中井久夫のレビュー一覧

  • 心的外傷と回復 増補新版

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    ネタバレ

    外傷を受けた人は些細な事に驚き、挑発に怒り、睡眠の質が下がる。悪夢もそのせい。
    闘争か逃走かしか考えられなくなる。
    助けられなかった大切な人の命、その情景は強い重荷になって非常にPTSDを起こしやすいらしい。
    当たり前だ。なんでこんな他人事だったんだ?
    普通の犯罪は被害者に周りの人が寄り添ってくれるが、性的暴力と家庭内暴力については被害者は守られることが少ない。加害者が権力的に上のことが多いから、みんな加害者の味方をする。
    おじちゃんのちょっと反抗期だっただけだろ発言がまさにそれである。
    一般人を無垢で汚れていないと同時に現実を知らない無知な人達だと、自分を汚れているけれど優位にあると思うよう

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    2025年10月05日
  • 心的外傷と回復 増補新版

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    心的外傷のテキストとしてあまりにも有名で、初版が出てすぐ読んでから、改めて増補新版を久しぶりに読みました。やはり素晴らしいの一言です。治療にあたり患者に寄り添おうという姿勢が、改めて勉強になり、三部作と言われる「真実と修復」も読んでみたいと思いました。

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    2025年08月17日
  • 心的外傷と回復 増補新版

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    素晴らしい内容。
    心的外傷、トラウマによる影響が捉えられているにも関わらず、忘れられていく。
    忘れたい人も、忘れてくれて助かって来た人もたくさんいたのだろう。
    ただ、時代も世論もようやく変わりつつある今、改めてこの本に書かれていることを重く受け止める必要があると思う。

    そして、人がどのようにして回復していくのか。
    人が人であるために必要なこと。
    今はいろんなつながりを持つ手段がある。
    自分に合った手段を使い、回復を目指したいし、目指してほしい。

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    2025年07月13日
  • 小さな贈り物 傷ついたこころにより添って

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    感動的なエッセイ。

    「障害受容」について、「子どもを育てる責任」について、「内発的な動機」について、「心理の仕事」について、「緻密な観察」について、「見立て」についてなどなど、一言で簡単に済まされがちな当たり前のことの中身を、経験を通したエッセイという形で、深い理解に導いてくれる。柔らかい語り口でありながらモヤモヤの霧が晴れるような明晰な言葉たちは、さすがとしか言いようのない感動がある。

    特に、心理職にありがちな「それがどうした」と下の句つくような解釈は、「ほとんど意味がない」と言い切り、これがほんものの心理職の人なんだと嬉しくなる。

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    2020年08月23日
  • 災害がほんとうに襲った時――阪神淡路大震災50日間の記録

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    再読。
    本棚に登録されていなかったことにびっくり。
    出版直後に読んだはずなのに、何でだろう??

    熊本地震の直後に読もうと思いながら手許に置きつつ、読めたのは今でした。地震の後しばらくの間、文章がうまく読めませんでした。読み始めたら一気に最後まで。随所に思いやりを感じて、あたたかく胸に響く記録でした。

    「すべての危機にあっては、手持ちの知識と経験と知恵だけで勝負しなければならない」
    という本書の言葉に心から納得しました。

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    2016年08月18日
  • 復興の道なかばで――阪神淡路大震災一年の記録

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    覚書
    職務中に被災して勤務続けた者をもっともリスク高い者として交代休息
    ほっと一息ついたときも心臓の危機 過労の直後に休むときが最も危ない 徐々に力を抜くべき
    高齢者とともに被災救援者もハイリスク
    災害に弱かったのはアルコール症と薬物嗜癖
    記憶は楽しい6割、悲しい1割、どちらでもない3割という比率で整理されるのが健康の条件
    被災地周辺は被災地の負担を肩代わりせざるを得ない
    米国では精神科の部長は患者をみずにスタッフの精神衛生をかんがえておればいい
    情報は時遅れになる 補完するのは想像力

    第一段階 とにかくそばにいてくれること
    第二段階 体験のわかちあい
    第三段階 生活再建
    被災していない元気

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    2016年06月30日
  • 災害がほんとうに襲った時――阪神淡路大震災50日間の記録

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    「災害がほんとうに襲った時」。
    1934年奈良県生まれの精神科医・中井久夫さん。

