石井仁蔵のレビュー一覧
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ネタバレ「勝つために治せよ、絶対に」
小学生の透は、難病で入院生活を送っており、行きたかった遠足はもちろん、学校にも行けず癇癪を起してしまう。
そんなとき、小児病棟でチェスに没頭する輝と出会う――。
<年齢より才能より、大事なものがある。もうわかってるだろ?>
チェス部の実力者である高校生の晴紀だが、マイナー競技ゆえにプロを目指すかどうか悩んでいた。
ある日、部長のルイに誘われた合コンで、昔好きだった女の子と再会し……?
「人生を賭けて、ママに復讐してやろう。」
全盲の少女・冴理は、母からピアノのレッスンを強要される日々。
しかし盲学校の保健室の先生に偶然すすめられたチェスにハマってしまい――。
「俺はただ、チェスを指すこの一瞬のために、生きている。」
天涯孤独の釣崎は、少年院を出たのち単身アメリカへわたる。マフィアのドンとチェスの勝負することになり……!?
そして、彼らは己の全てをかけて、チェスプレイヤー日本一を決めるチェスワングランプリに挑むことに。 -
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ネタバレ読み終えて、チェスって人生なんだなと思った。優勢だと思っていた局面が不利に転じたり、その逆も然り。
この作品の中でも、登場人物たちは割と淡々と理不尽な目に遭っている。だけどチェスのように、持てる駒を最大限生かしてなんとか勝ちに持っていこうとしている。時には戦略的にドローを選ぶこともあるのが人生。様々な定石や戦法を知ってこそ、戦えるというのも。
そして、チェスというロジカルな題材の中に、釣崎のような破茶滅茶な人がいることで、いいアクセントになっている。まさかマフィアが出てくるとは思いもよらなかった。意表を突く展開も、もしかしたらチェスなのかも。
ルールが曖昧だったので、序盤のチェス盤が出てくるページは、各駒の役割と動きを確かめ、なぜ詰みなのかを理解しながら読んで、少し賢くなれた気もする。ちゃんとした盤と駒に触れて、チェスをやってみたいなぁ。 -
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手に取ったきっかけは書店で目についたからだが、読もうと思ったきっかけは第3章の『プロモーション』で盲目の少女、冴理がツリザキに格下扱いされるシーンが良かったからだ。そしてその後の展開も。
だけど全部読んでみて思ったのは、『物語の主人公みたいな背景がないと、チェスはできないのか』だった。この小説では、登場人物の誰もが重い過去、病気、複雑な家庭環境といった強力な背景を背負わされている。連作短編だから、仕方ないといえばそうだ。構造上、すべての主人公が読者の気を惹く人間でなければならないのだろう。だけど、読み進めるにつれてバックボーンTCGを見てる気分になり、ちょっと悲しかった。
最初に見たときから、私はツリザキが好きなのだろうと思う。考え方がシンプルだからかもしれない。それとも、彼が一番純粋に思えるからだろうか? 彼には常に未来がなく、今しかない。刹那的だが、ある意味で、誰よりも自然体だ。
彼の中ではチェスがあまりにも絶対で、相手との関係性とか礼儀とか配慮とか、そういう社会的な薄皮が育っていない感じがする。言ってしまえば、まあ、子供なのだろう。
また、中国人訛りの怪しいキャラクターであるヤンさんも個人的に大好物で、作品の良いアクセントになっていた。
あ、あと、コルトは良いよね。ロマンがあって。銃ってとにかく金属臭いし重いし、ああなるほど、必要以上に触りたくないな、と思ってはいるが。
全体として少しドラマチック過ぎる部分が目につくものの、何気に夢のない話でもある。何故なら、チェス『も』出来る人間ではなく、チェス『しか』出来ない人間でなくては、勝てないからだ。
5章は映像的で、読んでいて一番速度が乗った。漫画など別媒体への展開も映えそうに見える。そして同時に、結末が読めてしまっていることに愕然とした。構造上、勝者はこの人だろう、とどこか確信めいたものがずっと頭の片隅に存在していたからだ。
章立てや目的がはっきりしているため、読後感は少年漫画のようにスッキリ。物語よりも、その骨組みが面白かった。
しかし、よく考えたらこの小説、かなりの人数が退場している気がする……。 -
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少年少女がチェスと出会い、その道を模索して行く群像劇かと思ったら急に「アカギ」でも始まった?と疑わんばかりの釣崎編にびっくりした。チンピラなんて好きにはなれないのだけど、ハングリー精神と行動力おばけなところは本当に凄いと思う。マスコミは穢れたグランドマスターなんて中傷するが、努力や情熱、能力は本物なのだからわざわざ称号を引き合いに出してとぼしめるなんて逆に全チェスプレイヤーを敵にするとは思わないんだろうか。まあ、立派な人は清廉であってほしいという気持ちは分かるけれども。
そんな異端児とハンディキャップを背負ったプレイヤー達との勝負は良かった。特に透の健康に恵まれない不憫さは見てるこちらにも辛いものがあり、本人も人生に対して儚げだったけれども、釣崎に触れ、生きる為の熱を取り戻してくれてたのは周囲にとっても幸いだったのではないだろうか。盲目の子も家庭環境も普段の生活もハードモード過ぎてとても辛かった。大変な分、大成して報われて欲しい。 -
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チェスが生きること同義になった若者たちの物語。物語の始まりは、病院の長い闘病生活の中で知り合った透、輝、瑠偉がチェスを通じて友達になり、それぞれ無事に退院していくところから。時間はポンと進んで、舞台は瑠偉が通う開化高校へ。チェス部の後輩晴紀が物語に加わる。さらに、物語の後半で大きく関わってくる釣崎も。
チェスに魅入られたものたちが16マスのチェス盤で闘う描写は、チェスを全く知らなくても惹き込まれる。読後、自分は、人生を賭けることができるものに出合った彼らの熱量に圧倒されていたんだ、と気づく。チェスがあったから生きてこられた、そんな若者たちの物語でした。 -
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大好きなものに人生をかけるチェスプレイヤーたちの物語。前半、熱い展開に興奮しました。
荒削りで勢いに乗って書いた感じが、また良かった。作者はチェスが好きで好きで堪らないのだろうと想像に難くない。
ただし釣崎のエピソードは非現実感が強く、あまり入り込めなかった。マフィアの描写はいかにも空想っぽく、ヤンの日本語はあまりにステレオタイプ。ちょっとそこで冷めたので★マイナス1といったところ。
一生を捧げられるものがあることが羨ましい。それに出会えたことも奇跡だし、同じものを愛せる仲間やライバルがいることが、なんと尊いことか。
私も今からでも、そんな対象に出会えるだろうか。 -
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チェスに、文字通り人生を捧げた4人の物語。
難病で入院中、チェスを知った少年。
難関校に進み、親の希望通りの官僚エリートコースかチェスの道に悩む少年。
親とも衝突し、藻掻く中でチェスを知った少女。
少年院を出てチェスにのめりこみ、ヤクザやマフィアといった裏社会とチェスで関わる青年。
チェスがなければ、きっと交わらなかったはずの人生が大会で交差していく。
何かに夢中になるという、きらめきを感じられる一冊。ただこういう物語で非行どころではない、マフィアなど裏社会がガッツリ絡んでくるのは、ちょっと珍しい気もする。
チェスがわからない人でも楽しめるし、最初の方はちょっぴり図解もあり。
なんだかちょっとチェスが気になって、軽くアプリを始めてみた次第……