秋田喜美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ言語の本質にオノマトペから迫る非常に面白い一冊。
オノマトペのもつ「アイコン性」が言語獲得に大きな役割を果たしているという論が印象的だったが、果たしてそれは世界の言語にどれほど当てはまるのだろうか。オノマトペに馴染みの深い日本人からするとなんだか誇らしく感じる一方、オノマトペが発達していない他の言語——例えば英語——では何がオノマトペの役割を補完するのだろうと疑問に思った。
まさか言語獲得にも多様性があるのか!?そんな妄想が膨らむ興奮やまない貴重な読書体験だった。
言葉や言語に少しでも興味のある人全員にオススメしたい!!
〜以下、ネタバレ〜
オノマトペは、それが表すものとその表し方に類似性があるという「アイコン性」(例えばニャーニャーはそれ自体猫の鳴き声に極めて近い)のほか、切り離して述部として利用したり、組み合わせて新たなオノマトペを生産したりできる性質を有している。
これらの特質のために、オノマトペは子供が身体との連関を通じて一部の言葉を理解し、言語の文法的構造を把握していくきっかけとなる—つまり、オノマトペが言語という高度に抽象的な記号システムをインストールするのに貢献している、と言えそうだ。
一方で、言語システムを獲得するにはオノマトペのもつアイコン性を知覚するだけでは不十分で、そこではアブダクション推論と「ブートストラッピング・サイクル」が重要な役割を果たしているとのこと。結果から原因や仮説を考察するアブダクションによって、子供は言語という記号の内包と外延を絶えず更新しながらその意味を理解していくが、そこで得た知識がそれまでの知識を踏まえて別の新たな知識をうみ、雪だるま式に知識が自己生成的に増幅していくことで、言語を自然に扱えるようになっていく。
興味深いのはこのアブダクション推論がヒト以外の動物でほとんど見られないということ。ここから、ヒトだけが言語を扱えるのは、このアブダクション推論という認知バイアスに拠るのではないかという大胆な仮説が提示されている。もしそうだとしたら、進化の過程でいずれ言語を操る動物も現れるのだろうか?そんな浪漫と若干の恐怖も感じてしまう。 -
Posted by ブクログ
帰納法推論、アブダクション推論ができることが言語獲得には重要な要素である。
アブダクション推論とは「道が濡れている。雨が降ったのだろう」と仮説を立てる推論のことである。
この仮説を立てる能力なしには帰納法は成立しない。
なぜなら、仮説なしにどういったデータを抽出すればよいのかが成立しないからだ。
そして、これは正しい論理とはいえない。
(道が濡れているからといって、必ず雨が降ったとはいえない)
そのためなのか、この推論手法を用いるのはヒトだけである。
そして、この帰納法、アブダクション推論が言語を獲得するために必要なこととなる。
未知の語彙「チモっている」に出合ったとき、それが動きを表す動詞だと仮説をたてることで、語彙を習得していくからだ。
そして、本書は、「言語は最初、自然を写し取ったオノマトペ(擬態語)から始まったのではないか」という仮説のもと論説が進められていく。
これも、まさしくアブダクションなしには成し得ない考察! アブダクションってすごい!
そしてこのアブダクション(対称性バイアス)は、先天的にヒトに備わっているという。
であれば、この能力をどのようにしてヒトが獲得するに至ったのか?
ある日突然変異的に? いや、もしかしてやっぱり宇宙人? それとも・・・?
