八木詠美のレビュー一覧
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マジック・リアリズムになんの抵抗もないのですらすら惹き込まれる様に読んだ。海外の小説の様な、短編映画の様な。
登場人物の描写に、他者との距離感やパーソナルスペース、コンフォートゾーンといった表面的な部分に身をつまされることもありながら、自他との境界線が曖昧な感覚を覚えたりもする。
一箇所、とてもいいなと感じた文章があったけれど忘れてしまった。物語的に特にそんなに重要ではないのだろうけれど、そういった場面、文章に出会えると偶然に感謝したくなる。
ところどころ惹かれるところはあるのだけれど、それがどういうものなのかうまく言語化出来ない。なのでもう一度読んでみたいと思わせる力のある作品でした。次回作も楽しみです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ柴田さんは、部署で唯一の女性ということでコーヒー出しなどの名も無き仕事を暗黙の了解でやらされている。ある日突然ふとしたことでキレてしまい妊娠してるといってしまい。。という感じなんだが、
いやぁー、私何読まされてるの?色々とつっこみながら楽しく読みました。
こんなにも嘘妊娠てバレないもんなんですね。
そして柴田さん、妊娠アプリ導入してみたり、赤ちゃんいますキーホルダーを貰ったり、マタニティビクスに通って妊婦たちの集まりに参加したりと、なんか楽しんでる。すごいなぁ。そして、こんな大きな嘘ついてるのに、会社でめっちゃ冷静だしボロ出ないし。私ならめっちゃテンパると思う。柴田さん、キモ座ってるわ〜。それとも、こんな会社辞めてもいいし。とか思っていたのかなー?
あと、最後の方のアレは一体どういう現象なんでしょ?蹴ってるとか、エコーに映ってるとかさ。本当に産まれたのかと思ったよ。
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作中では女性社員の役割とされている、郵便物の仕分けやコピー用紙の補充などの“名前のない仕事”。私の職場では当番制になっていて、女性という理由でその役割を求められることはない。
ただし、飲み会の席になると話は変わる。誰かのコップが空いたとき、わざわざ「若い女性に注いでもらった方が美味しいでしょう」などと声を張り上げる旧式な人間がいまだに生息しているのだ。
そんな時は「慣れていないので注ぎ方がわからないんですー」と言ってドボドボと泡を立てながら注いで差し上げるのだが、“お酒を注げ、食べ物を取り分けろ”という視線は、密やかに、でも確実に若手女性に向けられる。
仕事中には男女平等に扱うように注意していても、飲み会での振る舞いが本音なのだろうと思う。
そんな旧式人間が集う職場で、“妊娠”することで一矢報いる柴田さん。
最初はその嘘を面白がりながら応援するが、次第に一体どこでバレるのかと心配になってくる。
中盤では雪と孤独の中で、“誰かと家族になるとは、互いの存在を担保して忘れ合わないような環境を作ることなのかもしれない”と考える柴田さんに共感しつつ、終盤は決意の強さがちょっと怖くなってくるけど、、ラストは爽やか!
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ネタバレ芦田愛菜さんで映画化してほしい。
博物館で休館日にヴィーナスの話し相手のアルバイトをする、ただし会話はラテン語で。というちょっと不思議なお話。
最初のうちは少し読みづらく感じたけれど、少しずつ世界に引き込まれて最後はホッとできる、そんなお話だった。
主人公の、人との関わり合いを避けがちな不器用さだったり、休みの日はYouTubeのライブカメラを見ているのが好き、という部分に共感していた分、ヴィーナスと出会って、勇気を出してインナーカラーを入れたり背筋を伸ばして歩くようになったあたりの主人公の多幸感が伝わってきて、自分まで変われそうな気持ちになった。
自分は何色のどんなものを纏っているのか、トウマに聞いてみたくなったし、ゆくゆくはセリコさんみたいな正体不明の大家さんになりたいし、アテナのモーニングルーティンすごく興味ある。 -
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主人公である柴田さんの実際子供がいないのにあたかもいる想定をした日々を過ごし、妊婦の悩みに耽っているその徹底した姿が面白く、聖母マリアを労う妊婦さながらの視点は特に面白かった。
職場へ不遇を改善するためがだけの偽装妊娠であったと思っていたから、中盤から後半にかけての柴田さんがマタニティビクスや産婦人科に通い初める姿は偽装の域を超えていて想像妊娠しているのかと思わされたし、妊娠の真偽があやふやになり混乱させられた。
職場の不遇への対抗手段として偽装妊娠を演じる大胆さも、終盤の想像妊娠しているかのような描写も、離婚した旦那の存在もあって子を持つことへの憧れがあったのではないかと思わされた。
結果、担保する嘘として想像の赤子を持ちその嘘を唱え続けることで、会社での女性に対する暗黙の仕事の押し付けがあった環境に変化をもたらした柴田さんの姿は、妊娠・出産・育児を押し付けられる女性をも励ますものになっただろう。
嘘でも良いから何か担保するものを持ち、それを守る自分を守る事で今とは違う環境や姿を求める方法は色んな環境において効率的に思えた。現状を望めないことが多々ある自分もそのようなバイタリティを持ちたい。 -
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博物館の古代ローマのヴィーナス像の話し相手。これがホラウチリカが教授から紹介された博物館の休館日(月曜日)だけのバイトだった。えっと思った。と同時に面白そうとも。
彼女は普段は冷凍庫のなかで働く。ヴィーナスからホーラと呼ばれ、話し相手をするうちに、ヴィーナスに魅了されていく。
彼女が小学生の頃気づいた、洋服の上からきている黄色いレインコートの存在。他人には見えないけれど自分を守るためのものを誰もがまとっているのかもしれない。
大家さんと上の階に住む少年とのやり取りには、ほほえましいものも感じた。
あり得ない物語だと思うけれどもなぜだか不思議な魅力のある作品だった。
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Posted by ブクログ
不眠になるほどブラックな会社で働くお仕事小説かと思いきや、途中からファンタジーになってびっくりした。
ウェルビーイングとか言いながら終業時刻を超えてタダ働きさせたり、有休時にも仕事の電話が容赦なくかかってきたりと、まあ普通に嫌な職場だ。フルリモートって体験したことないけど、一定時間PCの操作がないとアラートがなるってシステム、本当だとしたら怖い。落ち着いてトイレにも行けないじゃないか。
野上が不眠症になっても誰も助けてはくれないし、唯一の味方であろう夫も優しいようで優しさの押し売り感があって、不眠って本当に自分との戦いなんだぁ…と思った。
眠るためならできることは何だってしようと思うのも分かる。ヤクルトのY1000みたいな効能を謳うフラモ999や読書会など、あらゆるものを試す野上の姿は、自分が不眠になったときもこうなるんではないかと予想できる姿だった(読書会は行かないが)。
眠るために魂を差し出せと言われたらどうだろうか。
まず断ると思うけれど、眠れない=ちょっとずつ寿命が縮まるような気もしなくはないので、それならば魂を少し削って眠れるようにした方がいいのかもしれない。
とりあえず野上にはしっかり休んでほしい。