感情タグBEST3
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「浪の下にも都のさぶらふぞ。」壇ノ浦の戦いで入水した幼帝。僅か8歳の子供を政争の犠牲にしなくとも…、と此処までは誰しも思う事だが、ここまで圧倒的な世界を創り上げるとは!
神話と史実と虚構が混然一体となった壮大な叙事詩は、無味乾燥な教科書的史実を明らかに凌駕している。
特に第二部の息が詰まる様な叙情的な幻想世界は凄い。酸欠になるかと思った(笑)
そして、日本・中国・欧州、異なる世界・時代の事象と伝説が、蜜色の光を浴びてシンクロしていく様が幻惑的で美しい。
作中で或る有名人が語る台詞を引用し締め括りたい。「かかる妖しき話は、無用なる故にそそられる-。」
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それは、ジパングの若き王の物語。稀代の覇王の息子でありながら、もはや騎士ではなくなってしまった、生まれながらの詩人である若き王の物語.
宰相たる叔父と冷徹なる母が、粗暴すぎる武人であった兄を王位から追放し惨殺させrたことが、すべての始まりだったという。
父王の兵が滅ぼしたはずの皇帝、天国でもない地獄でもない煉獄につなぎとめられているかのようなこの少年を守り続ける魔術師の一団、うごめくもう一人の皇帝と貴族たち、古代の神々の宝物、予言する星々、光を失った太陽に月、嫉妬と憎悪に狂う甥、反乱と鎮圧、亡命と挫折、波を渡る夢と雪に散る血、暗殺、それも血縁の手による…
(本文より)
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これまで読んできたこの人が書いた作品の中で一番短くて漢字が少ないっす(笑)
『高丘親王航海記』が大好きなワタクシにはなんともツボな作品でした
それにしても実朝の和歌って綺麗ですね。
技巧に走りすぎず、かといって感情にも走りすぎず、素直な気持ちを歌い上げてる所清清しい。
青年詩人の言葉がこれほどに合う方も少なかろう。
この情景にはこの歌!という作者の選択眼に脱帽。
最期に辿り着くまでの紆余曲折には美しいけれど悲しい情景が続くのですが、終着の情景がまた綺麗なんだな。
よかった。。。
誤った感想かもしれないけれど安堵することができました。
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第1部は、入水した少年天皇・安徳天皇と源実朝の数奇なつながりの話を実朝側近の目から描いた話。 ◆
吾妻鏡や古典の文章を引用しているので多少読みづらかったものの詩人王実朝の哀しみがひしひしと伝わってきました。 ◆
第2部では一転して中国へ。マルコ・ポーロとクビライ・カーン、そしてカーンに追われる宋の最後の皇帝趙へい。 ◆
二人の哀しい天子の運命。
◆
情景の美しさと言葉の美しさ、そして史実をファンタジーとしてまとめ上げた想像力。例の受賞作より面白かったです。 ◆
実朝を描く作品を探して読みたくなりました。
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『吾妻鏡』等の古典から、記録や和歌を引き合いに出しながら物語が展開していくのですが、まるで史実かと思ってしまうくらい、のめりこんでしまいました。平家と南宋、二人の幼帝の末路が、哀しすぎて後半は泣けます。
美しい文体と、幻想色が強いので、歴史小説が苦手な方でも読みやすく楽しめる作品かと。
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幻想文学として素晴らしく読み応えのある物語だ。平家物語で海中に身を投げた安徳天皇を軸に、鎌倉幕府三代将軍であり歌人でもある右大臣実朝が前編、東方見聞録のマルコポーロが後編で絡んでいく、その構成だけ見てもなんとも幻想的である。
正直、〜でございます、という文語体で書かれる前編は読みづらくてしょうがないが、実朝の詠んだ歌を上手く物語の設定に沿って配置するなど、手が込んでいて、徐々に盛り上がってくる。
口語体となる後編では一気に幻想が花開く感があり、どんどん読み進められる。
参考文献に太宰治の「右大臣実朝」と澁澤龍彦の「高岳親王航海記」とあるのも胸熱。
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かなり史実に基づきながらも怪異譚と混ざり合った形で,二人の幼い皇帝の死を傷んでいる.安徳天皇に対する実朝の関わり方は独創的で,前半の実朝の滅びに向かって静かに歩んでいるかのような態度は,そういうことだったのかと説得力があった.後半のマルコ・ポーロ編は元寇に安徳天皇が絡んでくるなど,驚きの事実?そして,神話の水蛭子の哀しみに思いを馳せて唐突に終わる.かなりユニークで面白かった.
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壇ノ浦で入水したはずの安徳天皇が実は・・・、という話はよくあるんだけど、これは琥珀の玉の中で老いもせず生き続けてる、といういきなりなんだかすごい特殊なイメージ。
山田風太郎とかともまた違う、こゆのなんていうんだろ?歴史ファンタジー?伝奇?
