義は無い。
法だけで人を救うことはできない、その事実を何度も繰り返し思い知らされる。そんな物語だ。
老境に差し掛かった一人の女性弁護士が、かつて自身が関わることとなった九つの事件を淡々と綴ってゆく。現実にありえたかもしれない物語に、底冷えのするようなリアリティを感じてしまう。
主人公は、法に携わる者として常に公正であろうと真摯に努めている。
しかしながら、本書に描かれた事件は、依頼人の嘘やたくらみにより意図したものとは真逆の結果となってしまうものばかりだ。
法を利用して罪を逃れようとする者、法を使って復讐しようとする者、法の抜け道をあざ笑う者。
それを目の当たりにするたび打ちのめされ無力感に苛まれる主人公だが、それでもなお自分に出来ることを探し続け、自身の行動が真の意味で正しいものであったのかを問い続ける。かつて自分が犯してしまった過ちを償うために。
意図せずして犯罪の隠蔽に手を貸してしまった主人公が、最後に選んだ道は……
本書がデビュー作となる著者は、ドイツの現役の法学部教授であり裁判官でもあるという。解説によれば、物語の多くが実際に関わった事件を基にしているそうだ。
法律が、世間の常識や倫理とときに乖離してしまう矛盾を身近に感じているからこそ描き出すことができた物語なのだろう。
タイトル「暗黒の瞬間」が意味するものを、深く考えさせられる。
次作にも大いに期待したい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレベルリンの刑事弁護士エーファが関わった9つの事件を綴った連作短編集。1話40ページ前後な上に細かくチャプター分けされてるのでテンポよくサクサク読める。ドイツが舞台なので日本の法律や司法とは違う部分があるのは仕方ないがところどころ首を捻るところがある。
基本法廷モノだが『逆転裁判』の様に「無罪判決!完全勝利イェーイ!」とはならない。逆に苦々しいビターエンドばかりだし、主人公の心に深い暗黒の影を落とした9番目の事件は紛うことなきバッドエンドである。それでも最後の最後に逆襲の一撃を喰らわせてスカッと終わり、まさに終わりよければ「すべてよし」。訳者あとがきによれば続刊が決まってるそうなので楽しみ。
【超どうでもいい超余談】
作中オランダの「スヘフェニンゲン」という地名が出てきたのでもしやと検索したら日本で弄られまくってるスケベニンゲン(Scheveningen)」だった。私の中でスケベニンゲンが出てくる小説として長く記憶に留まり続けることだろう。