吉見義明のレビュー一覧
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1991年の慰安婦被害者である金学順(キムハクスン)さんの実名告発に衝撃を受けた著者は、関係文書を丹念に収集分析し、岩波新書「従軍慰安婦(1995年発行)」で「慰安婦制度」の主体が日本軍であったことを明らかにした。しかし、「日本軍慰安婦(従軍に等しい扱いを受けた慰安婦)」たちの苦難を否定する声は後を絶たない。自らが産業慰安婦として働いたのであって、日本軍の責任はないとする。しかし、前作から30年の時を経て、新資料やエゴドキュメントを通して、本書の研究成果は、軍官産民が一体となって慰安婦制度を持続させ、女性の性奴隷を継続していたことを明確にする。また、本書では「慰安婦制度の強制連行」はなかった
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興味があるなら絶対読むべき一冊。
こちらも慰安婦問題について詳しく知れる。多分、この人が調査の第一人者だと思う。
読んで思ったけど、日本は変なところが右翼すぎる。私も右寄りだと思うけど、流石に歴史を捻じ曲げてまでは日本を守りたくはない。
慰安婦問題擁護派の意見は、根拠が間違っているし、これを声高に掲げていると思うと本当に恥ずかしい。こういう問題は触れづらいし、またして政治家が簡単に動くような内容ではないと思うけど、行動してほしい。
「アジア女性基金」を最初に聞いた時は、賠償はしてるのかと安心していたが、その実態は酷いものだった。国民からの募金、政府資金は良いとして、首相のお気持ち手紙なんてもら -
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私が知る研究者で著者の吉見義明氏は、1990年代の従軍「慰安婦」研究、2000年代の日本軍毒ガス戦という認識であったが、1980年代の初期作品となる本書では、民衆や大衆の日記や手記、聞き取りなど膨大な資料や調査を背景として、アジア太平洋戦争を見つめ直すナラティブな作業であり、論考は日本型「ファシズム」の変遷を検証している。
第1章「デモクラシーからファシズムへ」、第2章「草の根のファシズム」、第3章「アジアの戦争」、第4章「戦場からのデモクラシー」の四章編成で構成される。戦争へ突入し、戦争に疑問を持ちつつも最終的には戦争を支持する民衆を追った1~3章。空襲が激化し、日本が焦土化してきた中 -
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朝日が捏造を認めた現在、旗色の悪い吉見センセイである。しかし、批判するためにはまずその主張を理解すべきだろうと思い、本書を読んだ次第である。
慰安婦問題の論点とは何なのだろうか。池田信夫センセイや櫻井よし子なんかは、「強制」や「詐欺」についての軍の関与がポイントであり、そのような事実はなかったから問題はないとしている。しかし、本当に論点はそこなのだろうか。欧米諸国や韓国が問題視しているのは、その時代に軍の経営する慰安所が存在した(これは明白な証拠があり、池田氏らもこれに反対はしていない)ことが問題であり、強制があったかどうかではない、というズレがあるのだ。吉見氏は強制の有無は大きな問題であり、 -
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慰安婦問題に関する歴史的流れや議論点がまとまっており、歴史事実委員会の声明に対するカウンター言説になっている。
女性の人権や尊厳に対してあたりまえにすべき配慮や賠償に加え、男性である兵士の尊厳に対しても問題があるのではないか?というところまで考察がなされていて勉強になった。
戦地での性欲解消やストレス発散のためとを軍部に女性をあてがわれることに対して、男性として抵抗はなかったんだろうか。実際に慰安所を利用していた兵士達の回顧録がいくつか引用されており、鶴見俊輔さんの対談『戦争が遺したもの』で触れられていた慰安所の女性と兵士の間にあった愛情のようなもの、と合わせて、この問題を被害者=女性、加 -
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タイトルに「草の根」とあるように、本書は、アジア太平洋戦争を草の根で支えた民衆の反応や意識を、戦争体験記や手紙、公的機関による調査等様々な資料を用いて明らかにしようとする。
本書参考文献には多くの戦争体験記が掲載されているが、著者はそれらを読み込んで、現地で従軍、商売や仕事をしていた彼ら彼女らが、どのような体験をし、どのようなことを考え、あるいは戦後になって当時をどのように総括したかを、一人ひとり具体的に取り上げて叙述にまとめ、その実相に迫っている。
中国を始め、インドネシア、ビルマ、フィリピンといったアジア各地で日本軍は戦ったが、戦場における日本軍の行動、特に民衆に対する殺人、強盗、