澁谷正子のレビュー一覧

  • 脳に棲む魔物

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    ネタバレ

    感動的で貴著な本である。

    著者、スザンナ・キャラハンは本にある病気になった時24歳。
    訳者のあとがきにあるように、本書の構成は、前半が著者の次第に悪化していく詳細な精神症状と、医師による相次ぐ誤診、診断が確定されない中どんどんと精神状態が悪くなっていくさまと困惑する周囲の記述は、ホラー小説を読むかのよう。

    実は私は読む前から診断名を知っていたし、精神科医でもあるので、この前半は読み進めることが非常に辛かった。我が身を振り返っても、24歳という若さで幻覚・妄想が出て来た場合、統合失調症ないしは双極性障害と診断してしまう可能性は高い。あえて言えば、突然の発症、それまでの社会適応からして、『この

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    2015年05月22日
  • 脳に棲む魔物

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    ネタバレ

    発表当時は珍しかった、自己免疫性疾患が突然発症した女性の、ご本人による回顧録。
    こうした書物を読むときは、

    ・日本とは異なる保険診療/自由診療混合医療の国で起きた事である。
    ・書かれている内容は、現在また異なる基準で判定されたり、価値が変わったりすることがある。

    の2点に気をつけながら読みます。
    そして読み終えました。

    不幸な偶然が3個積み重なった人と、幸運な偶然が3個積み重なった人の差に想いを馳せざるを得ません。著者は後者でした。
    幸運その1.『ポスト』の正社員で、保険会社が診療費をカバーしてくれたこと。
    幸運その2.両親も、恋人も、経済的に自立しており、著者を支える余裕があったこと。

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    2014年10月03日
  • 脳に棲む魔物

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    一気に読めるミステリーを超えた一冊。

    これがフィクションではないということも驚きだが、
    この病を乗り越えた彼女が
    偶然にも物書きであり、
    のちに情報を集めて本書にまとめられたことは奇跡のようなものだ。

    既存のミステリーに飽きた人にぜひおすすめしたい。

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    2014年07月18日
  • ルクセンブルクの迷路

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     どこに向かうかわからない謎めいた書き出し。<本日午前十時五十二分 パリ>。知人女性に街角で呼び止められ動揺する主人公ケイト。そのケイトは、いろいろわけありであるらしいこと。

     ストーリーは二年前にフェイドバック。ワシントンDCに暮らす夫婦が、夫の新しい事業のため、ルクセンブルクに移住することになる。ケイトは仕事を辞めねばならない。だが簡単に辞めることができるかどうか不安である。どんな仕事をしてきたのか、どこか意味ありげに語られる。文章の裏側に隠されている真実と、これから読者は無数に対面してゆかねばならない。あまり多いとは言えない登場人物たちの裏側に隠された真実や真実らしきものと到底信じられ

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    2013年07月08日
  • 脳に棲む魔物

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    細かい描写が多いなぁと思ったらノンフィクションでした。冒頭から胸が痛む場面が続きますが、快復期に向かって主人公が本来の快活さを取り戻す過程はなかなかのカタルシスがあります。
    登場人物たちも小説?と思われるほど魅力的。変わってしまった主人公の周りは、それでも家族愛に溢れていて胸を打ちます(私/家族が病に侵された時、彼らのように愛を以て接することはできると言い切れるでしょうか?)。まぁ快復期に現れる無神経な親戚や友人も印象的ですが。
    病理を解明する専門医がいる一方で、(やむを得ないとはいえ)盆暗な町医者もいます。ノンフィフィクションだからこそ、良いですね。

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    2024年06月11日
  • 古書店主

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    パリ、セーヌ川岸の古書店(ブッキストというらしい)で買った本から端を発し、実はその本が思いがけず高価値だったり、ナチハンターの件、ドラックディーラーの縄張り抗争などなど盛り沢山。バリの街案内も。

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    2024年02月02日
  • 血盟の箱 続・古書店主

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    ネタバレ

    1作目の古書店主で出てきた結構お気に入りだった登場人物がが退場…だと…。
    実際の2作目も邦訳して欲しいです(血盟の箱は実質3作目。
    今のところシリーズ9作目まで出てるらしいんですよねぇ。
    1作目から引き続き出てきてた登場人物との人間関係の今後も気になります。

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    2022年09月10日
  • 古書店主

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    昔ながらのヒーロー。
    正義漢でルールを守り、人情に厚いテキサスの男。
    海外に行けない今、パリの風景とか雰囲気を楽しめたのが何より楽しかった。
    出会った女性が美人で貴族の娘で、その父が事件の鍵を…とか、
    元CIAの親友がいきなりパリに来て解決を手伝ってくれるとか、その辺りのご都合はこの際どうでもよくて、テンポよく楽しく読める。

    この頃、書籍絡みの本によく出会うけど、これもその1冊

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    2021年08月29日
  • 古書店主

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    将来的に古書店主になりたいのですが、この本を読んで少し怖くなりました。しかし、古書店主は魅力的な仕事だと思います。

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    2021年03月29日
  • 古書店主

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    パリのセーヌ川沿いに並ぶ、露天の古書店を商う人々はブキニストと呼ばれる。アメリカ大使館の外交保安部長ヒューゴーは、馴染みのブキニストであるマックスから2冊の古書を買ったが、ヒューゴーの目の前でマックスは何者かに拉致されてしまう。警察の捜査も熱意を欠く中、自ら調査を始めたヒューゴーは、マックスが収容所の生き残りで、ナチ・ハンターだった過去を知る。マックスを拉致した者たちの目的は何か。

