八木詠美のレビュー一覧

  • アンチ・グッドモーニング

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    最近読んだ同じ著者の『空芯手帳』より、私的にはだいぶわかりやすいし面白く感じた!
    不眠の描写も、形だけの働き方改革でよりしんどく非人間的な労働環境となっているフルリモートの職場も、微妙に理解が足りないけれど世間的に見たら優しい夫も、読んでいて苦しくなるほどリアル。
    仕事のせいでプライベートが侵食され、誰も本気では心配してくれない状況の中で「賢いふりをしながらインスタントな手段を取り続け、ご自身を少しずつ弱らせている」社会人として、この小説が刺さる人は多いのでは。
    どんどん技術は進歩し、本来なら働くのは昔より格段に楽になっているはずなのに、どうしても問題は生まれ続けるのだなあ、人の世の悩みは絶えず、だからこそ文学も生み出され続けるのだなあと思わされた。

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    2026年08月27日
  • アンチ・グッドモーニング

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    ネタバレ

    本を1冊読んで、自分の生き方の痛いところを突いてくるようなセリフにひとつでも出会えたなら、その読書はそれだけで儲けものだと思う。

    野上さんが倒れて飯沢さんが助けに来た場面。バッグの中を整理しながら、こちらの問いを聞き流さずに淡々と放たれたこの一言が、ずっと頭に残っている。

    「賢いふりをしながらインスタントな手段を取り続け、ご自身を少しずつ弱らせているということです」

    向き合って詰問するのではなく、手元を動かしながら逃げ場をなくすように吐き捨てられる描写のうまさも相まって、胸にぐさりと刺さった。

    なぜここまで響いたのかといえば、完全に自分の癖を見透かされていたからだ。

    これまで自己分析のノウハウを調べたりハウツー本を読んだりして、「やり方を学んだ」段階でどこか満足してしまうことがよくあった。

    手軽でインスタントな手段を身につけ、賢くなった気になっていただけ。

    実際には「学んだ」だけで、何ひとつ「変わって」などいないのに。

    手軽な解決策に飛びついて分かった気になるのは、自分を守る「受け身」のようでいて、わかったフリで満足してしまっていた。

    ノウハウを集めて満足するのをやめて、ちゃんと自分の行動を変えなきゃいけない。

    つまり「やれ」ってこと。

    それにしてもマジックリアリズムが村上春樹っぽく感じますね。私が村上春樹で育ったようなものだからそう感じるのかもしれませんが。

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    2026年08月15日
  • 喋る猫はいなくても

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    初めて読んだ八木詠美さんの本。
    なぜ小説を書いているのか、小説家から見た今の世界の嘆きにとても共感。次は小説を読んでみたいな。

    "自分が小説を書くのは、さびしいからだと思う。ふと思いついた想像の切れ端、すぐには声にできなかった疑問や反発、そこからにじんだ心のうちの何かを誰かに伝えたいのにどうすればいいのかわからなくて、でもそれらをなかったことにしたくなくて、行き場なく蓄積していくうちに、言葉がこぼれ、物語が始まる。小説は言わなかった言葉でできている。"

    "大して説明もしないうちに「結局さ」と、結論めいたものを突然話し出す人を目にすると、いつもそっと心が冷える。"

    "わからないから書き、わからなさを比喩にし、どうしてかわからないけれど物語が動く瞬間がある。その一行に、私は驚いていたい。"

    "人の気持ちがあまりにカジュアルに軽んじられる場面も多い中で、自分で自分を認めなくては毎日やってられない。"

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    2026年06月06日
  • 休館日の彼女たち

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    主人公の名前、大家さんの話し方、
    少しみんな奇妙な感じ。
    そのぎこちならさが心地良く、適度な距離感を保ち、気づいたらすごく好きになっていた。
    人が変化していく力を感じた。

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    2025年06月24日
  • 休館日の彼女たち

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    この作者の初めて読む作品。不思議な話に引き込まれました。文章の表し方も独特でくせがあり、私は好きでした。所々難しい所がありましたが、面白い作品でした。

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    2024年02月18日
  • 休館日の彼女たち

