井上先斗のレビュー一覧
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ネタバレミステリー小説だって勝手に思い込んでました。犯罪小説だって書いてるのに〜
1部の途中で合わないなぁって1回諦めてから何年か置いてたら美味しく感じた。
街中にグラフィティ?がそこら中に書いてるなって意識外でも覚えてて、道端の何か分からない箱とか電柱、橋の支え、どうやって書いたんやろって場所にもよく見る。
正直これを読んでもそういう場所に書いてしまう人達のことはまったく分からなかった(笑)
なんでかは分からないけどその衝動みたいなのを感じて面白かった。
第2部主人公のteelがアルバイトがお金をちょろまかしてるのを見過ごし、物語終わりには指摘しようとするとこが1番ささりました。
こういう場面はほんと最高! -
Posted by ブクログ
恵まれない家庭環境でなく、むしろ不自由なく暮らしている少年たちの憂鬱な記憶 #ノーウェア・ボーイズ
■あらすじ
町田で生まれ、育った少年たち。地元で平凡な毎日を暮らしながらも、どこか満たされない毎日を送っていた。少年根津光一は、リス園で女子大学生の桐原響と出会い、少年たちと奇妙で楽しい友人関係が始まる。しかしある日、憧れの響を街で見かけると、これまで見せてこなかった表情を浮かべており…
■きっと読みたくなるレビュー
少年時代のほろ苦い記憶、あの場所、あの頃、あの人物を思い出す青春ミステリーです。
こんな作品を読むと、自分の青春時代を思い出してしまいますよね。お金なんか全然なかったけど、毎日がキラキラ輝いていてさ。解像度高く記憶を呼び覚ますことができるのです。
本作の主たる時間軸は2025年、大人になった少年たちが地元町田に集まってくるところから始まる。憧れの女性響と結婚した中学時代の友人猪瀬が、殺人事件を犯したらしい。一方主人公の根津は、すでに結婚して妻は妊娠中。彼らの事件に向き合うことで、過去の自分を取り戻そうとする… という筋立て。
井上先斗先生の作品は、まず世界観がクールなんですよね。文体としてはライトなんだけど、決して幼稚ではなく、むしろ洗練されているの。描くシーンの場所もセリフも感情表現の、上品かつ繊細なんすよ。かつて松本大洋のマンガを初めて読んだときと同じような感覚になりました。
キャラクターがイイんすよ。根津をはじめとする、どこにでもいそうな中学生たち。猪瀬はちょっと荒くれ者。バッティングセンターでつるむ彼らを見てると、ひとりひとりの悩んでいる顔が目に浮かんでくるんすよね。
特段恵まれない家庭環境でもなく、むしろ首都圏郊外で不自由なく暮らしている少年たち。しかし彼らにもストレスがある、人間関係、勉強、両親からのプレッシャー。やりたいことを自由にできない、現代社会の息苦しさを感じつつある。だからこそどんなものにも影響を受けてしまう、敏感な年代とも言えます。
そこに現れるマドンナの響さん。彼女を中心に物語は展開するのですが、ここが一番の読みどころです。彼女はいったいどんな女性なのか、何が起こるのか、そして関係性はどうなるのか… 詳しくは語りません、ぜひ読んでいただきたい。
ちょっとだけ語ると、中学生時代と大人になってからの想いの違いが綿密に描かれているんすよ、胸の奥に何かが伝わってくるのよね。はー、切ない。
大人になるってことは、成長であり、独立であり、責任である。でもいつかどこかに忘れてきた何かを見つめ直さなきゃならない時もあり、実はそこに解決のヒントがあったりもする。今度の休みの日は、青春時代の友人たちと通っていたファーストフード店に行こうと思いました。
■ぜっさん推しポイント
本作も舞台である町田市の丁寧に描いており、行ったことなくてもイメージが伝わりました。駅前は繁華街だけど、少し駅から離れると緑も増えつつある首都圏近郊のベッドタウン。決して都心ではないけど、便利で住みやすく、子育てにも適した街なんだと思います。
日本のどこにである、都心でもなく田舎でもなく、どっちつかずともいえる街。何の不自由のないんだけど、幸せで満たされているわけでもない。どこに怒りをぶつけていいか分からなくなる、ちょっとだけ憂鬱な感情が漂ってる街だとも感じられました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレグラフィティを題材にした犯罪小説とのことだが、個人的には青春小説のようにも感じた。
