ヴェンカトラマン・ラマクリシュナンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
これは面白い。一流の科学者が書く文章だけあって、事実に基づいた冷静な筆致である。翻訳も良い。おかげで世の中にあふれるアンチエイジングのインチキがよく見えてきた。たまたまYoutubeでサーチュインを喧伝する動画が流れてきたが、この本を読むとすでにオワコン理論なのに古い知識をナイーブに信じている人がこんなにも多いのかと愕然とした。
不思議なもので死を恐れる気持ちは年齢を経るとともに薄れてきた。平均寿命を超えて現実に死が見えてきたら気持ちが変わるのかも知れないが、妻に先立たれて一日何をするでもなく所在なさげな高齢の父を見ていると、少なくとも今は長生きするのも苦痛に見える。 -
Posted by ブクログ
「じん・ましん」ですか? かゆくなるやつ?
そんなじゃありませ~ん! 表紙の画像よく見て!
色つき「パスタ」うにゅうにゅ、これ「リボソーム」ですから!
はい! この本はリボソームのパーツの立体構造と動き方を調べて2009年にノーベル化学賞を受賞されたヴェンカトラマン・”ヴェンキ”・ラマクリシュナンさん(ヴェンキさん)の「自伝的科学エッセイ」です。
ヴェンキさんが、インドの大学を卒業してアメリカに渡り、のちにノーベル賞を受賞するまでをユーモラスに、そして、率直に語っています。
たいへんおもしろかったです!
この本、まず巻末の「解説」から読まれることをおすすめします。リボソームが何かを説明してあります。
リボソームは、細胞のなかの分子です。遺伝情報から、エネルギーを使って、タンパク質を合成する「分子マシン」です。
水分を除いた細胞の「乾物」だと、重さの30%がリボソーム。だから、細胞の中にたくさんあります。その数、6~7万個!
水分70%の肉100gだと9gくらいあるのかな?
わたし、ぜんぜん意識せずに「リボソーム」めちゃめちゃ食べてました!
リボソーム、細胞のなかの分子としては最大の大きさ、でも細胞と比べると、めっちゃ小さいです。
そして「大」と「小」のふたつにわかれます。両方とも「RNA」と「タンパク質」でできています。でも、太古の昔はRNAだけだったとか。
RNAって、情報を運べるし、化学反応も起こせるすごいやつ、「生命のはじまり」とも関係しているようです。そんなRNAとタンパク質をつなぐリボソーム、超重要分子です。
ヴェンキさんは、そんなリボソームのちっちゃい方の立体構造を明らかにしました。
この「立体構造を明らか」って、つまるところ人間の目でみてわかるようにすることです。
つくづく思います、人って目で見てわかることが、何かを理解するのに重要なんですね。当時難しかったとはいえ、ノーベル賞級の仕事になるんですから。
この本のおもしろさは、ヴェンキさんのノーベル賞にいたるまでのストーリーです。
もともとヴェンキさんは理論物理学のひとです。それが、アメリカで物理の博士号をとってからの生物学への転向です。ゼロからのスタートです。
生物学に転向してから読んだ『サイエンティフィック・アメリカン』でリボソームに出会います。そこから、どんどん追いかけます。
ヴェンキさんはとても優秀ですが、超天才とかではない感じ。スターじゃない、常識ある普通っぽいひとが、ゼロからはじめてノーベル賞にたどり着くのが痛快でした。
自分を成長させるために研究拠点を変える決断、自分にもチャンスがあると思ったら研究レースに飛び込む勇気、とってもよかったです。
生体の高分子のお話なので、とくに役立つ情報はないのですが、ひとつお役立ち情報ありました!
