布施由紀子のレビュー一覧

  • 壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き

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    米国最貧州のひとつルイジアナ州のメキシコ湾に面し、古木の森と湿地地帯の広がる豊かな自然にめぐまれたレイクチャールズ市。沿岸部はエネルギーベルトと称される産油地帯でもあり、世界に名だたる大手石油関連企業がこぞって進出している化学工業地帯。当然、環境汚染は深刻で、がんの多発地帯としても知られる。事故による原油流出、有害物質の漏出など、問題は後を絶たないが、被害に対する補償は十分になされていないようだ。それでも白人が多数を占める住民たちは、環境規制に反対し、企業の自由な経済活動を擁護する共和党を支持している。税金が企業誘致に使われても文句を言わず、雇用創出と税収増のためと受け入れる。現実には雇用は外

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    2024年12月27日
  • ライトニング・メアリ 竜を発掘した少女

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     化石発掘の歴史に燦然とその名を残す偉人ライトニング・メアリことメアリ・アニングを題材にした伝奇小説!実際小説のように波瀾万丈なメアリの人生のうち、少女時代から最初に発掘されたイクチオサウルスとの出会いと別れまでを描いた物語だ。
     現代人では想像できないような過酷な生活を送るメアリの感情や心情が、痛々しいまでに痛切にリアルに描かれている。まさに雷のようなメアリの鋭さや厳しさや賢しさ、そこに隠された悲しみと傷、それすらも超えていく意志の強さが印象的。最後の簡単な略記の部分によれば幼馴染のヘンリーやエリザベスなど多くの友人や支援者に恵まれたというメアリだがそのカリスマがよく表現されていだと思う。最

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    2023年08月09日
  • ライトニング・メアリ 竜を発掘した少女

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    世界初の魚竜を発掘した少女メアリ・アニングの物語

    赤ん坊の頃、落雷に直撃されるも生き延び、父親に「ライトニング・メアリ」と呼ばれた少女メアリ・アニング。彼女が情熱を注いだのは、化石発掘だった。経済的な苦境、周囲の冷たい目、父親の死……あらゆる壁や挫折に屈せず前に進む彼女は、1811年頃、12歳のとき、ついに世界初の魚竜を発掘することに成功する。ぜひ、その興奮と喜びを、メアリといっしょに味わってみてほしい。

    「すてきな服とすてきな冒険のどちらかひとつを選べと言われたら、わたしはいつだって迷わず冒険を選ぶ。」

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    2022年11月08日
  • ライトニング・メアリ 竜を発掘した少女

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    すごくワクワクしてドキドキして、泣ける話だった。ちょっと訳語らしい読みにくい部分もあったけど、途中から気にならなくなった。色々悔しくて残念なことも多く、それに強く共感することもあって、涙が止まらない。

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    2022年11月01日
  • ライトニング・メアリ 竜を発掘した少女

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    メアリー・アニングの話を絵本で初めて読んだとき、たしか、「なんだ化石を売っていたのか。ちょっと残念だな」という程度の認識しかなかったような気がする。

    でも、この本を読むと頭をガツンガツンなぐられるというか、「そうやっていかなきゃ、暮らして行けなかったんだよっっ!!」ということが痛いほどわかる。というかわからされる。かつてのアマチュアスポーツと同様、科学の研究にのめりこむことができたのは、アカデミズムの世界に受けいれられる家柄ももちろんだけど、何より経済的に余裕があって、困窮していないということなんだ。

    メアリは正反対で、貧しい家具職人の娘。しかも父親は化石探しの際の事故がもとで大けがをし、

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    2022年04月24日
  • 壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き

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    感情労働で有名なホックシールドによる、南部アメリカの右派白人がどのようなナラティブ(この本の中では”ディープストーリー”)を持っているのか分析した大作。一見ルポタージュのように読めるため、非常に読みやすいのだが、その中身は重い。アメリカという国の中での貧富の差の大きさに驚き、また人々の中にこれほどの思想の断裂があることが分かるからだ。

    アメリカンドリームは、努力したものが報われる、という物語。ということは、努力していないものが報われてはおかしい。属性だけでアファーマティブアクションしてもらえるのも変だし、税金が生活保護に使われているのも腹立たしい。そのため、小さな政府を希望する、という風に説