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    クセは強いが、読んでいて何故か癒やされる作品だった。ラストに向けての展開が好みで読後感も良かった。
    「ラテン語が話せる主人公が、美術館のヴィーナス像と話をするアルバイトをする」という発想は天才的。

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    2023年11月15日
  • 空芯手帳

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    留学でお世話になった先生から久しぶりに連絡が来て、この本を紹介してもらった。

    タイトルの“空芯”とはどういう意味なのだろう、と思いながら読み進める。
    主人公の柴田さんは、「名前のない仕事」を押し付けてくる会社へのちょっとした抵抗のつもりで、妊婦を装うことにする。

    定時帰りから始まり、マタニティビクス、アプリへの記録と着々と出産への過程を辿る彼女の姿は、活力に満ち溢れていて頼もしい。
    しかし、その反面、空っぽのお腹を抱えたその姿は、どこか痛ましく、空虚にも思える。

    偽装妊娠なのだから、もちろん夫も存在しない。夫無しで出産まで辿り着けてしまう──その事実に気づいた時、ある種の怖さが込み上げる。

    人類誕生以来、脈々と続いてきた妊娠・出産のシステムは、どうして今も周知されず、隔離され、孤独を生んでいるのだろう。

    そして、私もこれから経験するのだろうか、乗り越えられるだろうか、過去に生きた女性たちのように。

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    2023年08月22日
  • 空芯手帳

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    第36回太宰治賞を受賞 !
    主人公視点で終始描かれている長編小説。

    主人公に対して、思うところは人それぞれあるかと思います。
    とにもかくにも、不思議で奇妙なストーリーにぐいぐいと引き込まれました。
    嘘をついてまで、周囲にわからせようとする設定が斬新 !
    ひじょうにインパクトのある作品で面白かったです。

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    2023年07月25日
  • 空芯手帳

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    昔、もしかしたら嘘ついて産休いけるんじゃないか、と思ったことがある。思ったことがあるだけで、いやバレるなと当たり前だが実行できなかった。当たり前だ。この小説が14カ国で翻訳されていると知るに、ワールドワイドな感覚なのか!と驚きを覚えた。主人公か走り切る姿は痛快だが、隙間には痛みのようなものを感じた。これは映像化しない方が良い作品と思う。

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    2023年07月17日
  • 空芯手帳

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    どこまでが現実で何が起きているのかわからないままだったけれど、そこが良い。
    妊娠中の今、読んで良かった。

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    2023年06月29日
  • 休館日の彼女たち

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    新聞書評で見かけて気になっていた本。
    何やら不穏な設定に馴染むのに少しだけ時間がかかったが、黄色いレインコートに身を包んでいるぎこちなさと不快さを自分も肌に感じながら、ラテン語を日常語のように操る主人公とともにヴィーナスの元へ通ううちに、だんだんとだんだん楽しくなった。

    冷凍倉庫でのバイト、ハシバミという名の学芸員(整った容姿の)、隣の部屋の小学3年生、大家のセリコさん(「う」と「い」の音が抜ける人)、隣の部屋でポルトガル語講座を聞いているトド、葬儀屋を兼ねている美容院…
    おもしろかった。

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    2023年06月28日
  • 空芯手帳

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    嘘なのか本当なのかわからなくなり、混乱し、心がざわめく。この不気味さがおもしろい。
    日常の着眼点やワードセンスもおもしろくて、一作目にして早くも八木さんのファンになりました。

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    2023年06月21日
  • 休館日の彼女たち

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    こんなケッタイな小説読んだ事ない。
    物事をどう見たらこんな文章になるんだろう。
    話があっちこっちに飛ぶような、事象を裏側から見てるような、それでいて話は進んでいく。
    一体この話はどこに行くのだ?何処に収斂するのだ?と思ったら素晴らしいラストが待っていた。
    どうやってヴィーナスを盗み出したのが具体的描写が全くないので不明だが、しかも台車に乗せたくらいでヴィーナスと一緒に飛行機に乗れるのか。
    それにしても爽やかなラストであった。
    癖になりそうな変な小説。
    デビュー作も読んでみようかな。

