高橋杉雄のレビュー一覧
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本書は、高橋杉雄編著であり、高橋氏の他にも3人の研究者の章もある。このことで、より客観的に分析ができているように思える。
内容は難しいものではなく、日頃ニュースを聞いてぼんやり思っていることを丁寧に文章化した感じなので、そうそうと納得しながら読める。
このような丁寧な分析に基づく考察はとても説得力があり、かつ大事な現状説明である。一部分を取り上げてセンセーショナルに報道するマスコミやSNSを見ていると、いつの間にか見落としが出てくるのだ。
決して派手な言論に与せず、冷静で慎重な文章・意見で一貫している本書はとても信頼できるものだと思う。 -
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防衛研究所防衛政策研究室長である著者による現代軍事に係る分析の入門書。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増し、防衛費の大幅増額が決定される中で、一般国民が防衛問題を考える上での基礎的な知識を提供することを意図している。
軍事力も政策手段の1つであるという前提を共有した上で、戦場の状況を分析する上でのポイントとなる原則や現代における戦争の特徴を整理し、陸・海・空・宇宙とサイバーについて、現代の戦闘がどのような展開で進むのか、また、それぞれについての自衛隊の取組を解説している。
戦争や防衛問題について、国際政治学や近現代史の観点からはともかく、純粋に軍事的な観点からの知識は自分にはほとんどなかっ -
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ロシア・ウクライナ戦争について、なぜこの戦争は始まったのか、この戦争はどのような戦争なのか、この戦争は終わらせることができるのか、という3つの論点について考察し、最後に日本の安全保障への影響についても論じている。
1つ目の問いについては、この戦争はロシアとウクライナのアイデンティティをめぐる戦争であり、抑止はほぼ不可能に近かったと結論付けられている。
2つ目の問いについては、この戦争は、「古さ」と「新しさ」が同居しているところに特徴があり、「デジタル時代の総力戦」と捉えられると論じられている。
3つ目の問いについては、3つのシナリオが考えられるが、どれも相当の時間がかかることが見込まれたり、蓋 -
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軍事を分析するのに必要な基礎的な知識と着眼点を教えてくれる入門書的な。
まずはリアリズムやリベラリズム、アナーキーな国際社会といった国際関係理論から始まる。冷戦後の国際政治の流れを辿り、ステートクラフト(国家の政策の立案と展開)の手段としての軍事力について説明する。そして平時の企業や官僚組織と変わらない軍事力と戦時のアートとしての性質、NCW、C4ISR、兵站、正規戦と非正規戦等についても触れている。
陸海空に宇宙、サイバーといったそれぞれのドメインの戦いの特徴と、各自衛隊の整備に関してまとめている。
最後に戦略分析の手続きとして、戦略文書を読むのに情勢分析、予算、法律から分析することと、それ -
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2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻で始まったロシア・ウクライナ戦争は、「ヨーロッパの一部」となることを選択したウクライナに対し「旧ソ連的な勢力圏」を形成するためにウクライナ(の領土)を必要とするロシアが一方的に攻め込むという構図であるが故に、ロシアがその意図を充足するか、断念しない限り終結しない。
前者はウクライナに妥協を強い、後者はロシアの宗旨変えか物理的な無力化を意味するために、短期間での終結は見通せない。
本書の本筋は1章と5章の編著者による論考であり、挟まれた他著者による論考は補足的なものなので、1+5章を読んだ後に2〜4章を読むのも勉強としてはあるが、各論にも同等の重 -
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非常に読みやすい。ウクライナ-ロシア戦争の本質はアイデンティティの問題(ウクライナを旧ソ連の一部としてロシアに併合すべきというロシア側の考えと独立した存在としてヨーロッパの一部でありたいウクライナ)。その為、一度開戦してしまえばお互いに落とし所が無く、長期化しているのが現状。アメリカがヨーロッパに積極的に介入していないのはアジア戦略を優先している為であり、アジアのリソースを欧州に割いた結果、パワーバランスが崩れ、台湾有事を引き起こしてしまうことを恐れている。発生してしまえば台湾有事もアイデンティティの争いとなる為、大切なことは戦争を始めさせないということである。
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ロシア・ウクライナ戦争を終結させることは、なぜ難しいのか。その理由・背景について一般読者向けに解説した新書である。この戦争はロシアとウクライナの双方がアイデンティティを懸けた戦いとなっている。ゆえに「落としどころ」を見つけることがきわめて困難であり、戦争終結のシナリオを考えることを難しくさせている。いつだったか小泉悠氏が「この戦争の終わりは悪い選択肢のなかからもっともよい選択しを選び取ることに等しい」みたいなことを言っていたが、その内実がよくわかるようになっている。また宇宙利用の話やサイバー空間におけるハイブリッド戦争の様相は、私自身理解ができていない部分だったので大変勉強になった。5章、終章
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自由貿易経済 維持には 責任あるステークホルダー シェイプ&ヘッジ政策
→失敗 中国が民主主義になる前に強くなってしまった
朝鮮半島有事
東京に核ミサイル 朝鮮半島と日本が分裂
NATO31か国 巨大な同盟 東アジア 米国との二国間同盟
アメリカに最善の選択をさせる 判断を誤った時の備え
半島有事は北朝鮮から
その前に米国本土攻撃と韓国軍を攻撃する核兵器開発の完了する必要
台湾有事
台湾2000万人に対し50倍の40万人が必要 上陸できるのは10万人→地上戦に
→東アジアの米軍を先に攻撃 在日米軍への攻撃は日本への攻撃
米軍参戦=一つの中国を否定 中国も -
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防衛省防衛研究所防衛政策研究室長である著者が、現在の日本における防衛問題を考える上で必要な知識をわかりやすく解説。
日本を取り巻く安全保障環境、台湾有事など日本を脅かすと想定されるシナリオ、我が国の防衛政策の基本である「戦略3文書」の背景と概要、陸海空の各自衛隊の体制や装備など、日本の防衛政策に関する基礎知識について勉強になった。
ただ、中東等と比べて実際に軍事衝突等が頻発しているとはいえないと思われるのに日本は「世界で最も厳しい」安全保障環境にあると強調していたり、米中対立の主要な原因とも思えない尖閣諸島問題を持ち出して日本は米中対立で中立の立場はあり得ないと主張していたりするのは、ちょっと