【感想・ネタバレ】ルクセンブルクの迷路のレビュー

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Posted by ブクログ 2013年07月08日

 どこに向かうかわからない謎めいた書き出し。<本日午前十時五十二分 パリ>。知人女性に街角で呼び止められ動揺する主人公ケイト。そのケイトは、いろいろわけありであるらしいこと。

 ストーリーは二年前にフェイドバック。ワシントンDCに暮らす夫婦が、夫の新しい事業のため、ルクセンブルクに移住することにな...続きを読むる。ケイトは仕事を辞めねばならない。だが簡単に辞めることができるかどうか不安である。どんな仕事をしてきたのか、どこか意味ありげに語られる。文章の裏側に隠されている真実と、これから読者は無数に対面してゆかねばならない。あまり多いとは言えない登場人物たちの裏側に隠された真実や真実らしきものと到底信じられない行状や言動とも。

 内容についてはあまり語ることができないのだが、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの演じた映画『Mr.&Mrs. スミス』のような物語だと言っておこう。似て非なるものであるばかりか、大いに違うのだが、夫婦が互いに大きな秘密を抱えているところと、それを互いに探り出そうとしている部分はとても似ていると思う。表面的な生活を営んでいる危うい日常を描写するところに面白みがある点も非常に似ている。

 しかし異なる点は、映画がコメディ&アクションを売りにしているのに対し、小説の方は、真相を追う主人公ケイトが、一見平和に家族を営んでいる日常の真相を探り出す経過における、身を焦がすような懐疑の念など、心理サスペンスの要素がほぼ全編に漲っていることであろう。

 ヨーロッパの小国であり、歴史的に世界遺産としても認められているほどのルクセンブルク市が持つ重厚感や、夜の暗さ、陰影の濃さなどが描かれれば描かれるほど、ケイトの追い詰められたような心情が反映されているように見え、この先に待ち受けており、いつかはそれと対決しなければならない、歓迎されざる真実という想像に、ケイトともども胸が押し潰されそうになってゆく。

 作者はルクセンブルクに一年半滞在したことがあるらしく、この時にきっと深い印象を得たことが作品へのインスピレーションに繋がっているのだろう。金融大国と言えばスイスしか思い起こすことがなかったが、実はルクセンブルクも同様の守秘主義に覆われた金融大国であり、政治・犯罪などに関わる闇マネーがざわめいていても不思議ではない場所である。夫はどうもそこに関わるビジネスで一挙に大儲けを企んでいるらしい。夫を追いかける国際警察らしき影も見えてくる。またケイトの抱える誰にも言ってはならない過去自体が非常に重たく、どこにも平凡な日常が見えない中で表層的に営まれ続けてゆく日常や社交の描写が、本当に疎ましく油断ならない気配に満ちている。

 夫への愛、子供たちへの愛に胸をひさがれながら、ひたすら真相を追いかけ、そして裏のまた裏まで余年のない駆け引きと化かし合いの果てにどんな脱出口が待ち受けているのか、この本を読む手が止まらなくなるほどの好奇心とスリルに満ち溢れている。過去と現在の交互描写がクロスしたときに物語は間違いなく発火するのだ。

 クリス・パヴォーネという作家は、新人作家で小説はこれが初めてとのことだが、この小説を読む限りベテラン作家にしか見えない書きっぷりである。ワインに造詣が深いことからワインのカタログ本を執筆しているというが、小説中でもワインの登場機会は少なくない。

 本書解説では未だノミネートと抑えられているが、この作品は出版とほぼ同じ時期、2013年度アメリカ探偵作家クラブ賞(MWA賞)の新人賞を受賞した。本当に力のある作品であると思う。次作にも期待!

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Posted by ブクログ 2014年02月06日

日本の作家と異なるストーリー構成で、面白い。前半の仕込みは、さておき、後半は思いがけない展開で、全てがつながった。

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Posted by ブクログ 2013年10月10日

ルクセンブルクやパリの描写が素敵です。滞在経験あれば、思わずニヤリと(笑)

飽きを感じさせないストーリー展開、ラストに向けた追い込みもテンポよく、一気に読み切ってしまいました。
ラストはややモヤット感ありますが、手頃な小説をお探しの方にオススメです。

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Posted by ブクログ 2018年06月10日

ワシントンDCに住むケイトは、夫が新しい事業を始めるルクセンブルクに息子たちとともに移住した。やがて彼女はマクレーン夫妻と知り合うが、夫妻にはどこか怪しげなところがあった。何か犯罪を企んでいるのか?それとも以前ある組織に属していたケイトの過去を探っているのか?あるいは彼女の夫を狙っているのか?疑惑の...続きを読む迷路の中で、彼女は想像を絶する事実を知ることに。意想外の展開が連続するサスペンス巨篇。

怪しそうな人物はやっぱり怪しいという、驚きがあまりない展開であった。

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