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    2023年05月31日
  • 空芯手帳

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    理不尽に対して、清々しさと狂気で立ち向かえ!
    「嘘」というシェルター。嘘をついてるわけではないにしろ、あえて他人には言わないでいる自分の一部、なんかはみんなあるよね。
    良い小説を読んだわ。

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    2023年04月08日
  • 空芯手帳

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    ネタバレ

    表紙に惹かれて購入。産前産後の周囲の人たちの行動や、その中で主人公の感じたことが痛いほどわかってじんわりと辛い気持になったが、自分自身に呪文をかけることにした主人公の強かさが鮮やかで、羨ましいと感じてしまった。本当に、ゼリーは冷蔵庫に入れておけばいい。

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    2023年04月01日
  • アンチ・グッドモーニング

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    ネタバレ

    「規則正しい睡眠」の「規則」に疑問と憤りを投げつける、スピード感のある作品だった。夢も現実も描写がリアルで共感しながら読めるが、ムキムキなフラモレディの飯沢さんや蛇苺色のメガネをかけた出冬覚など、脇役の個性が豊かで良いアクセントになっている。
    その場しのぎの処世術ばかり上手くなる自分に辟易としながら、生をこわずにはいられない現代人を肯定するような、救いのある終わり方なのが好きだった。

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    2026年09月29日
  • アンチ・グッドモーニング

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    不眠に悩む女性の物語。朝方、浅い眠りのなかでみる悪夢のような小説でした。現実と夢の境がわからなくなるような。
    不眠経験のあるわたしは、この本で当時の追体験をしている感覚でした。わかるわかるーと思いながら、苦しくもなりました。
    不眠に陥った時は、思い当たる大きなストレスはないと思っていたけれど、今思えば頑張り過ぎていたのは明らか。有休なのにギリギリまで仕事に応じてしまい、結局ドツボにハマって抜け出せなくなる感じとか、いつも自分を削っている感じ。まさにこの小説の主人公と思考回路が同じだったなと。

    アンガーマネジメントとかポジティブシンキングとか受け身を取ることを必死に学んで来た結果、「あらゆる侮辱を受け流し、あらゆるルールに合わせて身体を歪め、あらゆる犯罪を許してきた。上司を合法的に殴る方法を調べていたはずがいつのまにかストレスによい食べ物を教えられ、それはストレッチや呼吸法へと変わった。けれど、いくら受け身を取ろうと痛みは痛みのままだった。」

    心の中の「飯沢さん」の声を無視しないように生きていかねば。

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    2026年09月27日
  • アンチ・グッドモーニング

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    作家名で手に取った本。
    面白かった。
    私はほとんど寝られないことはないが、それでも時に寝付けない事がある。
    眠れない人の話を聞いたり、メンタルクリニックに行くことに抵抗のある人の話を聞いたりすることもあるし、他人事ではないという認識はある。だからこそ、メンタルがおかしくならないようにほどほどを心がけているがそれが正しいのだろうかという思いもある。
    正しいとか、効果があることが正義ではないよな。

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    2026年09月26日
  • アンチ・グッドモーニング

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    世界に期待することにも飽きたけど、呪うことにも飽き飽きしたから

    不眠に悩む主人公。リモートワークで通知音にせき立てられ、オンライン研修を倍速で視聴する。眠れない日々は続き、やがて現実との境界を失っていく。
    芥川賞候補作。風刺の効いた作品。現代の「ウェルビーイング」に対して、それって思考停止で馬車馬量産したいだけですよね?って唾を吐きかける。文章は引き込まれるんだけど、主人公の設定や行動が作者の作為を感じさせるのがすごくもったいない。休暇日なのにスマホに届く仕事の通知を見てしまうところ、なんや胸が締め付けられてしまった(179頁★3.5)

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    2026年09月25日
  • アンチ・グッドモーニング

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    もう疲れました。って感想になるほど引き込まれ、アンチ・グッドモーニングの世界へ入り込んでしまいました。読んでることが現実か夢かわからないような感覚もありました。そして読み終わる頃には、なんか私のこの人生も文学になり得るほどのドラマティックでドメスティックじゃん。そんな気にもなりました。

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    2026年09月23日