カルロス・ルイス・サフォンのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ前作「風の影」に続いて【忘れられて本の墓場】が登場する第2弾。
今回も舞台はバルセロナ、年代は1917年から始まる。
主人公の少年の不幸な生い立ちから大人になって、執筆業に携わるようになるいきさつ、そこに現れたのが謎の編集者と曰くのある謎の館、ダビット(少年だった主人公)はいつしかその数々の謎に足を踏み入れてしまう・・・
前回も書いたかもしれないけれど、バルセロナという街、街自体がミステリアスです。私の中でですけど。
一昔という年代の設定でもあるかもしれませんが、一言で言い表せないような・・・でも魅力的。
佐野元春の歌の中にも出てきましたがそのイメージとも重なります。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ全部で四部作であると言う三作目。
一部と二部はほんの少し繋がりがあるか、と言う具合だったけど、三部になってから一気にそれぞれの登場人物が出て来て、どう繋がって行くのが興味深い。
話しはそれぞれの部で完結しているとのことだが、これは四部がすごく気になる。二部のどんでん返しに疑問が出て来るし、どの見方をするかで話の内容が変わってしまいそうなくらい。
舞台はスペインで、小説はスペインの内戦とフランコ独裁を通り抜けている。この時代の背景がスペイン人の人達の心にどう落とし込まれたか、主人公や登場人物の心や人生にも大きく関わっているのがよくわかる。
作品の中のスペイン人達の会話が面白い。とってもまわりくどい情熱的な比喩を使いまわしながら、普通に会話をするのが、いいなあと感じる。
「ツケがききますかねえ?」「神様でもお断りです」なんて言い方出来るなんていいなあと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『風の影』と同じシリーズで、「忘れられた本の墓場」が登場する本。読みだすと何故か止まらなくなる本です。
『天使のゲーム』は『風の影』とはまったく趣が違う。『天使のゲーム』を読んでいると、上巻から下巻の最初までは、全体を把握できていたつもりだったのに、突然、なんだかまったくわからなくなると言うことになる。
そして、最後まで読むと、さらに何が起きたのかがまったく不透明になると言う、普通のミステリー小説ではあり得ない感じ。このシリーズは第4弾まであるらしいので、その中で少し関わってくるのかな?
スペインの街並みの話しや、スペイン人の人柄にも触れる事が出来るので、その辺りも楽しい本。
『風の影』に出てくるセンペーレと言う本屋さんが、こちらにも出てくるのだが、『風の影』の後かと思ってたら、前の年代だった。懐かしく感じる名前がちらほら出てくる。 -
Posted by ブクログ
内戦終了後間もない1957年のクリスマスを目前に控えたバルセロナ、旧市街にある「センベーレと息子書店」を訪れたのは、古臭い仕立ての黒い背広を着て杖を突いた年寄りだった。猛禽を思わせる目をした男は鍵つきの書棚から『モンテ・クリスト伯』を選ぶと、不自由な手でメッセージをしたためた。《死者のなかからよみがえり、未来の鍵をもつフェルミン・ロメロ・デ・トーレスへ。十三より》と。使用人で店主の息子ダニエルの親友でもあるフェルミンに本を贈ったのはいったい何者、不吉なメッセージは何を意味するのか。
心配するダニエルの問いに重い口を開いたフェルミンがぽつぽつと語り始めたのは、内戦からフランコ独裁に至るスペインの歴史の暗闇のなかに隠されていた悲惨きわまる物語だった。権力が推移するたび、現政府は前政府の関係者を次々と監獄送りにした。おかげで当時のスペインでは囚人の数が膨れ上がったが、そのなかにはフェルミンのように前政府の下で働いていた者ばかりではなく、政府批判をしたという理由で収監された作家や医者といった普通の市民も多かった。
『モンテ・クリスト伯』を模したフェルミンの脱獄とその後の『レ・ミゼラブル』ばりの逃亡生活は、敬愛するデュマやユゴーに捧げる作家のオマージュだろう。冒頭に登場するサルガドのような傍役にいたるまで登場人物の容貌や性格の輪郭がはっきりしているので感情移入しやすい。前二作にあった複雑に入り組んだ構成は影をひそめ、血湧き肉踊る19世紀ロマン主義小説の作風で通している。主人公が少年の面影を残す純情な人物であるだけに、話を面白くするには脇を固める人物に個性的な面々が必要になる所以である。饒舌で多方面に顔が利き、何でもこなすダニエルの良き相棒フェルミンは以前から気になる人物であったが、今回は、このトリックスター的な人物に光を当てることにより、バルセロナの闇が愈々際立つ。
世界中でベストセラーとなった第一作『風の影』、第二作『天使のゲーム』につづく「忘れられた本の墓場」シリーズ四部作の第三作。四部作のグランドデザインを描く『風の影』でラフ・スケッチにとどめ置かれた部分に光を当て、細部をふくらませ、小説の厚みを増した。迷宮のようなバルセロナの街のどこかにある「忘れられた本の墓場」をめぐる幾重にも折りたたまれた入れ子状の物語のなかでは、比較的シンプルなストーリー展開。フェルミン自身の物語による回想部分を含めても、前二作のもつ複雑な構成とは一線を画す読みやすさだ。分量も半分におさえられているのは、ひたすら怒涛のように最終巻にのめりこむために一息入れる役割を果たしているのかもしれない。
バルセロナ・ゴシックとでも呼びたくなるような独特の怪奇・残酷美に溢れるサフォンの世界だが、奇を衒っている訳ではない。住民投票の結果を見ても分かるように、スペインからの独立を強く希求するカタルーニヤ。内戦の混乱、その後のフランコ独裁に締め付けられ、忍従しつつ生き延びてきたカタルーニャの人々には、曰く云い難い日々の記憶が層を成して堆積しているのだろう。それだけに、人々の生や愛に寄せる思いは強く、願いを遂げる意志には熱いものがある。宗教的立場や政治信条の差異が生死を分ける日常の中で、他人と自分の命を秤にかけるような毎日を生き抜いてきた人々の物語は時に怪しく、時に酸鼻を極めるものともなろう。
一つの小説のなかに、別の作家の手になる物語が入れ子状に仕組まれ、物語世界の動きが現実世界に影響を与え、今を生きる人物の行動が物語に反映するという、トポロジカルでメタ小説的な小説構造。どこから入っていっても最後に待つのは「忘れられた本の墓場」であり、物語はそこからいくつもの時代、数え切れない登場人物の生活へと延びている。バルセロナという都市の地下に埋もれた歴史の層を蟻の巣のように迷宮化してしまう四部作。本篇だけ読んでも充分に楽しめることはうけ合うが、おそらく、これを読めば他の二編と、刊行の待たれる最終巻も読みたくなるだろうことはまちがいない。 -
Posted by ブクログ
「風の影」が良かったので、その第2弾ということで購入
「風の影」の冒頭にでてくるバルセロナの「忘れられた本の墓場」が本作にも登場する。訳者あとがきによると「忘れられた本の墓場」4部作の第2弾らしい。
本作は「風の影」より少し前の時代で1928~1930年頃の時代設定で、1926年に建築家ガウディが没し、1929年に世界恐慌が始まるという時代背景がある。
この本のエピローグに主人公に送られてきた女性の手紙の中に「ダニエル」という息子が出てくるが、これが「風の影」の冒頭にでてくる「センペーレ古書店」の息子「ダニエル」で、前作につながっている。
感想は下巻で