尾﨑愛子のレビュー一覧
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児童書なので読みやすいのもあるけれど、話の展開が気になって一気に読んでしまった。
ヒトラーが政権を握ってから比較的早い段階で、この物語の主人公アンナはドイツからイギリスへ脱出する。このキンダートランスポートという救出システムのことはよく知らなかったが、イギリスの民間の救援団体が組織的にユダヤ人の子どもたちをヨーロッパからイギリスの家庭に送り込む活動のことで、実際に約一万人の子供たちを受け入れたのだそうだ。
このような全くの善意の行動があったことにまず驚かされる。
アンナはその極く一部の幸運な子どもだったけれど、頭の回転の速さと勇敢な行動によってある重大な事件を未然に防ぐことになる。でも、アンナ -
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ネタバレ第2次世界大戦の児童書もたくさんあって、いろいろ読んだけれど、キンダートランスポートの話は初めて。
いい話で「こんなにうまくいかなよ」ってこともいっぱいあるけど、12歳の子の体験することとしては大変すぎて、二度とないように願わずにはいられない。
「なにが起きても、パパの明るく勇敢な娘でいるんだよ」
「幸せになるように努力しなさい。いつも人にやさしくね。あたえられた機会はすべて、最大限に生かすのよ」
2度と会えないかもしれない12歳の娘に最後に言った両親の言葉に打たれる。
キンダートランスポートで助かった子どもが1万人、命を失った子どもが150万人という事実は重い。 -
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実際に、この作品で描かれたような「冒険譚」を経験した少女がいたのかどうか、はわかりません。どちらかというと、
「YA文学」としてのエンタメ性を持たせるために創り出された物語なのかもしれません。
とはいえ、そのことは本書の魅力を減じるものではなく、ナチスの支配するドイツからイギリスへ亡命するためのキンダートランスポートに助けられる場面、イギリスにわたってからの疎開生活での苦労、両親への想い、次第にイギリスへと迫るナチスへの恐怖など、当時の少女が抱いたであろう心情がとても精緻に描かれています。
現実は救いがない結末となることも少なくありませんが、本書で語り手(アンナの孫)が「ぼくは、どうしても -
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キンダートランスポートについては、以前読んだ児童書の登場人物を通して少しだけ知っていた。
本書では主人公のアンナが、キンダートランスポートによってドイツからイギリスへ渡り、
慣れない環境の中里親家族のもとで成長していく。
ドイツからイギリスへの列車の旅も決して安全なものではなかった。
親と別れ大きな不安を抱えながらも子ども同士年上の子が年下の子の面倒を見て支えあう姿に、戦争というものの残忍さを感じずにはいられない。
アンナは同級生の偏見や里親家族の姉弟とのぎくしゃくする関係など、辛いことも両親との約束を思い出し乗り越えていく。
村にナチスが潜伏していることを発見し、ドイツにいた頃のトラウマ -
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キンダートランスポートってなんだろう?と疑問に思いながら手に取り、帯の「なにが起きても、パパの明るく勇敢な娘でいるんだよ」の言葉にひかれて購入した。
我が子を助けるためにキンダートランスポートを利用し、子どもだけをドイツからイギリスに移住させること。親元を離れ、異国の地で見ず知らずの里親たちと暮らすこと。どちらの立場で考えてみても想像を絶するつらさだ。でも、それすら叶わなかった子どもや大人がたくさんたくさんいた。そのことを忘れてはならないし、決して他人事ではなく誰にでも起こりうることだという認識をもっていなければと思った。
また、物語としてもたいへんおもしろく、ドキドキワクワクしながら読む -
Posted by ブクログ
飼い犬が野生化し、過酷な自然の中で知恵と勇気を絞って生き延びてゆく、という設定は、無情な自然に振り回されたり愛や安心を求めては挫折を味わう犬の姿にもの悲しさを感じると同時に、圧倒的な相手に勇敢に立ち向かう姿には熱いロマンを見せてくれます。
主人公のもとにやってきた子犬・ゾーヤは、愛情をたっぷり注がれる、と思ったその晩、チェルノブイリ原発事故により1日も立たずに人の力を借りずに生き延びねばならなくなります。
あらたな人間との出会い、オオカミとの逢瀬、そして子育て。やがて彼女とオオカミの血を引いた息子・ミーシャの冒険を通して、数奇な運命の環の全体像が見えてきます。
犬の視点から描かれる場面と、 -
Posted by ブクログ
本書は児童書(YA向け)です。が、
これがなかなか侮れない内容なんです。
本書の主人公アンナはドイツでユダヤ人迫害が強まり、キンダートランスポートでイギリスに逃れ、里親のもとで疎開生活を送ります。
この「キンダートランスポート」私も始めて聞く言葉なんだけど、イギリスの民間救援団体が
ユダヤ人の子供達を救出して列車と船でイギリスに送る大作戦で、なんと一万人の子供達がイギリスの里親のもとへ無事受け入れられました。
この作戦の凄いところは政府公認にもかかわらず、資金は団体や個人で賄われていたことと、善意と親切心だけをたよりに遂行された綱渡りのような計画だったということです。
日本だったらどうなんだ -
Posted by ブクログ
チェルノブイリ原発事故。放棄される街に取り残され野生で生きることになった子犬と、その子犬を手放すことで心に深い傷を負った女の子のお話。
犬の物語のウエイト多め。兄弟と遊んで、母犬にごちそうをもらって、のんきな子犬のストーリーからふとした時に、まるで晴天にさっと雲がかかるように一瞬で生死を分つ危険な世界に変わる野生の暮らし。
ジュブナイル小説は良作が多いと思う。自分も、10代の頃に読んでいまだにふとあれを再読したいなと思う小説がある。子ども向けの文学作品投票にノミネートされていたので読んでみたけど良かったです。もう投票は終わったけど他のノミネート作品も読んでみます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ限りなく5。
キンダートランスポートは、初めて聞く。
英国で、国の事業では有る物の、実質は民間によって、ユダヤ人の子ども達を英国の里親へと紹介、養育するというプロジェクトだったそうだ。
孫息子が戦争についてのレポを書くため、祖母に尋ね、その昔語りを聞くという体。
アンナは、ドイツで、出版社の3代目の父のもと、裕福な家で何不自由なく育ったものの・・・
このプロジェクトでケント州の農家の家庭へ。
ベッドルームが2つしかない、決して豊かとは言えない家庭が、里親に名乗り出て、精一杯の愛情を注ぐ。
ついにドイツと英国も戦争状態になり・・・
そして戦局を左右しかねない大きな事件が・・・
というお話。