    終戦時11歳。2016年現在82歳でまだお元気なようです。

    精神医学の専門書を始め、専門外のエッセイ的なものなど、多数の著作があります。
    神戸大教授だった1995年1月、阪神淡路大震災。
    そのときの体験を記録した「災害がほんとうに襲った時」という原稿と、2011年3月、東日本大震災の後に書かれた「東日本巨大災害のテレビをみつつ」。
    この2編をまとめて2011年の4月にみすず書房さんが本にしています。

    中井久夫さんは、一般から見ると無名かも知れません。テレビに出るような活動はほぼされていませんし、地味な出版社

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    2016年05月04日
  • 災害がほんとうに襲った時――阪神淡路大震災50日間の記録

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    「総じて、役所の中でも、法律を墨守する者と現場のニーズに応えようとする者との暗闘があった」(p.49)

    ・平時において法を遵守することは極めて常識的な事柄に属するが、危急の事態においてはこの「常識」がいかに足手まといとなることか。それよりも、その場その場で最優先課題をしっかり見定め、その解決のためには法の目をくぐることすら厭わなかった者のほうが結果的に多くの人々を救ったのである。「有効なことをなしえたものは、すべて、自分でその時点で最良と思う行動を自己の責任において行ったものであった」(p.41)。そして、「災害においては柔かい頭はますます柔かく、硬い頭はますます硬くなることが一般原則なので

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    2013年08月26日
  • 災害がほんとうに襲った時――阪神淡路大震災50日間の記録

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    終わり部分にある筆者の急性ストレス障害に関する記述が一番気になった。たんたんとした記述だが、現実には相当堪えたものがあったのだ。

    ・デブリーフィーング
    ・フクシマ・フィフティズは架空なのでは?
    ・「状況が全てである」というドゴールの言葉
    ・神戸のホームレス受容
    ・取材のヘリコプターに対する過敏、憎悪
    ・人間は燃え尽きないために、どこかで正当に認知される必要がある。
    ・弱音を吐けない立場の人は後で障害が出る。
    ・全財産を無くしても感謝の気持ちは伝えたい。

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    2012年11月08日
  • 災害がほんとうに襲った時――阪神淡路大震災50日間の記録

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     17年前、大阪の実家で阪神淡路大震災に遭った。昨年、結婚して転居してきた千葉で東日本大震災に遭った。東日本では、1晩ながら避難所で過ごすということも経験した。
     家に帰ってテレビに映し出される画像が、阪神淡路のときの街の様子と重なり、しばらくの間息をするのも苦しくなったことがあった。そんなころ、この本とめぐり会った。

     少しずつ読んでいく中で、いつも中井先生の文章で感心させられる観察眼、冷静な記述に、読みながら自分の中で起きていることを整理し、落ち着くことができた。

     阪神淡路大震災の際の医療現場の記録しても貴重なものである。

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    2012年09月19日
  • 災害がほんとうに襲った時――阪神淡路大震災50日間の記録

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    ネタバレ

    精神科医が関与観察した阪神淡路大震災の50日間。

    あのとき、
    医者たちは、自分たちで考えながら有機的なネットワークを形成していった。

    混乱の中で、
    情報や人の波とたたかっていた。
    必死だった。

    看護師やボランティアの力なくして、
    その現場を支えることはできず、
    多くの人の機転なくして、
    成り立たなかった。

    今回の東日本大震災のことも記載されており、
    考えさせられることは多い。

    人の体力がもつ期間は限られている。
    援助する側、援助される側、どちらも日本人は不慣れなのかもしれない。

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    2012年01月04日
  • 災害がほんとうに襲った時――阪神淡路大震災50日間の記録

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    この本は阪神・淡路大震災のときに現地で医療活動にあたったある精神科医の記録です。出版社が同じなこともあるのですが「夜と霧」を連想させました。

    今も現状が刻々と変わっているそうなので、この記事を書いたときにどうなっているのかわかりませんが、東日本大震災や福島の原発事故で被災した現地の写真や映像を見るたびに悲痛な気持ちになります。

    この本は16年前、阪神・淡路大震災のときに精神科医として現場の指揮を取っていらした筆者の文章に新たに東北・関東大震災に関する文章を加えて再編集したものです。この本によると震災直後だと、怪我などの肉体的な傷が多いのに対して、被災生活が長引いてくると、今度はPTSDな

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    2011年10月31日
  • 災害がほんとうに襲った時――阪神淡路大震災50日間の記録

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     かつて「神戸」で、被災者からぜひとお菓子や果物を差し出された医者がいた。避難所で物が余っていたわけではない。全財産をなくしても、感謝の気持ちを表したかったから。

     阪神淡路大震災の救護に関わった精神科医は、当時、躁状態の中で記録を残した。そこで何が起こり、何が必要だったか。今回の大震災に寄せて、新たに四分の一ほどの頁を書き足した。