    ブキニストの歴史は興味深かった。そしてナチス時代が落とした影の深さを改めて感じる作品だった。

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    2020年10月13日
  • 古書店主

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    パリ、セーヌ河岸の露天の古書店から始まる物語。旅情をそそり、あわよくばレア本との出会いがあるかもって期待を込めたつかみは良し。
    だったんだけど、事件が発生してからは、のはっきり言っちゃえば、ご都合主義で場当たり的が否めない。
    主人公はテキサス出身の元FBI職員で今はアメリカ大使館の外交保安部長。頭は切れるわ、モテるわ、アクションはいけるわ。スーパーマンかい!
    古書もあんまし重要なファクターでもないし。
    ミステリ色よりもアクション、サスペンス性が強い。
    でも、全体を通じて、パリ市内の描写はなかなかいい感じ。なので脳内映像がしやすいのでハリウッド映画を見たような印象。

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    2020年05月17日
  • スカウト52

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    確かに若い頃のキングっぽい。登場人物の、直接物語に関係のないエピソードを挿入するとか、襲い来る災禍が堪らなく下品な所とか。
    しかし、そういうキングフォロワーの中では最初から最後まで楽しませてもらった一品。
    ぜひ食事等をしながら読んでもらえれば幸い。

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    2015年04月06日
  • スカウト52

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    アイディアが面白い、SFチックなバイオ・ホラー小説。確かに『蠅の王』を彷彿とさせる。

    ボーイスカウトの五人の少年を引き連れて、無人島で二日間のキャンプに訪れたティム・リッグス。その無人島に現れた異常に腹を減らしたガリガリに痩せ細った男…

    ボーイスカウトたちの視点で展開する物語と新聞記事や調査委員会の報告書により明かされる驚愕の事件の真相…

    少しもどかしさは感じるものの、面白かった。

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    2015年02月22日
  • 脳に棲む魔物

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    映画「エクソシスト」さなからの狂気の症状になる脳の炎症を患った筆者の体験とその病のリポート。
    すごい勢いで悪化する病、異常な症状、ひたすら信じサポートする家族とパートナー。
    巻末の謝辞で平凡だがと感謝の言葉です残した筆者の気持ちが痛々しいほど伝わる。

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    2014年10月21日
  • 脳に棲む魔物

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    世界衝撃ストーリーといったようなTV番組で紹介されるようなタイトルですが、これはノンフィクションである上に、病気そのものから、そして病気による脳神経損傷からの快復をめざして闘いながら患者本人が書き上げた本です。語られる症状の重さを読み進めると、この事実だけでも驚くべきことでした。

    病にかかる前の日々においても、自分にとって大切なことを持つことが、快復への希望を持ち続けるために重要なのだと認識させられました。

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    2014年10月06日
  • 脳に棲む魔物

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    (No.14-17)  ノンフィクションです。

    内容紹介を、表紙裏から転載します。
    『マンハッタンでひとり暮らしをする24歳の新聞記者スザンナが心身に変調をきたしたのは、ある朝突然のことだった。
    最初は虫に噛まれたものと高をくくっていたところ、徐々に左腕がしびれそれが左半身に広がっていった。
    同時に、仕事への意欲を失い、部屋の片付けさえ出来なくなる。幻視や幻聴を体験した末、口から泡を吹き、全身を痙攣させる激しい発作を起こすまでになる。

    医師の見立てでは、精神障害ないしは神経疾患。てんかん、双極性障害、統合失調症の疑いをかけられるが、処方薬は全く効果が無く、検査でも原因を突き止められない。症

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    2014年08月14日
  • 脳に棲む魔物

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    ちょっとおどろおどろしさを感じる表紙写真でホラー小説か何かを想像してしまいそうだが、脳を侵すタイプの自己免疫疾患にかかった、ニューヨークポストの記者である著者の闘病記である。

    著者が「映画『エクソシスト』の主人公の少女が私の症状とそっくり」と評しているのを読めばお分かりかと思うが、想像を絶するほどの壮絶な症状の連続に、よくぞご家族は諦めず寄り添い、徹底的に原因の追求まで辿り着いたものだと思う。この病気が解明されたあとの発病だったことも幸運だったとは思うが、当時、まだ医療関係者にさえあまり知られていない病気だっただけに、本当にラッキーだったのだろう。
    また、壮絶な闘病のなか、周囲の人々が日記や

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    2014年08月11日
  • 脳に棲む魔物

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    ネタバレ

    ニューヨークポストの記者が自身の体験を書いた体験記です。
    著者は2009年に病気になるまでは、社交的で話し好きな有能な記者だった。しかし徐々に精神的におかしくなっていく。部屋にシラミがいるという確信が離れず、彼氏の部屋をあさったりし、徐々に仕事がうまく運ばなくなる。かかりつけ医や神経内科医へかかるが、異常なし。しかしついに痙攣発作を起こす。そしてニューヨーク大学に入院するが、その後幻覚などが出現し・・・
    前半は謎解きのようなホラーミステリーのような感じ。後半は、疾患から立ち直っていく姿。自身とは何か?のような哲学的話もあり、疾患の解説も含まれています。
    自身は、病気の間の記憶が曖昧のようで、様

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    2014年06月10日
  • ルクセンブルクの迷路

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    日本の作家と異なるストーリー構成で、面白い。前半の仕込みは、さておき、後半は思いがけない展開で、全てがつながった。

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    2014年02月06日
  • ルクセンブルクの迷路

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    ルクセンブルクやパリの描写が素敵です。滞在経験あれば、思わずニヤリと(笑)

    飽きを感じさせないストーリー展開、ラストに向けた追い込みもテンポよく、一気に読み切ってしまいました。
    ラストはややモヤット感ありますが、手頃な小説をお探しの方にオススメです。

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    2013年10月10日