あくまでも数多の言語起源論の一つにすぎないという本書の内容であるが、しかし、これはかなり良い仮説なのではないかと思える。
以下は、私の考察。
おそらく言葉とは、ヒトが情報を共有するときに必要となったものだ。
だけど情報を共有するだけなら、動物の鳴き声だけでも事足りただろうと思う。
その鳴き声、みたいな状態がヒトではオノマトペだったのかもと考える。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ難しいテーマを取り扱っているけど、よく考えられた文章の構成と文章の上手さで、大筋は捉えられながら読むことができた。
言語学の面白いところは、誰にとっても身近な現状から思考を深めていくところだと思うので、「オノマトペ」という日本人にとって身近な現象から言語の本質を考えるという本書のストーリーは、言語学の魅力が詰まっている。
言語学は文系科目で、AIは理系の科目。全く関係ないように思われるけど、本書でも触れられているようにとても関係性が深い。AIが人間のように思考できるようになるには、人間のことを理解しなければならない。そのために言語学とは切っても切れない関係になるのだと思う。 -
Posted by ブクログ
【内容】
本書は、発達心理学者と言語学者がそれぞれの専門的視点から、人間はいかにして言語を獲得するのかを考察した共著である。
著者らは、オノマトペ(擬音語・擬態語)を、身体性の高いジェスチャーと、恣意的で体系化された言語との橋渡しを担う存在として位置づける。子どもはオノマトペを足掛かりに、身体的な経験と抽象的な言語を結び付けながら言語を習得していく。
その過程では、人間特有のアブダクション(仮説形成)によって既存の知識から新たな知識を生み出し、それを足場として知識体系を自己拡張していく「ブーストラッピング」が重要な役割を果たす。こうした学習を通じて、身体性への依存が比較的低く、高い拡張性を備えた言語体系が形成される。また、恣意的な記号であるはずの言語が、身体的な感覚を伴って理解・使用されるのも、この過程によるものではないかと著者らは考察している。
このような観点から本書は、言語を単なる情報伝達の手段ではなく、身体性と記号性という二つの性質を併せ持ち、それらの相互作用の中で発達・運用されるシステムとして捉えている。
【感想】
「人間はどのようにして言語を習得するのか」という根源的な問いに対し、発達心理学と言語学の知見を統合して一つの説明を提示した良書だった。
専門的な内容でありながら、議論は具体例を交えつつ丁寧に積み上げられており、論理の飛躍を感じることなく読み進められる。また、本書は言語獲得の議論を現代のAIにも接続し、「AIは言葉の意味を本当に理解しているのか」という記号接地問題へと視野を広げている点も興味深い。
オノマトペを単なる言語表現ではなく、身体経験と抽象的な言語をつなぐ重要な役割として捉え直す視点や、言語を受動的に覚えるのではなく、ブーストラッピングを通じて主体的に構築していくという考え方は特に印象に残った。言語習得や子どもの発達への理解を深められるだけでなく、生成AIの可能性や限界を考える上でも多くの示唆を与えてくれる一冊のように思われた。 -
Posted by ブクログ
最高に面白い 今井むつみさんはゆる言語学ラジオの赤ちゃん言語習得シリーズで間接的に知ってるだけだったけどいくら褒めちぎっても足りないくらい文章が面白い そして実験デザインも上手い キーワードと実験結果とで大きな問い 言語の本質について果敢に切り込んでいく様 最後に言語の本質が読み上げられるところで涙が滲んでしまった 新書なのに大河ドラマ見終わったみたいな読後感
オノマトペ、記号接地問題(記号から記号へのメリーゴーランドになってしまうAI)、アブダクション推論、ブートストラッピング
言語を獲得していない乳児とチンパンジーに対して同様の実験を行なってアブダクション推論をするのは乳児とごく一部のチンパンジー(霊長類研究所でわたしも会ったことあるチンパンジーだった)のみとわかるくだり、格好よすぎる ゆる言語学ラジオの赤ちゃんミステイクアワードが繰り返し引用されるのもじんわりとアツい
自分の子が周りの赤ちゃんと比べて探索行動が激しめで、それをとても好ましく頼もしく思っているのだけど、締めくくりで記号接地問題を再度引っ張ってきて「赤ちゃんはその身体をもって世界を探索し、記号と自身を接地させていく」みたいに記述してるのがもう美しくて切なくて尊くて心臓鷲掴みにされた ああ素晴らしき乳児が繋ぎ見つける世界よ! -
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オノマトペを入り口に言語とは何かという壮大なテーマに挑んだ野心作。幼児がオノマトペを好むことをきっかけに、対象物のアイコン性が強いオノマトペは幼児の言語学習への足がかりになっていることが示される。しかしながら、言葉のほとんどは音声から対象物を容易に想像できない恣意的な性質を持つのはなぜなのか。その疑問から考察を進め、オノマトペを入り口に恣意性の高い一般語を幼児が習得していくシステム、つまり他の動物と違い言語を使えるようになる人間の言語学習過程のシステムを仮説化することで言語の本質に迫ろうとする。認知科学、言語心理学・発達心理学の専門家と言語学の専門家がタッグを組むことで、この問題に迫る仮説の構築に成功した。
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ネタバレひとつ記号接地できれば、そこから発展して抽象的な言葉も理解できるようになる。
オノマトペはアイコン性がある(口の形や息のかかり方で感覚的に単語の意味が分かる)ので赤ちゃんの言語の記号接地に大きく役立つ
ニカラグア手話
言葉を知らないろう者を集めた学校にて、新しい言語を生み出す過程が観察された。
カヴァーイ問題
ある民族が飛び跳ねるうさぎを指差して「カヴァーイ」と教えてくれたが、それだけだと何を示したいのか分からないという問題。
動作?うさぎ?動物全般?食料?
