あらすじ
「だから私は嘘を持つことにしたの」―日々押し付けられる雑務にキレてつい「妊娠してます」と口走った柴田が送る奇妙な妊婦ライフ。第36回太宰治賞受賞作にして、昨年刊行された英語版がNYタイムズやニューヨーク公共図書館の今年の収穫に挙げられるなど話題となり、現在、世界14カ国語で翻訳進行中の鮮烈デビュー作が待望の文庫化!
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Posted by ブクログ
留学でお世話になった先生から久しぶりに連絡が来て、この本を紹介してもらった。
タイトルの“空芯”とはどういう意味なのだろう、と思いながら読み進める。
主人公の柴田さんは、「名前のない仕事」を押し付けてくる会社へのちょっとした抵抗のつもりで、妊婦を装うことにする。
定時帰りから始まり、マタニティビクス、アプリへの記録と着々と出産への過程を辿る彼女の姿は、活力に満ち溢れていて頼もしい。
しかし、その反面、空っぽのお腹を抱えたその姿は、どこか痛ましく、空虚にも思える。
偽装妊娠なのだから、もちろん夫も存在しない。夫無しで出産まで辿り着けてしまう──その事実に気づいた時、ある種の怖さが込み上げる。
人類誕生以来、脈々と続いてきた妊娠・出産のシステムは、どうして今も周知されず、隔離され、孤独を生んでいるのだろう。
そして、私もこれから経験するのだろうか、乗り越えられるだろうか、過去に生きた女性たちのように。
Posted by ブクログ
第36回太宰治賞を受賞 !
主人公視点で終始描かれている長編小説。
主人公に対して、思うところは人それぞれあるかと思います。
とにもかくにも、不思議で奇妙なストーリーにぐいぐいと引き込まれました。
嘘をついてまで、周囲にわからせようとする設定が斬新 !
ひじょうにインパクトのある作品で面白かったです。
Posted by ブクログ
昔、もしかしたら嘘ついて産休いけるんじゃないか、と思ったことがある。思ったことがあるだけで、いやバレるなと当たり前だが実行できなかった。当たり前だ。この小説が14カ国で翻訳されていると知るに、ワールドワイドな感覚なのか!と驚きを覚えた。主人公か走り切る姿は痛快だが、隙間には痛みのようなものを感じた。これは映像化しない方が良い作品と思う。
Posted by ブクログ
嘘なのか本当なのかわからなくなり、混乱し、心がざわめく。この不気味さがおもしろい。
日常の着眼点やワードセンスもおもしろくて、一作目にして早くも八木さんのファンになりました。
Posted by ブクログ
理不尽に対して、清々しさと狂気で立ち向かえ!
「嘘」というシェルター。嘘をついてるわけではないにしろ、あえて他人には言わないでいる自分の一部、なんかはみんなあるよね。
良い小説を読んだわ。
Posted by ブクログ
表紙に惹かれて購入。産前産後の周囲の人たちの行動や、その中で主人公の感じたことが痛いほどわかってじんわりと辛い気持になったが、自分自身に呪文をかけることにした主人公の強かさが鮮やかで、羨ましいと感じてしまった。本当に、ゼリーは冷蔵庫に入れておけばいい。
Posted by ブクログ
YouTuberの梨ちゃんが紹介しているのを見て読んでみました!
まず装丁が可愛い、、
そしてタイトル、読み進めていくと、はぁ〜なるほど、、なんというセンス。
女だからと当たり前にやらされていた雑務に腹が立って、
妊娠しているフリ、を始めるところから話が始まります。
え、、どういうこと、、??というラスト、
展開していくにつれてだんだんと見えてくる主人公の気持ちや視点みたいなものの表現の仕方も素晴らしかった、、
Posted by ブクログ
職場で無意識に課せられてる雑用にキレて「妊娠している」という設定になった柴田さん…すごい。
いつバレるかとヒヤヒヤしましたが、そんなありきたりな展開ではありませんでした。
「妊婦」として抱えていた嘘が実体を持つ終盤には驚愕しました。
しかしそれも、柴田さんの“嘘”だったのかもな。産科でのエコーにまで嘘を吐き通して……
「妊婦」というカテゴリーにいるけど、外側から見ている柴田さんが冷静な目で描写してて面白かったです。エアロビとか。
本当の自分をわかってあげられるのは自分しかいない、というのを改めて考えると、孤独だけどなんと心強いものでしょう。
当たり前なのだけれど、日々に忙殺されると簡単に忘れてしまうな。
東中野さんが空人くんに注目しなくなる日はこないだろうと思いました。柴田さんが転職するしかない。
バームクーヘン切ってる田中は、飲み会の田中なんだろうな
Posted by ブクログ
職場での不満から妊娠していると嘘をつき、妊婦生活をはじめる、、、お話(?)。
仮妊婦目線でどういう生活を送り、どう職場との折り合いをつけるのか、妊娠週数区切りで展開されていき、途中?となる展開があり、ラストどうなるの?と楽しく読めましたなぁ。
途中のアレはいったいどういうことだったのか?、理解できずにいるものの、それもそれとして押し切られてしまえそうな説得力がありましたなぁ。
こうして妊婦さんの苦しみ(仮)を知りつつも、現実のところ、なかなか難しいのでしょうなぁ。
Posted by ブクログ
職場にキレて「妊娠してます」と嘘をついた柴田、奇妙な妊婦生活が始まる__
この設定には軽い衝撃を受けた...何だそれ
果たして彼女の"空芯"はバレてしまうのか?
