宇月原晴明のレビュー一覧

  • 廃帝綺譚

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    歴史上の出来事に興味を抱くかどうかの境目は、そこに温もりを感じるか否かだと思っている。
    そういう意味で、宇月原先生の作品は、ともすると温度をなくしがちな史実に血が通ったものだ。
    それは、一つ一つの出来事に、「人の心の動き」が織り交ぜてあるからなのだろう。
    この作品は言うなれば「安徳天皇漂流記」のスピンオフだ。
    というと元作品より劣っているような気もしてしまうのだけれど、そんなことはない。
    どちらか勝るとか劣るとか、そういう問題ではなく、私は、これと前作、二つで一つなのだと思う。
    ちょうど、真床追衾と淡島がそうであったように。
    できることなら多くの人に、後鳥羽院のように淡島のみを受け入れられるの

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    2015年06月13日
  • 黎明に叛くもの

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    松永久秀のかわいいことかわいいこと。
    傀儡・果心との掛け合いや、兄・庄五郎への親愛、信長への憎しみと嫉妬。
    外道の術を扱い、節々で人外らしい評価を得ているのに、その実、誰よりも人間臭い感情を秘めているその葛藤ぶりには、ときめかずにはいられない。
    あの時代、既存概念をひっくり返したという意味では誰にも劣らないのに、どちらかといえば織田信長という傑物に掻き消されがちな松永久秀と斉藤道三が、こんな形で描かれるなんて、夢にも思わなかった。
    しかし、強い光に隠されがちな星が必死に日輪に抗おうとしている傍ら、微塵も己を「日輪か星か」など疑うこともない信長は、本当に、生まれながらの日輪らしい。
    そうなると、

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    2015年05月24日
  • かがやく月の宮

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    『竹取物語』をモチーフにした幻想小説。東西の神話や魔術をつなげてみせる異形の論理や、美しくも儚い情景が素晴らしい。ラストで明らかになる『かがやく月の宮』という書名がもつ意味にもニヤリとさせられる。

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    2013年12月16日
  • 黎明に叛くもの

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    松永久秀主役の時代物作品。フィクションの要素が高めですが、後の反逆者となる明智光秀との交流も描かれている、興味深い作品であります。私の創作にもかなり影響を与えているかと。描写も凄まじくて何度読んでも読み切れない感覚に悶えながらも奮闘中です。癖になる一作です。

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    2011年06月03日
  • 安徳天皇漂海記

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    鎌倉時代が好きなので、面白かった。この作者の他の本はちょっと苦手なのもあったけど、この作品は文句なく感動した。

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    2011年01月29日
  • 安徳天皇漂海記

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    「浪の下にも都のさぶらふぞ。」壇ノ浦の戦いで入水した幼帝。僅か8歳の子供を政争の犠牲にしなくとも…、と此処までは誰しも思う事だが、ここまで圧倒的な世界を創り上げるとは!
    神話と史実と虚構が混然一体となった壮大な叙事詩は、無味乾燥な教科書的史実を明らかに凌駕している。
    特に第二部の息が詰まる様な叙情的な幻想世界は凄い。酸欠になるかと思った(笑)
    そして、日本・中国・欧州、異なる世界・時代の事象と伝説が、蜜色の光を浴びてシンクロしていく様が幻惑的で美しい。
    作中で或る有名人が語る台詞を引用し締め括りたい。「かかる妖しき話は、無用なる故にそそられる-。」

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    2010年07月04日
  • 安徳天皇漂海記

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    それは、ジパングの若き王の物語。稀代の覇王の息子でありながら、もはや騎士ではなくなってしまった、生まれながらの詩人である若き王の物語.
    宰相たる叔父と冷徹なる母が、粗暴すぎる武人であった兄を王位から追放し惨殺させrたことが、すべての始まりだったという。
    父王の兵が滅ぼしたはずの皇帝、天国でもない地獄でもない煉獄につなぎとめられているかのようなこの少年を守り続ける魔術師の一団、うごめくもう一人の皇帝と貴族たち、古代の神々の宝物、予言する星々、光を失った太陽に月、嫉妬と憎悪に狂う甥、反乱と鎮圧、亡命と挫折、波を渡る夢と雪に散る血、暗殺、それも血縁の手による…
    (本文より)