わたし、血液検査のたんびにマグネシウムやタンパク質不足を指摘されていますが、リボソームさんもマグネシウム不足にもろ影響をうけるみたいです。
リボソームさんにタンパク質をせっせと作ってもらうため、もっとマグネシウムとらなきゃと思いました! -
Posted by ブクログ
原著は2018年刊。ヴェンカトマラン・ラマクリシュナンの研究自伝。
1952年インド生まれ。細胞のタンパク質工場「リボソーム」の構造と機能の解明で、2009年ノーベル化学賞を受賞。
生い立ちから始まるわけではない。インドで物理学を学んだことも出てこない。アメリカに渡り、UCSDの大学院で生物学、ポスドクとしてイエールでリボソームの研究に入り込んでゆくところから始まる。1980年代、90年代、構造生物学が輝いていた時代、その熱気と活気と興奮が描かれている。
プロローグから引き込まれる。1980年、イエールの掲示板で見た講演会を聞きに行く。聴衆はわずか。質問はほとんど出なかった。だが、研究内容がすごいことだけはわかった。講演者はベルリンのマックス・プランクのアダ・ヨナット。その29年後、ふたりは同じ授賞式の席にいた。
第3章、リボソームの可視化の歴史の記述はみごと。専門外の者にもよくわかる。
訳文はよどみなく読める、おお、なんという幸せ! -
Posted by ブクログ
遺伝子レベル、たんぱく質レベル、細胞レベルから老化の仕組みを説明し、その複雑な相互作用などから、なぜ老化を止めるのが難しいのか、科学的かつわかりやすく解説している。Chapter11では、テックマネーが流入するアンチエイジング・不老不死業界について醒めた視点で概観している。最後に、たとえ老化に抗うことができるとしてもそうすべきだろうか、という問題についても考察している。クリアな結論がないトピックも多いが、この分野はそういうものと思うし、それが科学者として誠実な態度と思う。老化研究関連本としてはこれまで読んだ中でベスト。
【原題】
Why We Die :The New Science of Ageing and Longevity
【目次】
はじめに
CHAPTER 1 不滅の細胞と使い捨ての肉体
CHAPTER 2 生き急ぎ、死に急ぐ
CHAPTER 3 破壊される遺伝子
CHAPTER 4 問題は末端にあり
CHAPTER 5 生物時計をリセットする
CHAPTER 6 ゴミのリサイクル
CHAPTER 7 過ぎたるは及ばざるがごとし
CHAPTER 8 小さな虫が教えてくれること
CHAPTER 9 私たちに巣くう寄生生物
CHAPTER 10 満身創痍の肉体と吸血鬼の血
CHAPTER 11 ペテン師か、預言者か
CHAPTER 12 私たちは永遠の命を手に入れるべきなのか
謝辞
原註 -
Posted by ブクログ
ネタバレ分子生物学者が書いた真面目な本。長生きのためのサプリを推奨するような内容ではない。
・人間は癌抑制遺伝子p53を2つ持っているが、象は20個持っており、そのおかげで癌にかかりにくい。
・DNA修復遺伝子が強いと長生きになる。ハダカデバネズミのケースは有名だし、長生きの人は並外れて効率的なDNA修復メカニズムを有している。
・カロリー制限が有効であるというエビデンスは人ではほぼ皆無。また、そもそもの話としてカロリー制限はQOLを低下させる。
・メトホルミンについてもかなり調べられているが今日まではっきりしたエビデンスはない。DMの人が飲むのはよいが、健康な成人に投与して効果を期待するのは時期尚早
・SIR2遺伝子についても調べられているが、国立老化研究所が行った研究ではレスベラトロールやターメリック抽出物はマウスの寿命に一切影響を与えなかった。線虫やハエの遺伝子を変化させてSIR2タンパク質を過剰生産させても寿命に一切影響はなかった。
・抗酸化サプリに関する68のRCT(被験者総数23万人)で抗酸化サプリは死亡率を低下させなかったし、βカロチン、VitA/Eなどは死亡率をむしろ上昇させた
・もし仮に寿命が100歳以上に延び、健康に過ごせるようになると出生率が低下し、どんどん減っていく若い世代に、増加し続ける高齢の退職者を支え続けることができるのか。働く期間を延ばすなどの対策が必要になる。
・人々が死を免れないという事実に耐えられるように、あらゆる文化は死が一巻の終わりであることを否定する信念と対策を発達させてきた。哲学者のスティーヴン・ケイヴは不死の探求は何世紀にもわたって人類文明の原動力だったと指摘する。ケイヴは人類の対応策を4つに分類する。1つめ、すなわちプランAとは単にできるだけ長く生きようとすること。それが失敗した場合のプランBは死んだ後に物理的に甦ること。プランCはたとえ体が朽ち果て、復活できなくても、私たちの本質は不死の魂として生き続けること。そして最後のプランDは業績、記念碑、あるいは生物学的子孫といったレガシー(遺産)のかたちで生き続けることだ。 すべての人類はプランAを実践してきたが、それ以外の戦略をどれほど重んじるかは文化によって異なる。私の故郷であるインドでは、ヒンドゥー教徒と仏教徒は進んでプランCを受け入れる。それぞれの人には永遠の魂があり、それは死後も新たな体、ときにはまったく違う生き物に宿って生き続けるという考えだ。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教といったアブラハムの宗教はプランBとCの両方を信奉する。永遠の魂を信じる一方、将来のある時点で肉体も復活し、最後の審判を受けると信じる。伝統的にこうした宗教では火葬を禁じ、遺体をそのまま埋葬するのはこのためかもしれない。
・アンチエイジングに熱心なテック長者のほとんどが、非常に若くして大金を手にし、人生を謳歌し、このまま永遠にパーティが終わらないでほしいと願っている中年男性(若い女性と結婚していることもある)だ。若い頃は金持ちになりたくて、金持ちになった今は若くなりたがっている