これは静かなる狂気を孕んだ世の中への報復かもしれない。恐ろしいけど、面白い。
Posted by ブクログ
来客後のコーヒーの片づけ…
煙草の吸殻が突っ込まれている
放置されたままだ…
「今日は片づけ、代わってもらえませんか!今、妊娠してて、コーヒーのにおいも、煙草の煙もダメだし…」
こうして主人公は妊娠5週目に入った…
もう冒頭からこの偽装妊娠がどうなっていくのか、心配で、心配で…
と思ったら、全く大丈夫だった…(笑)
妊婦になった主人公に余分な仕事や雑用を押し付けてくる人もいないし、定時に帰られるし、なんならみんな体を気遣ってくれる!
とにかく主人公の妊娠生活は淡々と進むのだ…
母子手帳アプリに記録をつけ、食事に気をつけ、マタニティビクスに通う…
しまいには、本当に妊娠しちゃたの?って思ったくらい…(笑)
そして妊婦になり見えてくる世界がまたイチイチ納得!(妊婦になったことはないが…
とにかくありえない設定だけど、この主人公が気になってたまらなくなってしまうのよ…
いや、わたしも妊婦になってみようかしら?なんて思ってしまうもん…
というかやれてしまいそうな、勘違いしてしまいそうな不思議な作品…(笑)
いや、さすがに無理やで!分かってるで…
とにかく
「空芯手帳」ってタイトルも最高!
ラスト一行も最高です〜
Posted by ブクログ
もうなにやっちゃってんの~~?!
って思うところもありつつ
わかる部分もあるわけで、、
誰かがやってくれるだろう仕事ってどこに行ってもあって、思いやれずに他人任せな部分の描き方はリアルだし、そういう雑務は女性になりがちなのもわかる。
そんな中偽造妊娠してそこまで通しちゃう主人公が強すぎる!。
偽造ってわかってるのにどんどん赤ちゃんが成長していく過程も面白く読める。
Posted by ブクログ
柴田さんは、部署で唯一の女性ということでコーヒー出しなどの名も無き仕事を暗黙の了解でやらされている。ある日突然ふとしたことでキレてしまい妊娠してるといってしまい。。という感じなんだが、
いやぁー、私何読まされてるの?色々とつっこみながら楽しく読みました。
こんなにも嘘妊娠てバレないもんなんですね。
そして柴田さん、妊娠アプリ導入してみたり、赤ちゃんいますキーホルダーを貰ったり、マタニティビクスに通って妊婦たちの集まりに参加したりと、なんか楽しんでる。すごいなぁ。そして、こんな大きな嘘ついてるのに、会社でめっちゃ冷静だしボロ出ないし。私ならめっちゃテンパると思う。柴田さん、キモ座ってるわ〜。それとも、こんな会社辞めてもいいし。とか思っていたのかなー?
あと、最後の方のアレは一体どういう現象なんでしょ?蹴ってるとか、エコーに映ってるとかさ。本当に産まれたのかと思ったよ。
Posted by ブクログ
作中では女性社員の役割とされている、郵便物の仕分けやコピー用紙の補充などの“名前のない仕事”。私の職場では当番制になっていて、女性という理由でその役割を求められることはない。
ただし、飲み会の席になると話は変わる。誰かのコップが空いたとき、わざわざ「若い女性に注いでもらった方が美味しいでしょう」などと声を張り上げる旧式な人間がいまだに生息しているのだ。
そんな時は「慣れていないので注ぎ方がわからないんですー」と言ってドボドボと泡を立てながら注いで差し上げるのだが、“お酒を注げ、食べ物を取り分けろ”という視線は、密やかに、でも確実に若手女性に向けられる。
仕事中には男女平等に扱うように注意していても、飲み会での振る舞いが本音なのだろうと思う。
そんな旧式人間が集う職場で、“妊娠”することで一矢報いる柴田さん。
最初はその嘘を面白がりながら応援するが、次第に一体どこでバレるのかと心配になってくる。
中盤では雪と孤独の中で、“誰かと家族になるとは、互いの存在を担保して忘れ合わないような環境を作ることなのかもしれない”と考える柴田さんに共感しつつ、終盤は決意の強さがちょっと怖くなってくるけど、、ラストは爽やか!