ブラックロータスという新進気鋭のグラフィティアーティストにまつわる一連の流れを追った物であり、一部と二部に分かれる。
一部はグラフィティという文化に乗っかって自ら成り上がろうとする記者を視点として、グラフィティとは何なのかというところに当たっていく。
二部はグラフィティライターTEELの視点からカウンターカルチャーとしてのグラフィティとその潮流を見る。
グラフィティを知るにあたって丁度いい一作といった感じで、これ一冊で有名どころの映画のガイドと考察を読める上にある程度の用語とグラフィティという文化の実像を掴むことが出来る。
グラフィティという文化は自己の表明という意図を常に内包している。最も基本的なタグは、自身のライターとしての名前を簡易に描いたものであり、それは街に対して自分自身を刻むことと同じだ。
一方で、行為そのものは軽犯罪であり、外れ者が自己を表明しながらも決して衆目に受容されることはないという切実さを含んでいる。
一部主人公の私は名を上げるという野心を持ってグラフィティに接し、見事にそれを成し得、そこで初めて私ではない誰かとして読者の前に名を表明する。
一方で、彼自身の内面はそこで読者と分断され二部へと移り、以後はグラフィティを専門とする著名な記者として時折その名が挙げられる程度となる。
二部においてはブラックロータスがTEELにGoingOverを仕掛け、世相を味方につけ勝利を収める。
しかしながらその手法は自らのグラフィティをリーガルかつ商業的なコラボとして誤認させることで、電車にボムするというものだ。結局のところそれは名を表明するというグラフィティの初心を失し、街に自らのグラフィティを埋没させる行いでしかない。そこに切実さはないと思う。
違法行為を持ってしても自己を表明することを目的とした文化が、その初心を損ない続け変質し、翻って人に受け入れられる話としてこの作品は完成度が高い。
読み終えたときにどことなくグラフィティという文化を理解したような気になれる。
しかしながら、巻末に書かれているグラフィティライターの名前が黒塗りになっている部分を見て思う。
イッツダボムという表題のグラフィティが自己を内包しないように、商流として整えられた作品を見て、これが全てだと思うことは単なる傲慢でしかなく、本当に表現したかった第一義はその時点で欠損しているのではないかと。 -
Posted by ブクログ
第31回松本清張賞受賞作
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夜の光を放つ、
ささやかで切実な犯罪小説
グラフィティって
違法な落書き?
高尚なアート?
「日本のバンクシー」と耳目を集める新鋭〈ブラックロータス〉
彼の正体を熱心に追うウェブライター
ストリートにこだわり続けるグラフィティライター〈TEEL〉
そして「落書きなんて流行らない時代」に落書き(ボム)を始めた青年
「俺はここにいるぞ!」と叫ぶ声が響く、
新世代のクライム・ノヴェル!
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グラフィティについては何も知らず。
バンクシーという言葉だけは何となく知っていて。
二部構成の第一部は
ウェブライターが取材を進める形で物語が展開し、
グラフィティって、という説明から
後半は一気にミステリー要素があり。
ああ、こうやって終わるのか。
と思って、第二部へ。
一部でインタビューされたグラフィティライターがメインです。
外側から見た世界と、
内側から見た世界。
夜の中を疾走して、
誰にも見つからないようにボムする。
犯罪なのに、
なんか格好良くて、
独特の空気感が伝わってきました。
こちらも後半で事件のような展開があり、
どう決着をつけるのか気になって最後まで読み切りました。
ショートムービーを観てる気分でした! -
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Cool! 今を生きる若者たちの息遣いが耳元で聞こえてくる犯罪小説 #バッドフレンド・ライク・ミー
■あらすじ
ウーバーイーツ配達員の森有馬。彼はイケメンの元ホストであったが、客に逃げられて300万円の借金があった。日頃の嫌気がさしていた彼は、ホスト時代の先輩からジンという男を紹介してもらうことになる。
