あらすじ
原発事故後のチェルノブイリの森でたくましく生きぬいた子犬のゾーヤと,その子ミーシャ,そしてゾーヤの飼い主だった少女ナターシャの運命を追う壮大な物語.野生のオオカミやクマやヤマネコがすむ森でくりひろげられる動物たちのスリルあふれる冒険の歳月を,カーネギー賞作家が生き生きと描く.挿絵はキース・ロビンソン.
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Posted by ブクログ
飼い犬が野生化し、過酷な自然の中で知恵と勇気を絞って生き延びてゆく、という設定は、無情な自然に振り回されたり愛や安心を求めては挫折を味わう犬の姿にもの悲しさを感じると同時に、圧倒的な相手に勇敢に立ち向かう姿には熱いロマンを見せてくれます。
主人公のもとにやってきた子犬・ゾーヤは、愛情をたっぷり注がれる、と思ったその晩、チェルノブイリ原発事故により1日も立たずに人の力を借りずに生き延びねばならなくなります。
あらたな人間との出会い、オオカミとの逢瀬、そして子育て。やがて彼女とオオカミの血を引いた息子・ミーシャの冒険を通して、数奇な運命の環の全体像が見えてきます。
犬の視点から描かれる場面と、その犬と触れ合う人の視点での語りのバランスが良く、ボリュームのある作品ですが飽きずに最後まで読み進めることができました。
ひょっとすると、東日本大震災の後の福島第一原発事故でも、同じようなことがあったのかも、と思うと他人事ではありません。とはいえ、日本の山ではオオカミのような敵はいないと思いますから、ロシアの森林に比べれば生きやすいのかもしれませんが……
かつて人間に変われていた犬が野生化し、群れをつくって脅威に立ち向かうところなど、どことなく漫画「銀河;流れ星銀」のシリーズを思い出しました。
Posted by ブクログ
チェルノブイリ原発事故。放棄される街に取り残され野生で生きることになった子犬と、その子犬を手放すことで心に深い傷を負った女の子のお話。
犬の物語のウエイト多め。兄弟と遊んで、母犬にごちそうをもらって、のんきな子犬のストーリーからふとした時に、まるで晴天にさっと雲がかかるように一瞬で生死を分つ危険な世界に変わる野生の暮らし。
ジュブナイル小説は良作が多いと思う。自分も、10代の頃に読んでいまだにふとあれを再読したいなと思う小説がある。子ども向けの文学作品投票にノミネートされていたので読んでみたけど良かったです。もう投票は終わったけど他のノミネート作品も読んでみます。