Posted by ブクログ
主人公である柴田さんの実際子供がいないのにあたかもいる想定をした日々を過ごし、妊婦の悩みに耽っているその徹底した姿が面白く、聖母マリアを労う妊婦さながらの視点は特に面白かった。
職場へ不遇を改善するためがだけの偽装妊娠であったと思っていたから、中盤から後半にかけての柴田さんがマタニティビクスや産婦人科に通い初める姿は偽装の域を超えていて想像妊娠しているのかと思わされたし、妊娠の真偽があやふやになり混乱させられた。
職場の不遇への対抗手段として偽装妊娠を演じる大胆さも、終盤の想像妊娠しているかのような描写も、離婚した旦那の存在もあって子を持つことへの憧れがあったのではないかと思わされた。
結果、担保する嘘として想像の赤子を持ちその嘘を唱え続けることで、会社での女性に対する暗黙の仕事の押し付けがあった環境に変化をもたらした柴田さんの姿は、妊娠・出産・育児を押し付けられる女性をも励ますものになっただろう。
嘘でも良いから何か担保するものを持ち、それを守る自分を守る事で今とは違う環境や姿を求める方法は色んな環境において効率的に思えた。現状を望めないことが多々ある自分もそのようなバイタリティを持ちたい。
Posted by ブクログ
何だこれ、凄い面白い。
の感じから始まる。
そして途中から、ん?どういう事?となる。
バレないかな?とドキドキするけれど
電子レンジでもコーヒーでもない「私」に関連する
会社での男性陣、まだまさ世の中に多いんだろうなと思う。
けれど人は悪くないんだろうね、妊婦になった柴田さんを気遣えるのだもの。
Posted by ブクログ
空芯手帳は、軽い衝撃を受けた、笑
妊娠しているというウソをつき始めて、十月十日を超えても、ウソをつき通す主人公、柴田。
妄想なのだけど、やけに現実味があって、その塩梅が狂気を感じさせる。
時々、え、妊娠してるの?してないの?どっちなの?となる。笑
妊婦のコミュニティに溶け込んでいるのも面白い。笑
『妊娠というのは本当に贅沢、本当に孤独。』
とな。、
まだ体感としてはわからないけど、
同じ女性だろうと、他人だから完全には理解しえなくて当然で、だからこそそれを前提にして、
驕らず、謙虚に相手を思いやることが大切だと言いたいのかなぁ。
あとは、自分を守るためには、時に嘘もつくこと。
それが主人公にとっては妊娠だったのかな。
Posted by ブクログ
「職場にキレて偽装妊娠。」の帯に惹かれて手に取った一冊。
最初はコメディを読むくらいの感覚で面白おかしく読み始めたけど、主人公が母子手帳アプリを使い始めたり、マタニティビクスに参加したり…。妊婦健診でエコーに胎児が写った時には頭が混乱してこのお話をこの先どう読み進めて良いかわからなくなってた。
だけど、「自分だけの場所を、嘘でも良いから持っておくの。人が一人入れるくらいのちょっとした大きさの嘘でいいから。その嘘を胸の中に持って唱え続けていられたら、案外別のどこかに連れ出してくれるかもしれないよ。その間に自分も世界も少しくらい変わっているかもしれないし」(P.173)という主人公の言葉を読んだ時にスッと胸に落ちたというか、主人公のことを受け入れられた気がした。自分の心を守ることって本当に大切だよね。エコーに写った胎児は主人公の強い思いが生み出した自分を守るシェルターみたいなものだったのかなって思ってる。
解説もすばらしくて、この物語をわかりやすく噛み砕いてくれていて理解を深める助けになった。
Posted by ブクログ
不思議な本でした。妊娠は嘘なのに、途中で妊婦健診や胎動の件があり、「あれ?実は妊娠してるの?」と思いきや…!?
職場での女性ならではの仕事には共感できるけれど、バレた時のリスクを考えると私には真似できないなと思いました。
Posted by ブクログ
「職場にキレて偽装妊娠。」
帯に惹かれて購入。
訳がわからない内に物語が進んで、気付いたら先が気になりすぎて入り込んでた。
その中でも淡々と続く日常。
目に映る風景の描き方、文章は、正直最近よく見るなぁというのが感想。よく見かける言葉達の羅列〜とか思ってしまって、その若手新人感がどうしても刺さらなかったけど、後半で巻き返してきた。
進むにつれて、ホラー?というか、世にも奇妙な物語感。なるほど、こうしてきたか、って感じ。
知ってる感情はあった、そこの言語化は嬉しかった。
もう少し感情部分が多くあればもっと好みだったと思う。
Posted by ブクログ
巻末の松田青子の解説が秀逸。
私も「魔女」だったんだ笑
自分の中に嘘を持つ。物語を詰めていく。それが「形」となるところは、映画になりそう。
リアルに考えると会社のシステムはどうなんだ、とか、言い出したらキリがないが、これはそんな小説ではないのでいいのだ。