赤ちゃんがこの世には、モノや動きに「名前」がついているんだ!と気づくタイミングはいつか。
「ヘレンケラーは、Waterという綴りが名前だと気づいたとき、すべてのモノには名前があるのだという閃きを得た。」
追記:ファインマンの言葉より
「彼らはソクラテスの言ったことを一語一句まちがえずに全部暗誦することはできたが、そのギリシア語の言葉が実際に何か意味をもっているのだ、ということには気がついていなかったのだ。」
「理論は何もかも丸暗記はしたものの、それを意味のある言葉におきかえることは全然していなかったわけだ。」 -
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想像していたよりも読みやすかった。高校生でも読めるんじゃないか。
オノマトペの特徴といわゆる普通の言葉との違いから入って、そもそも言語とはなんだろうかについて考察を与えてくれる。記号接地問題は、今まで考えたこと良い角度で面白かった。人間がここまで言語を発達させられたのはアブダクション推論ができたから。確かに今自分が使う言葉全てが体験したもの、ことではないけれど連想ゲーム的に辿ればどこかでは接地している。それができるからメモリ不足にならないというのは面白かった。
チンパンジーの実験では、言語からものへの認証は作れても、多くの個体は逆向きは認識できない、ただし一部ではできる、というのは言語を作ってきた過程を示唆しているようで面白かった。 -
Posted by ブクログ
他の言語を学ぶほど、そういえば自分はどうやって日本語を覚えたんだろうと不思議に思っていた。この本はその問いに正面から答えてくれる。
オノマトペが最初の足がかりになり、そこから推論で知識を育てていくサイクルの中で、間違いこそが学習の起点だと思った。wentと言えていた子が学ぶにつれてgoedと言い出す。これは退化ではなく、規則を自力で見つけた証拠なのだという。確かに、間違いを正されて納得できたときにめちゃくちゃ記憶に残る。
もう一つは記号接地。身体や経験につながらない記号は、いくら積み上げても学習にならない。だとすれば大人も同じで、仕事なら現場に立つこと、遊びなら生で見に行くというのが大事なのだと思った。
言語の本だけども、自分には学習方法のように読めた。 -
Posted by ブクログ
人は如何にして言語を理解し、
活用できるようになるか?
身体感覚に立脚していない言語は理解できないという、「記号接地問題」を、出発点として、
身体と言語の接地点としてのオノマトペを足がかりにして、
類推や仮説を広げていくアブダクション思考を使って
段階的に言語理解と活用範囲を広げるブートストラッピングサイクルを回していくことで、
人は言語を理解して活用していく。
ということかなと読みました。
記号接地問題とオノマトペは、AI時代の私の在り方としてとても重要な示唆があると思いました。
分かるの本質は覚るなのかなとも思いました。
子どもにはたくさんの身体的経験をさせてあげたいと思いました。 -
Posted by ブクログ
人間が持っている最強のコミニュケーションツールである言語とは何かを知りたくて本書を読んだ。
まず第一に研究者の探究心に圧倒された。オノマトペをきっかけにした知への渇望が最終的に言語の本質までに辿り着く過程は圧巻だった。
言語学×認知科学で片方の学問だけでは解き明かせない問題がたくさん紐解かれていき、やはり横断した学びの重要性を感じた。
普段何気なく使っている言語。時代によって変化したり、文化に依存する部分があったり、あるいは変わらない共通の感覚があったりと色々な発見があって面白かった。
改めて知識がある人の話は面白いなあと感じたし、学びの良さを感じた。
これから何気なく使う言葉やオノマトペも今までとは違う見方になりそうな気がして楽しみ。 -
Posted by ブクログ
ゆる言語学ラジオから今井むつみ先生を知り、友人との縁もあり数年ぶりの読書にチャレンジ。5日程度で読み終わり、音象徴、ガヴァガーイ問題、アブダクション推論など動画で何となく聞きなれているもののあまり理解していなかった言葉たちをより深く理解できた気がする。内容は非常に難解という訳ではなくむしろ面白い実験や事例紹介があり読みやすい本だとは思った。しかし自分の職業柄、発達心理に関心があるため子どもの推論や言語習得の話ではスラスラと読み進め内容も頭に入ってきたが、文法、言語の条件、アイコン性...といった言語学の話になると途端にペースダウンし一文を繰り返し読むこともしばしば...久しぶりの読書というのもあり読むのに手こずったという感想。これは私が言語学に疎い(もとい興味関心が薄い)からなのか、他の人も同じような印象を受けるのかが気になるところ。