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    2011年09月29日
  • 安徳天皇漂海記

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    これまで読んできたこの人が書いた作品の中で一番短くて漢字が少ないっす(笑)
    『高丘親王航海記』が大好きなワタクシにはなんともツボな作品でした
    それにしても実朝の和歌って綺麗ですね。
    技巧に走りすぎず、かといって感情にも走りすぎず、素直な気持ちを歌い上げてる所清清しい。
    青年詩人の言葉がこれほどに合う方も少なかろう。
    この情景にはこの歌!という作者の選択眼に脱帽。
    最期に辿り着くまでの紆余曲折には美しいけれど悲しい情景が続くのですが、終着の情景がまた綺麗なんだな。
    よかった。。。
    誤った感想かもしれないけれど安堵することができました。

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    2009年10月07日
  • 黎明に叛くもの

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    魔性の果心居士・松永久秀。翻弄される?光秀、信玄、謙信。そして日輪たる信長。
    久秀と斎藤道三、光秀と帰蝶の関係がたまらない。

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    2009年10月13日
  • 安徳天皇漂海記

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    第1部は、入水した少年天皇・安徳天皇と源実朝の数奇なつながりの話を実朝側近の目から描いた話。 ◆
    吾妻鏡や古典の文章を引用しているので多少読みづらかったものの詩人王実朝の哀しみがひしひしと伝わってきました。 ◆
    第2部では一転して中国へ。マルコ・ポーロとクビライ・カーン、そしてカーンに追われる宋の最後の皇帝趙へい。 ◆
    二人の哀しい天子の運命。

    情景の美しさと言葉の美しさ、そして史実をファンタジーとしてまとめ上げた想像力。例の受賞作より面白かったです。 ◆
    実朝を描く作品を探して読みたくなりました。

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    2009年10月04日
  • 安徳天皇漂海記

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    『吾妻鏡』等の古典から、記録や和歌を引き合いに出しながら物語が展開していくのですが、まるで史実かと思ってしまうくらい、のめりこんでしまいました。平家と南宋、二人の幼帝の末路が、哀しすぎて後半は泣けます。
    美しい文体と、幻想色が強いので、歴史小説が苦手な方でも読みやすく楽しめる作品かと。

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    2009年10月04日
  • 安徳天皇漂海記

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    平家滅亡の日本と南宋滅亡の中国が、時空を超えてシンクロ。文字を媒介とした幼い少年同士の純粋な交流に癒されます。

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    2009年10月04日
  • 安徳天皇漂海記

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    幻想文学として素晴らしく読み応えのある物語だ。平家物語で海中に身を投げた安徳天皇を軸に、鎌倉幕府三代将軍であり歌人でもある右大臣実朝が前編、東方見聞録のマルコポーロが後編で絡んでいく、その構成だけ見てもなんとも幻想的である。
    正直、〜でございます、という文語体で書かれる前編は読みづらくてしょうがないが、実朝の詠んだ歌を上手く物語の設定に沿って配置するなど、手が込んでいて、徐々に盛り上がってくる。
    口語体となる後編では一気に幻想が花開く感があり、どんどん読み進められる。
    参考文献に太宰治の「右大臣実朝」と澁澤龍彦の「高岳親王航海記」とあるのも胸熱。

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    2024年05月05日
  • 天王船

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    『黎明に叛くもの』の番外編。
    割と現実的には荒唐無稽というか、ファンタジーに寄ってしまう様な伝奇物なのだけれど、思いもよらない可能性に目を向けるきっかけにもなります。
    もしかして、もしかすると、物語だからこそ語ることのできる真実もあるかもしれない。

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    2019年05月15日
  • 安徳天皇漂海記

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    かなり史実に基づきながらも怪異譚と混ざり合った形で,二人の幼い皇帝の死を傷んでいる.安徳天皇に対する実朝の関わり方は独創的で,前半の実朝の滅びに向かって静かに歩んでいるかのような態度は,そういうことだったのかと説得力があった.後半のマルコ・ポーロ編は元寇に安徳天皇が絡んでくるなど,驚きの事実?そして,神話の水蛭子の哀しみに思いを馳せて唐突に終わる.かなりユニークで面白かった.

