あらすじ
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻により、「大国間大戦争」の時代が到来したことを、世界中が強く認識せざるを得なくなった。
グローバルなパワーバランスは変化し、米国の軍事力ももはや絶対的なものではなくなっている。北朝鮮が核・ミサイル開発を進め、中国が急速に軍事力の近代化を行うなか、日本も、安全保障や軍事について、より当事者意識を持たなければならなくなった。
軍事力の最も優れた使い方は、戦争を起こさないこと、つまり抑止力として機能させることである。抑止力を強化した上で、安全保障上の対立が戦争にエスカレートしないよう、危機管理に取り組んでいかなければならない。
そのためには、一部の官僚や専門家だけでなく、国民全体がある程度の軍事に関する知識を持つことが必要となる。防衛費の大幅な増額が決まったが、戦争を抑止するために自衛隊は適切に整備され、運用されているのか? それを検証し、必要があれば別の意見を提示する――納税者である国民が、自分たちでも創造的に政策の在り方を考えていかなければならないときに来ている。日本でも、軍事を考えることが必要になってきているのである。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
本書では、陸海空の戦争のみならず、サイバー空間や宇宙空間での戦争が、どのようなものを想定して自衛隊等が備えているのかを解説している。日本周辺の国々が、日本にどのようにして軍事力で打撃を与える可能性を有しているかについて丁寧に解説しており、我が国の安全保障の状況は非常に緊迫したものであることがよくわかった。
また、多くの日本人にとっての戦争とは、太平洋戦争であり、日本が他国に攻め入って始まったという侵略戦争である。そのため、敗戦して「日本は二度と他国を侵略しない」と誓う日本の平和主義が、日本人の安全保障に対する考えのアップデートを阻害している。
1945年の終戦から日本人の戦争観は変わっていない。「他国が侵略行為を起こしたときに日本はどうするのか」という、現代の切実な問いに日本人は答えられるのか。あとがきで筆者が提起する問題意識は多くの人に共有されるべきである。
Posted by ブクログ
軍事力とはそもそも何か?から始まり、陸海空軍の各特徴について、終始わかりやすい解説書でした。
私は争いを好みませんが、一市民として、税金を使うからこそ、軍事についても一定の知識を身につけたいと改めて強く感じました。
Posted by ブクログ
現代軍事の基本入門書
本書は軍事の基本を伝えるとともに、これからの日本人として軍事と無関係ではいられない時代で何を考えていくかのきっかけを与えてくれる。
民主主義国家の国民として土台の知識がないと考えもないからである。我々は政府・自衛隊を見守り、時に選挙という形で口出しをしないといけないのだ。
難しいことを分かりやすく
去年2月にロシアがウクライナへ侵攻してからこの春まで、毎日見ない日はないほどテレビを席巻していたスイーツ王子こと高橋杉雄氏が著した本。偶然にも同時期に同じテーマを扱った本を2冊出されたうちの1冊です。
一方は、いわゆる専門的でない一般の方にむけて、自衛隊と国防について平易な言葉でわかりやすく書かれた『日本人が知っておくべき自衛隊と国防のこと』(辰巳出版)。
そしてこちらの『軍事分析入門 日本で軍事を語るということ』では、まだまだ理解されず、忌避されがちな軍事を理解する必要性を、さらに深掘りして丁寧に解き明かしてくれています。
「ですます」調で優しい語り口の『知っておくべき~』に比べて、こちらの本は少し堅い「である」調。
軍事だけでなく、それを理解するための国際政治、経済、サイバーといった多岐にわたる情報をくまなく網羅し、左派マスコミや学術界によって長年、ある種のイメージ操作をされてきたカギカッコ付きの『軍事』『戦争』が、実は国民にとって知っておくべき、とても大切なことであると教えてくれています。
彼が出ていたYou Tube「国際政治ch」の2023年8月13日放送回「高橋杉雄さんからご報告」で、この2冊について20分程度の解説動画があります。ぜひご覧になって、直接先生の言葉を聴いて、本を手に取ってみてください。どちらも買いたくなってしまうこと請け合いの良書です。
