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Posted by ブクログ
留学でお世話になった先生から久しぶりに連絡が来て、この本を紹介してもらった。
タイトルの“空芯”とはどういう意味なのだろう、と思いながら読み進める。
主人公の柴田さんは、「名前のない仕事」を押し付けてくる会社へのちょっとした抵抗のつもりで、妊婦を装うことにする。
定時帰りから始まり、マタニティビクス、アプリへの記録と着々と出産への過程を辿る彼女の姿は、活力に満ち溢れていて頼もしい。
しかし、その反面、空っぽのお腹を抱えたその姿は、どこか痛ましく、空虚にも思える。
偽装妊娠なのだから、もちろん夫も存在しない。夫無しで出産まで辿り着けてしまう──その事実に気づいた時、ある種の怖さが込み上げる。
人類誕生以来、脈々と続いてきた妊娠・出産のシステムは、どうして今も周知されず、隔離され、孤独を生んでいるのだろう。
そして、私もこれから経験するのだろうか、乗り越えられるだろうか、過去に生きた女性たちのように。
Posted by ブクログ
主人公は34歳独身女性会社員・柴田。職場でのうむを言わせぬ雑用の強要にキレ、「妊娠している」と口走ってしまい、そこから辿る彼女の偽装妊婦生活が綴られます。著者のデビュー作にして太宰治賞受賞作です。
この嘘がどこで破綻するのかと思いきや、空虚な日常が色づき始め、彼女は妊婦生活に没入していきます。母子手帳アプリ、妊婦健診、エコー検査?と続き、これは妄想なのか願望なのか…、嘘がジワジワと現実を侵食していきます。
物語は、「妊娠5週目」〜「妊娠40週目」、そして「生後12か月目」と続きます。ぜひ彼女の行く末を見届けてほしいと思います。彼女が作中で発する「自分だけの場所を嘘でもいいから持っておく」という言葉が、本書の肝なんでしょう。
社会の不公平、女性への抑圧、周囲の不快なあれこれに強く言えない欝屈。だから嘘を持ち、唱え続ければ別のどこかに連れ出してくれるかもしれないと…。控えめだけど、切実で痛烈な社会構造批判となり、今を生きる女性の共感を得るのでしょう。
本作は新人のデビュー作にもかかわらず、2020年の刊行前に翻訳のオファーが殺到する異例の事態となったそう。失礼ながら存じ上げませんでした。
平凡な女性が職場の理不尽を静かに訴えるという内容が、2017年ハリウッドの#MeToo運動や2018年韓国の『82年生まれ、キム・ジヨン』の世界的ヒットの潮流に乗ったとの評もあるようです。
ちなみに主人公は、紙管を扱う会社に勤務しています。紙管は紙芯とも呼ばれ、ラップやトイレットペーパーの軸になる紙製の筒のこと。タイトルの「空芯」は、一般的には茎の中が空洞になっている葉物野菜のことらしいですが、芯がない状態は会社で扱っている物であり、自分自身の象徴なのでしょうか? だとすれば、彼女の芯にあるものは、やはり世の中への抗い?と想像をかき立てる物語でした。
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