宇月原晴明のレビュー一覧
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ノベルズ版『黎明に叛くもの』(全4巻)巻末に、書き下ろしで収録された外伝的作品4編をまとめた作品集。短編それぞれが“「隠岐黒」=『黎明に叛くもの』”“「天王船」=『信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』“「神器導く」=『聚楽』”“「波山の街―『東方見聞録』異聞」=『安徳天皇漂海記』”と緩やかに繋がっているばかりか、短編同士も時空を超えてひそかに繋がりあっているんですね。そんな企てについついうっとり。 どの作品も「もしかしたら、そんな歴史的事実があったのかもしれない」そう読者に強く信じ込ませてしまう説得力があるんですよね。史実と虚構の混ざり具合が絶妙すぎる!どこまでが史実で、どこまでが作家に
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『四人の帝の話』
安徳天皇漂海記の外伝であり続編でもある短編集でした。
物語の内容としては、終わりに突き進む帝とその周りの人間を描いた短編が一話ずつあり、併せて四編が納められています。
前作と直接的に繋がっている話としては、大海絶歌のみですが、大海絶歌はそれまで物語で下ってきた時代を遡る話で前作を読んでいると、とても感慨深い話になっています。
自分が特に面白いと感じたのは禁城洛陽です。
ついに人を助けたけれど、最後は。という所に少しの皮肉と清々しさを感じました。
禁城洛陽は続編であり完結編としても読める話ですし、前作を読んで楽しんだ人は今作をより楽しめると思います。
物語内容以外の所 -
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ここにきて、何故かかぐや姫が何かと物語にクローズアップされることが多くなっているのは、単なる偶然か何かの連鎖反応となっているのかは分からないが、改めて考えてみるととんでもない話である。本作は紫式部が読む竹取物語の話を作中作品として話は展開し、最後に式部が、それにインスパイアされて、光の物語を書くという展開となっている。それにしても、まあそういうことなのであろうとは思うが、結局、姫も翁の正体も不明のままであり、姫が秘薬で則天武后がそれを求めるというのは分からないでもないが、なぜ翁が秘薬を作りえたのか、中華が求めた秘薬をこのような結末で終結するとは思えない等、物語の終わりとしては消化不良の感が強い
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黎明に叛くものの外伝。4本の短編が収められている。
まだ山を降りる前の久秀と道三の話、久秀と信長の邂逅、秀吉と小早川隆景の話、東方見聞録異聞という、正しく『外伝』的な話が揃っていた。
本編の補足や裏話と言うほど本編と近いものではなく、黎明を叛くものを理解する為に必ず読まなければというものではない。
本来は巻末に書き下ろされていたものらしいが、実際それ位が丁度よかったのだろうと思う。一冊の本として黎明に叛くものと同じような勢いを求めて読むと、少々物足りないと感じた。
また日本の話ではない東方見聞録異聞が分量の約半分ほどなので、そういった意味でも少し入りにくさがあったと思う。
話の内容も本編以上に -
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日本史上最年少で崩御した天皇、安徳天皇が生きていて、日本に大きな災いをもたらすというようなお話。安徳天皇と源実朝、さらには文永の役までもを結びつける第一章は、オカルトだけれど歴史のミステリーを解いているようで結構面白い。歴史の教科書では、暗殺されたという事実と金槐和歌集の名前だけで消える実朝が、思慮深く優しい人物として魅力的に描かれている。
第二章は若きマルコ・ポーロが、第一章の話の真偽を確かめる話となっている。ここでさらに本筋は古事記にまでつながっていくのだけど、そちらはもうなんだか話が大きすぎてちょっとトンデモ本な感じに(笑)ただ、南宋滅亡のシーンは、まさに壇ノ浦の平家滅亡を彷彿とさせ -
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●ひとり1ジャンル作家・宇月原晴明氏による本作は、『高丘親王航海記』を下敷きにして、壇ノ浦の戦いから元寇までを読み替えたもの。
こう言う特殊なタイプの作家さんは、決して一般受けはしませんが、ハマる人はハマります。
歴史・神話・古典文学・神秘的・特殊能力的・バロック的(?)な幻想小説が好きな人に、向いてるのではありますまいか。
私は別にファンてわけではないんですが、皆川博子さんが絶賛していたので、読んでみました。
●『信長 戴冠せるアンドロギュヌス』の時も感じましたが、こう言う形式の小説は、ベースになるお話とリンクさせる歴史ネタがいかに綺麗に対称化するかで、自分の評価は五割確定。
後の五割は