留学でお世話になった先生から久しぶりに連絡が来て、この本を紹介してもらった。
タイトルの“空芯”とはどういう意味なのだろう、と思いながら読み進める。
主人公の柴田さんは、「名前のない仕事」を押し付けてくる会社へのちょっとした抵抗のつもりで、妊婦を装うことにする。
定時帰りから始まり、マタニティビ
...続きを読むクス、アプリへの記録と着々と出産への過程を辿る彼女の姿は、活力に満ち溢れていて頼もしい。
しかし、その反面、空っぽのお腹を抱えたその姿は、どこか痛ましく、空虚にも思える。
偽装妊娠なのだから、もちろん夫も存在しない。夫無しで出産まで辿り着けてしまう──その事実に気づいた時、ある種の怖さが込み上げる。
人類誕生以来、脈々と続いてきた妊娠・出産のシステムは、どうして今も周知されず、隔離され、孤独を生んでいるのだろう。
そして、私もこれから経験するのだろうか、乗り越えられるだろうか、過去に生きた女性たちのように。