ジンから請け負う仕事は「七つの試練」をこなすことで報酬がもらるという。最終的には500万円が支払われるというのだが…
■きっと読みたくなるレビュー
超Coooool、かっちょいい! 若者たちの息遣いが耳元で聞こえてくるような犯罪小説でしたね~
井上先斗先生の作品は『イッツ・ダ・ボム』を拝読してましたが、本作はそれにも増して鬼シブ。若者の今を切り取った書きっぷりには、毎度惹きつけられますね。
本作は高額料金が当たり前のホストクラブや特殊詐欺など、未来のある若者たちがはまってしまう現代の社会問題を描いています。一方で同郷の同級生、茉莉との出会いによって、有馬の価値観が変化していく。社会派の犯罪小説でありながら、淡い青春小説でもあるのです。
まず推したいのは登場人物の掛け合いですね、特に有馬と茉莉がセンス抜群でカッコイイのよ! 二人の会話をずっと読んでいたくなる。犯罪行為と恋愛という相容れないはずの二つが上手に乳化しており、最高の味わいになってるんです。
まだ素直になり切れない二人ですが、友達から恋人になるシーンは必見ですね。茉莉はこれまで誰にも認められなかった有馬の不安から救ってくれるのです… もはやマリア様のようで、セリフひとつひとつに吸い込まれてしまうようでした。
そして本作で描かれる「七つの試練」が象徴的でした、まるでゲームにでてくるミッションのような感覚なんです。犯罪の第一歩目なんですが、半ば悪いことと気が付いているのに止められないという恐ろしさよ。
終盤にはどんな犯罪か描かれるのですが、実際に犯罪が起こってもゲームの中にいるようなんですよね。いつの時代も犯罪なんて関わりたくないけど、ネット社会になってから、より近くに犯罪を感じるようになったよなー。こわい
ラストの展開も堂々としていて好感が持てるし、鋭く潔く終わるところもCoolで最高。犯罪はイカン、しかし若者たちの息吹や成長をもっともっと感じたくなる作品でした!
■ぜっさん推しポイント
本作の舞台は東京、作中に出てくる様々な地名を見てると、かつて東京に住んでいた頃を思い出す。
東京は、若くて金持ちで力があるような、人生がうまくいってる人にとっては楽しい街なんです。でもそうじゃない人にとっては、冷たく、苦しく、乾いた街でしかないんだよね。
私は犯罪に手を染めることはなかったけど、行きつく先がそうなっちゃう気持ちはわからんでもない。しんどくなったら、地方に住んでみるのもいいもんだと思うよ。 -
Posted by ブクログ
5編からなる、私立探偵を主人公とした連作短編集。
どの話も、もっともらしい仮説が立てられ、そこに矛盾が生じ、最後に真相が明らかになる。
短いストーリーの中で毎回きちんと推理がひっくり返され、ミステリとしての完成度は安定している。一方で、犯人の意外性は少なく、それほど大きな驚きはなかった。
全体として淡々とした語り口で、なかなか感情移入できず、少し読みにくさを感じる。
ただ、感情を多く語らない乾いた文体や、自分の足で事件を追う私立探偵の姿に、これがハードボイルドなのかと納得した。
そんな中でも、事件を重ねるごとに少しずつ主人公の人間性が見えてくるのが印象的。
今の私には、まだこの作品の魅力が十分に見えていないのかもしれない。
噛めば噛むほど味が出る、スルメのような作品。シリーズを重ねることで、さらに味わいが深まっていくような気がする。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最初このタイトルが何を意味するのかさっぱり分からなかったが、グラフィティのアーティスト?がゲリラ的に”落書き”することをボムって言うんだって学んだ。要はイギリスのバンクシーが流行った流れでのストリートアーティストの物語だと知る。そもそも街中や橋げたなどの柱や壁などにグラフィティとかっこよく言ってる”落書き”を描く人をあこがれの対象にしたり神格化させるってどうなのよ?って嫌悪感を持ってるんだけど、この物語はちゃんとその感情を収めてくれるオチがあり、うまくまとめたもんだなぁと感心した。ストリートアートの文化は嫌いだが、アート作品としては決して嫌いじゃない、むしろ好きで、映画『ブレイクダンス』などのバックグラウンドなどのグラフィティはよく真似てノートに書いたりしたものだ。この物語はジャンル的に人を選びそうだけど読み進めていくうちにグラフィティを描く人、追う人、見る人、描くのをやめた人のそれぞれを楽しめるんじゃないかなぁと思う。