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    2019年11月07日
  • 壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き

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    合理性やロジックに照らして理解しがたいと思われる心情を平然と語る相手を前に、我々はしばしば「理解できない」と口にし共感の壁の前で踵を返してしまう。著者はリベラルの立場から、押し付けられる環境汚染に黙って耐えむしろ連邦政府の保障を拒む共和党支持者(ティーパーティ)の「理解できない人々」の中に分け入り、丹念に聞き取りを続けるうち、彼らの中に、事実かどうかはともかく彼ら自身がそうと自覚する自らの立ち位置=ディープ・ストーリーを見出す。共感の壁の前で一旦は立ち尽くしながらも必死で這い上り超えていく著者の姿勢に深い感動を覚えるとともに、格差という分断の進む世界でのとるべき姿を教えられる。

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    2019年05月06日
  • 壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き

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    トランプ大領領の支持者は関税化、法人減税等の自分たちの経済的利益を損なう政策を実施しているにも関わらず、依然として支持続けるのは何故かということがこの本を読めば理解できる。筆者はフェミニスト社会学の第一人者であり、2011年から5年間にわたり、ルイジアナ州に長期滞在し、コアなトランプ支持者に密着取材して、彼らの心情を詳らかにした。メディアは彼らを白人至上主義と単純化しているが、多くは善良な市民であるだけに、余計、問題の根の深さを感じた。

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    2019年04月21日
  • 壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き

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    東京新聞20181223掲載 評者: 渡辺靖(慶應義塾大学環境情報学部教授,政策メディア研究委員,アメリカ研究,文化人類学etc)
    週刊東洋経済2019112掲載‣
    朝日新聞2019112掲載評者: 西崎文子(東京大学名誉教授,成蹊大学名誉教授,アメリカ政治外交史,日米関係史wiki)
    日経新聞2019126掲載評者: 渡辺靖(慶應義塾大学教授同上)
    日経新聞2022101掲載評者: 小熊英二(慶応義塾大学総合政策学部教授,歴史社会学者)

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    2022年10月07日
  • 壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き

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    なぜトランプが米国でメジャーになれたのか、ここに書かれたような、日本では言及されることがほとんどない人たちの存在を知らずにして、理解できる訳がないと思った。米国のことを、全然理解してなかった。もしかして、米国人の多くもそうなのかも。

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    2024年08月15日
  • ライトニング・メアリ 竜を発掘した少女

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    私がメアリを知ったのは『メアリー・アニングの冒険』(朝日選書)で、それがとても面白く、こんな面白いものがなんで絶版状態なのかと不満に思っているのだけれど、それが事実を追いかけているのに対し、こちらは物語仕立てなので、まあ別物。作者の思いや、今日的目線が、かなり含まれ、肉付けされている。

    メアリがどうこうと言う以上に、母娘もの、思春期女子もの、としてよく出来ているのでは。

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    2023年10月18日
  • 壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き

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    好意的に捉えれば、思想の違う人々への理解を深めようとしているように見える。
    悪意的に捉えれば、彼らの矛盾を積極的に際立たせに行っているように見える。

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    2023年10月09日
  • 壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き

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    私は保守派の人をざっくり言うと「田舎者」のイメージで捉えていました。
    人はいいんだけど、考え方が古いし、コミュニティ第一だし、って。筆者からも(この本の書き方からも)、保守派を見下している部分があるように所々で感じました。

    でも、この本を読んで、保守派の人が何に憤りを感じていているのかを知り、「田舎者」というイメージで捉えてはいけないのだと教えてもらいました。

    でも、ここが本当に難しい所ですよね。
    リベラル派も保守派も、個人個人・個々の点ではお互い理解し合えるんですよね。でも、政治の舵取りとなると、途端に票を相手方に入れることはできなくなる。
    この辺りが、資本主義にがっちり首根っこを押さえ

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    2023年08月06日
  • 壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き

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    今年一番の本。バークレーの女性社会学者が、ティーパーティの本場ルイジアナに入り込み、インタビューを重ねて、壁の向こう側の人々の「想い」を共感的に感じ、言葉化した本。