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    2017年11月17日
  • かがやく月の宮

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    竹取物語の”異本”といいましょうか…それを読む紫式部、そして源氏物語へ、という視点も良かったですね。竹取翁がかぐや姫の求婚者たちに求めた五宝が五大五行と繋がるのは、『陰陽師』読みとしてはまぁ然もありなんですが…その先、中国神話の嫦娥に繋がり、西域の神話・外法と繋がってさらに阿瑠天美須=天照まで繋がるとは!(@@;いやでもこういうの大好物だし(笑) SFファンタジーであり、ある程度の史実を織り交ぜての「空言」として非常に読み応えがあって面白かった。でも、かなり好き嫌いが分かれそうな作品ではありそうだなぁ。

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    2017年05月08日
  • かがやく月の宮

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    ネタバレ

    スゲーとこ突いてきた小説。
    竹取物語をこういう風に解釈するかぁ。
    SF・ファンタジー・奇譚・とんでも歴史考察・姉弟ショタ…あるゆるものをごっちゃに詰め込んで、引っ掻き回して、最後の落としどころはあの長編小説とは、落としどころもサスガというか。

    もっと書き込もうと思ったらなんぼでも伸ばせるベースあるはずの下地、なんならこれの設定だけで結構な大河歴史ファンタジー小説が書けると思えるのに、ギューッっと濃縮して200Pあまりに納めたところも良かった。気になる伏線放置(竹取翁どうなってん、とかあるも、それでも冗長になるよりは良かったかも。

    奇想天外な小説読みたい方にお勧め。ボリュームの割に読み応えあ

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    2016年10月09日
  • かがやく月の宮

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    ネタバレ

    かぐや姫を帝から描いた物語。帝のはかない雰囲気は美しく、その一方で藤原氏が台頭する朝廷の雰囲気はリアリティがあり妖しさとリアルがほどよく交わり、とても面白く読めました。
    アルテミス→嫦娥→月読、月読=スサノオの考察が面白かった。そういえばあの3人の中で月読神の存在感って全然ないものね・・・。

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    2014年12月13日
  • 安徳天皇漂海記

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    ネタバレ

    壇ノ浦で入水したはずの安徳天皇が実は・・・、という話はよくあるんだけど、これは琥珀の玉の中で老いもせず生き続けてる、といういきなりなんだかすごい特殊なイメージ。
    山田風太郎とかともまた違う、こゆのなんていうんだろ?歴史ファンタジー?伝奇?
    どこへ連れて行かれるかわからないのが面白くもあり、微妙に不安でもある。
    第二章での南宋の少年皇帝がせつなくてしんみり読んでたら最後の最後は古事記にまでさかのぼってく怒濤の展開。
    不思議な本だった。一度では消化しきれなかったので、もう一度読みたいです。

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    2012年06月26日
  • 黎明に叛くもの

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    ネタバレ

    松永久秀主人公の伝奇小説。脇役として斎藤道三、果心(居士)、明智光秀、織田信長が多く出てくる。
    特に道三は久秀の兄弟子という設定で、久秀にとっては大事な存在になっている。子供時分に久秀と天下を二分しようと約束し、互いの道を行くようになる。
    また光秀も光秀を通しての久秀、道三を見せてくれる役割としてよく出てくる。
    率直に面白かった。続きが気になり、飽きることなくどんどん読んでいけた。
    純粋な歴史小説ではないので、そのつもりで買うと想像していたものと違うということにもなるかもしれない。もう少し言うと、久秀や久秀周囲の人間の名前と状況を利用した創作物語と言った所。歴史小説ではなく、創作小説に近い。内

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    2012年04月02日