Posted by ブクログ
著者はウクライナ戦争開始時に何度もテレビ等で解説していたので存じている方も多いと思います
あくまで個人の立場で論評しています
現在日本の高校はもとより一般の大学でも軍事、防衛面について講座を持っているのは防衛大以外無いでしょう
この本を読み、ウクライナ、台湾、尖閣、北朝鮮情勢を考えると一般大学でも教養課程で教えてしかるべきと思います
戦後日本はアメリカを中心とする諸外国に軍事防衛面で一般人が学習することを骨抜きにされた気がします
軍事的なことを友人とさえ語るのがタブー視されてきました
基礎的な面だけでも理解しておかないと世論がおかしな方向へ進んでしまいます
その面で「日本で軍事を語るということ」の表題も的を得ています
現在の日本の国力からしてアメリカ追従にならざるを得ないことは理解していますがいつまでもこのままでは世界から見て「日本はアメリカの属国」という印象を拭いきれません
独立した国として、他国と対等に意見を戦わすためにもこの軍事防衛面で鎖を打つことが必要です
Posted by ブクログ
ウクライナ侵攻が開始されてから、メディアに引っ張りだこの高橋さん。
日本はやはり平和ボケしている。筆者が常識だと思っている(いた)世界の情勢を、日本人の多くは全く知らないという危機を感じ、この本にその想いをぶつけた良本です。
安全保障に少しでも興味があれば、入門書として大変ふさわしい本だと思います。
Posted by ブクログ
防衛研究所防衛政策研究室長である著者による現代軍事に係る分析の入門書。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増し、防衛費の大幅増額が決定される中で、一般国民が防衛問題を考える上での基礎的な知識を提供することを意図している。
軍事力も政策手段の1つであるという前提を共有した上で、戦場の状況を分析する上でのポイントとなる原則や現代における戦争の特徴を整理し、陸・海・空・宇宙とサイバーについて、現代の戦闘がどのような展開で進むのか、また、それぞれについての自衛隊の取組を解説している。
戦争や防衛問題について、国際政治学や近現代史の観点からはともかく、純粋に軍事的な観点からの知識は自分にはほとんどなかったので、本書は勉強になった。ロシア・ウクライナ戦争の例をしばしば出してくれるのも、わかりやすく、また、当該戦争についての理解も深まり、ありがたかった。
ただ、戦争や軍事的なことに疎い自分にとっては、本書の内容は、具体的にイメージが湧いたり、体得したりするといったところまでは至らなかった部分も少なくなかった。
Posted by ブクログ
軍事を分析するのに必要な基礎的な知識と着眼点を教えてくれる入門書的な。
まずはリアリズムやリベラリズム、アナーキーな国際社会といった国際関係理論から始まる。冷戦後の国際政治の流れを辿り、ステートクラフト(国家の政策の立案と展開)の手段としての軍事力について説明する。そして平時の企業や官僚組織と変わらない軍事力と戦時のアートとしての性質、NCW、C4ISR、兵站、正規戦と非正規戦等についても触れている。
陸海空に宇宙、サイバーといったそれぞれのドメインの戦いの特徴と、各自衛隊の整備に関してまとめている。
最後に戦略分析の手続きとして、戦略文書を読むのに情勢分析、予算、法律から分析することと、それぞれの着眼点を紹介。
軍事に関心を持つ人はガンダムとか兵器好きと、シミュレーションゲーム好きの大きく2パターンがあって、前者が多いと感じているんだけど、筆者は自分と同じ後者パターンだったのが親近感湧いた。
Posted by ブクログ
なるほど こういうことなのか。……読み終わったら 世界の見かたが すこしだけ 変わった感じがした。理解することから はじめてみなくちゃ なにもはじまらない。テレビ越しだけど 語り口のわかりやすさが最後まで続いて、ともかく 勉強になりました‼️
Posted by ブクログ
包括的な軍事問題の入門書。
軍事は合理的な思考の積上げであることがよくわかる。
本書の内容もよく整理されていて、自衛隊の現在地も含め、わかりやすい。
書名のテーマについてはあとがきで語られている。
TV等でも垣間見えた著者の思いが伝わってくる。