    南部の人々が心の奥底に持っている「ディープストーリー」は、共感できるストーリーだった。自分たちは、アメリカンドリームを目指して、真面目に列に並んで、頑張っているのに、政府は、アファーマティブアクションやら、性の多様性、シリア難民、はては、石油まみれのペリカン(地球環境)まで、自分たちの前に、別の人たち、別のグループを割り込ませる。そして、自分たち白人労働者は忘れられている。そんな、政府は頼りにならない。企業の違法な環境汚染に一番

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    2023年07月16日
  • ライトニング・メアリ 竜を発掘した少女

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    19世紀初め、イギリスで魚竜の化石を発掘した少女の物語。
    幼いながら冴えた知性とまっすぐな気性、そして化石への強い好奇心を持つメアリから目が離せなかった。
    稲妻のような激しさから、勇気をもらえる一冊。

    とにかく、メアリの強烈な個性が痛快だった。
    実在した女性の少女時代だけを書いているけれど、恋愛についてはほぼない。化石発掘を通じて階級の異なる人々と友情を育む様子は楽しいけれど、ちょっと苦さも感じる。
    父から化石との付き合い方・楽しさを学び、完璧に理解されているわけではないけど兄や母と協力して発掘作業を進めた点は家族の有り様としておもしろい。
    関わる全ての人が良い人ではないけど、要所要所で尊敬

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    2022年04月26日
  • 壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き

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    馴染みのある言葉になってしまったアメリカの分断について、リアルな事柄として思いを馳せることになった。アメリカ社会を切り取った他の本も読みたいと思わせてくれた本になった。

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    2021年11月16日
  • 壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き

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    科学を信じない人達、進化論や温室効果ガスはもちろん、社会科学の統計的な事実にも目を閉ざし、自分達の感性に訴えかけて来る右派の言説のみ信じる。この壁を乗り越えて理解し合うことは出来るのか?アメリカをまとめ上げるリーダーの出現を待つしかないのか。コロナがそのきっかけになるかと思ったが、今のところそうではなさそうだ。

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    2020年04月26日
  • ライトニング・メアリ 竜を発掘した少女

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    ネタバレ

    伝記や評伝ではなく「おはなし」である。著者の想像力が効きすぎたタイプの。

    本編は評価外で、あとがきと合わせて星3つの評価とした。以下のような書きざまがとても苦手だから。
    ・一人称の主人公にときどき著者が憑依する
    ・ダブスタ構文

    本作品には昭和の少女漫画の風情がある。
    登場時無敵のヒロイン、男の暴力に腹を立てるが自らも挑発的でめっぽう手が早い。やがて挫折し、不幸な目にあうが、再び無敵になってドヤってエンド。
    余談だが、『トワイライト』シリーズを読んだときにもそう感じた。シンクロニシティか、文化の輸出によるものか。

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    2023年02月08日
  • ライトニング・メアリ 竜を発掘した少女

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    化石を発見する少女、メアリのお話。
    時代的な背景も厳しく、兄弟が、幼い時になくなったり、食べるものにも不自由する。
    メアリは、海岸で恐竜の頭蓋骨を見つけ、その体も見つけ出してしまう。
    ヘンリーや、エリザベスという素敵な友達もいて、化石を探し続けるメアリ。
    自分の好きなことを追いかけるお話、素敵でした。

    訳者あとがきで、イギリスでは、科学技術に関わる女性が少なく、日本も同じ問題をかかえている。
    児童書の分類なので、ぜひぜひ子供たちに読んでほしいと思った。

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    2022年09月30日
  • 壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き

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    左右両派の対立・分断が深まるアメリカ。保守派はリベラル派のことを、怠け者を助け道徳を損なうとみなし、リベラル派は保守派のことを、頑迷な愚か者だと考える。まったく違う価値観ゆえに、両者はまるで違う国に暮らしているかのようだ。
    代表的な「青い州」カリフォルニア・バークレーに暮らすリベラルな研究者である著者は、「赤い州」ルイジアナのティーパーティ支持者たちを、2011年からトランプ大統領が誕生した2016年までの5年間にわたって訪ね、インタビュー調査を行った。リベラル派と保守派の間にそびえたつ「共感の壁」を克服しようと、事実に関する分析の多くは補遺に置くなど、研究書というよりも旅のエッセイのように、

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    2023年03月25日