A.R.ホックシールドの作品一覧
「A.R.ホックシールド」の「壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き」「盗まれた誇り 喪失と恥と右派の躍進」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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ビジネス・実用
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Posted by ブクログ
アメリカの社会学者で、カリフォルニア大学バークリー校のホックシールド教授は、2010年頃、政治的分断がなぜアメリカで起きているかと言うことに興味を持った。そして、アメリカ南部のルイジアナ州に赴き、大企業による環境汚染に苦しむ人々がなぜ大企業を優遇する政策を推し進める共和党を支持するのかについて5年以上かけてフィールドワークで調べた本である。これらの人々の草の根保守派運動を、ティーパーティー運動と呼ぶ。
アメリカの東西海岸に多いリベラル派の人たちからは、中央部の保守系の人々と言うのは、自分の利益のために考える料簡の狭い人々だと見られていた。
しかし、ホックシールド氏が会ってみると、素晴らしい人柄で、各人が自分で人生を切り開き、多くの人は環境汚染に苦しみながらも共和党を支持していたのであった。
それらの人々には、アメリカという国は大企業、自分たち、中央政府や地方政府、そして政府になぜか優遇される人たちのプレーヤーがおり、メインプレーヤーは大企業と自分たちであり、大企業と自分たちは雇用や地域の発展という絆で結ばれている。そして大企業と、自分たちの共通点は自力で前に進んでいこうとする力を持っているということだと意識している。一方、政府の役人や自分たちとは違う人たちは大企業や自分たちが収める税金で生きており、言わば自分たちの足枷となっているグループだと思えてしまう。
そのため、石油掘削の結果環境が汚染されてもそれ自身は問題だが、前に進もうとする(開発を推し進める)ことの方が大事なのだ。
ところが、政府は環境保護という名目で規制しようとする。さらに政府の役人の給料は大企業やや自分たちの支払った税金からではないのか?なんでそこに住んでいない役人が口を出すのか訳がわからないという考えになっていく。さらに1970年代以降、リベラル派の考えで、黒人やヒスパニック系やアジア系などが差別されない様に優遇され、近年ではLGBTQや女性も優遇され白人男性だけがなぜか優遇措置が回ってこないこれは不公平だと感じていた。
著者のホックシールドは数多くのインタビューを通じて、実際に何が起こっているということより、人々が自分をどの様なストーリー中の投影しているかが重要だと気づく。
そんなことを人々が感じていたころ、ビジネスマンと成功したドナルド・トランプが出てきて、強いアメリカを叫び出した。まさにアメリカを前に進めるという旗印の権化ではないか!
かくして、トランプは支持されるのであった。
前に読んだヴァンス副大統領の自伝より草の根保守の考えをよく理解できた気がした。
Posted by ブクログ
米国最貧州のひとつルイジアナ州のメキシコ湾に面し、古木の森と湿地地帯の広がる豊かな自然にめぐまれたレイクチャールズ市。沿岸部はエネルギーベルトと称される産油地帯でもあり、世界に名だたる大手石油関連企業がこぞって進出している化学工業地帯。当然、環境汚染は深刻で、がんの多発地帯としても知られる。事故による原油流出、有害物質の漏出など、問題は後を絶たないが、被害に対する補償は十分になされていないようだ。それでも白人が多数を占める住民たちは、環境規制に反対し、企業の自由な経済活動を擁護する共和党を支持している。税金が企業誘致に使われても文句を言わず、雇用創出と税収増のためと受け入れる。現実には雇用は外国人労働者に奪われ、企業は州政府から法人税を免除されたうえ、利益は海外や州外の本社に回収されているというのに。
Posted by ブクログ
感情労働で有名なホックシールドによる、南部アメリカの右派白人がどのようなナラティブ(この本の中では”ディープストーリー”)を持っているのか分析した大作。一見ルポタージュのように読めるため、非常に読みやすいのだが、その中身は重い。アメリカという国の中での貧富の差の大きさに驚き、また人々の中にこれほどの思想の断裂があることが分かるからだ。
アメリカンドリームは、努力したものが報われる、という物語。ということは、努力していないものが報われてはおかしい。属性だけでアファーマティブアクションしてもらえるのも変だし、税金が生活保護に使われているのも腹立たしい。そのため、小さな政府を希望する、という風に説明されている。なるほどそのように考えればトランプ氏は、努力して富豪になった一流の人、ということになるわけだ。
本書にはマックス・ヴェーバーは引用されていないが、キリスト教と資本主義が相性がいいということも納得できる内容だった。
最終的に本書はリベラルと右派の間を繋ぐことができないか(例えば環境問題等では共闘できるのではないか)という視点から描かれているため、読後感も良好。アメリカに旅行する前に読むと見えるものが変わりそうな良著。
Posted by ブクログ
合理性やロジックに照らして理解しがたいと思われる心情を平然と語る相手を前に、我々はしばしば「理解できない」と口にし共感の壁の前で踵を返してしまう。著者はリベラルの立場から、押し付けられる環境汚染に黙って耐えむしろ連邦政府の保障を拒む共和党支持者(ティーパーティ)の「理解できない人々」の中に分け入り、丹念に聞き取りを続けるうち、彼らの中に、事実かどうかはともかく彼ら自身がそうと自覚する自らの立ち位置=ディープ・ストーリーを見出す。共感の壁の前で一旦は立ち尽くしながらも必死で這い上り超えていく著者の姿勢に深い感動を覚えるとともに、格差という分断の進む世界でのとるべき姿を教えられる。