     まずは、被災者の傍にいること。彼らの恐怖と不安と喪失の悲哀とを、安心な空気で包むのだ。花がいちばん喜ばれる、という話もある。そして救護者への救護。著者も、「神戸」の十日後からおぞましい夢を見、四十日後には二十四時間眠った。救援が成功したように思える時期に、明

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    2011年07月21日
  • 災害がほんとうに襲った時――阪神淡路大震災50日間の記録

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    東日本大震災からまもなく五十日を迎えようとしている。第一次世界大戦の時の記録によると、戦争のプロでも四〇~五〇日たつと、戦闘消耗と呼ばれる状況に陥り、武器を投げ捨てて、わざと弾に当たろうとするような行動に出るものが現れたという。そろそろ新たなステージに入るべき時が、来ているのかもしれない。

    本書は阪神淡路大震災の時に神戸大学で精神科医を務めていた中井 久夫氏による五十日間の記録がベースである。ことは今回の震災の際、ノンフィクションライター最相 葉月さんが自宅にて落下してきた本の中に『1995年1月・神戸』を見つけ、著者にネット上での全文公開を要請したことに端を発した。そこに、今回の震災の記録

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    2011年09月12日
  • 最終講義――分裂病私見

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    偉大な精神医学の研究者・中井久夫氏の神戸大学退官時の講義を書籍化。その後先生は私が通う大学で研究室を開かれた。先生の授業はとても聞き応えがある上に、「昼食後は眠たい。それは体の正常な反応。アフリカンアワーと言ってね、昼寝の時間だ。だから私の授業中も寝ていて結構だよ」とか「人間が耐えるコトのできる“待ち時間”は14分まで。だからデートは15分遅れちゃダメだよ」などといった楽しくて温かい内容の講義だった。本著は統合失調症について学ぶ学生には是非一度読んでいただきたい“バイブル”とも言える一冊。

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    2009年10月04日
  • 新版 分裂病と人類

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    2章末の森鴎外の詩の読解から江戸時代末の武士の倫理を見ようとする箇所が、印象深い。
    中井久夫という特異な個体だけが到達できる記述だと思う。

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    2025年11月12日
  • 最終講義――分裂病私見

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    著者のエッセイで精神科医としての仕事ぶりも垣間見てはいたが、こちらはより生々しくその様子が伝わる。個々の症例にある回復までの長い道のり、または予後の悪かった患者たち

    昨日、たまたま電車で隣に意味不明の独り言を繰り返す男性と乗り合わせた。あれもこうした困難を抱えている人なのだろうか。もしそうだとして、中井のような救いの手は差し伸べられているのだろうか

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    2023年12月10日
  • 最終講義――分裂病私見

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    みすず書房
    中井久夫 最終講義

    1997年に大学で行われた 分裂病(統合失調症)の最終講義。講義というより臨床記録であり、個別研究から得られた治療の一般モデルにも思う。治療経過図や症例比較もあり、素人でも理解できる構成


    「病気は、人生の仕切り直しの機会」は名言


    著者は「分裂病をマインドコントロールに対する防衛」と考えており
    「睡眠、夢、心身症が分裂病から人間を護っている」としているが、現代の主説はどうなのだろうか?


    「分裂病の回復は〜山を下りるときに似ている〜病いが始まった時は 患者はすでに山頂にいる。ひとりで下りられない山頂〜四方が断崖の絶頂にいる」











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    2023年08月26日
  • 最終講義――分裂病私見

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    100分で名著で説明されている本である。本文を番組では朗読しているが、それだけではなく、患者が書いた絵の説明が丁寧であり、さらに患者の状態を説明したグラフが丁寧に解説している。

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    2022年12月13日
  • 最終講義――分裂病私見

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    最終講義―分裂病私見
    (和書)2009年01月27日 23:11
    1998 みすず書房 中井 久夫


    分裂病(統合失調症)に対する姿勢がとてもよく現れていました。患者に対する医者としての姿勢などとても明確に書かれていて精神科医を目指す人には参考になると思いました。

    患者(統失患者)に対する分析又は批判(吟味)はとても詳細に(繊細に)されていて病気として成立する理論的根拠などに対する根本的批判(吟味)の姿勢が存在しています。そこが読んでいて救いになると感じました。

    この本では患者ではない人(所謂健常者)に対する姿勢に触れられていませんでした。

    自己同一性の幻想に固執するという分裂病者への

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    2020年09月25日