どこへ連れて行かれるかわからないのが面白くもあり、微妙に不安でもある。
第二章での南宋の少年皇帝がせつなくてしんみり読んでたら最後の最後は古事記にまでさかのぼってく怒濤の展開。
不思議な本だった。一度では消化しきれなかったので、もう一度読みたいです。
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壇ノ浦の合戦で入水した幼帝安徳天皇は、琥珀色の玉に包まれて海を漂う・・・。
源実朝が自分の首を捧げることで日本を救う第1部、マルコ・ポーロが黄金の島に辿り着く第2部とも、史実をファンタジーで紡いでいく手法の巧みさに驚かされます。
そして、要所を和歌でバシッと決めるのも素敵であります。
また、ストーリー全体が澁澤龍彦「高丘親王航海記」を下地にしているのですが、かの名作とは味わいの異なる美しさに酔いしれそう。特にラストのへんとか。
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買って、最初の数頁だけ読んで、本棚の肥しになっていた本。
出だしが読みにくい本なのだろう。そういう本はよくある。
久しぶりに手にとって、最後まで、一気に読んでしまった。
舞台は鎌倉時代の初めだが、最後は中国まで、舞台を広げ、スケールのでかいストーリーになっている。
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前半は実朝に仕える人物の視点から、孤独な将軍実朝の苦悩と、壇ノ浦に沈んだはずの安徳天皇の不思議な運命が描かれます。
雰囲気たっぷりの古典ファンタジー。
澁澤龍彦の「高丘親王航海記」と似ていると思ったら、実朝が高丘親王に惹かれていたということがあったのですね。
後半は南宋の少年皇帝との時空を超えた交流にマルコ・ポーロが絡むというさらに意外な展開!
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2007.09.弟1部が入水した少年天皇・安徳天皇と源実朝の数奇なつながりの話.第2部はマルコ・ポーロとクビライ・カーンに追われる宋の最後の幼帝.そして安徳天皇と宋の幼帝との話.とっても難しかったけど、それなりに面白い.
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歴史小説かと思ったら、まるで違った。前半は語り部が誘導してくれるけど、後半は自分で持てる限りの想像力を駆使して読まなきゃならない。広がりが予想以上ですよ。
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日本史上最年少で崩御した天皇、安徳天皇が生きていて、日本に大きな災いをもたらすというようなお話。安徳天皇と源実朝、さらには文永の役までもを結びつける第一章は、オカルトだけれど歴史のミステリーを解いているようで結構面白い。歴史の教科書では、暗殺されたという事実と金槐和歌集の名前だけで消える実朝が、思慮深く優しい人物として魅力的に描かれている。
第二章は若きマルコ・ポーロが、第一章の話の真偽を確かめる話となっている。ここでさらに本筋は古事記にまでつながっていくのだけど、そちらはもうなんだか話が大きすぎてちょっとトンデモ本な感じに(笑)ただ、南宋滅亡のシーンは、まさに壇ノ浦の平家滅亡を彷彿とさせるいいシーンだ。
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直木賞候補。
面白かったけど、あんまりしっくりこなかった。なんかベタ褒めされてるレビューをよく見るんやけど、あたしはいまひとつ入っていけなかった。古典的な教養がゼロだからいけなかったのかもしれない。
文体も味はあったけど、素直に頭に入ってこないで読みにくかった。これも教養がないからあかんのかもしれない。
設定だけ抜き出して書くと「日本版ダ・ヴィンチ・コード」かなぁ。内容違うし、もっと「小説」やっているのでこれだけを見ると誤解されそうやけど。
あんまりオススメしません。
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●ひとり1ジャンル作家・宇月原晴明氏による本作は、『高丘親王航海記』を下敷きにして、壇ノ浦の戦いから元寇までを読み替えたもの。
こう言う特殊なタイプの作家さんは、決して一般受けはしませんが、ハマる人はハマります。
歴史・神話・古典文学・神秘的・特殊能力的・バロック的(?)な幻想小説が好きな人に、向いてるのではありますまいか。
私は別にファンてわけではないんですが、皆川博子さんが絶賛していたので、読んでみました。
●『信長 戴冠せるアンドロギュヌス』の時も感じましたが、こう言う形式の小説は、ベースになるお話とリンクさせる歴史ネタがいかに綺麗に対称化するかで、自分の評価は五割確定。
後の五割は、元ネタを生かしつつ、どれだけ元ネタ越えをしてくれるか。
この元ネタ越えですねえ・・・・。
評価の定まった小説を元にしてるから当然とは言うものの、やはりヘリオガバルスや高丘親王越えは難しい。
多田智満子さんの神秘ゴージャス訳文の見事さは比類ないし、天下の澁澤は言わずもがな。
宇月原作品は決して悪かないし面白いはずなんだけど、どうしても比較しながら読んでしまうよなあ。残念。 ●一般的に評価は高いようなので、時間の無駄ってことにはならないでしょう。
幸福な出会いを味わえるかもしれません。