仙川環のレビュー一覧
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小さな町でのウイルス感染で引き起こったパニック現象。マスコミの煽り方や、地域住民のヒステリックな行動、医者の困惑がリアリティーあって面白い。新型ウイルスではなく、狂犬病という従来のウイルスを扱っているのに注目。『繁殖』でもイタイイタイ病のカドミウムだったり、恐ろしいのは新型ばっかりじゃない、ということを学ぶ。半世紀発症してないからって行政も備え不足だし、個人もぬるすぎる。動物を飼っているということに関してもっと注意深くなるべき。この作品はパニック映画みたいな緊迫感は、正直なところ、ナイ。でも、こういう地味に警鐘を鳴らしている小説のほうが多くを学べる。主人公の真澄にも好感が持てた。
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途中までは、ぐいぐい引きつけていく畳み掛け方は相変わらずうまいな〜と思う。しかしながら、事件の解決(と言っていいのか、あれ)のやり方が強引というか、そんなに上手くいくものだろうかと思う。いくらなんでもずさんな処理の仕方だろうし、バレるだろ、普通に。そしたら隠匿しようとしたことで却って重い罪に問われそうなものだしなぁ。量刑とかは詳しくないから置いておくとしても、結局「きちんと裁かれ、社会的な影響(風評被害、遺伝子組み換え植物利用の停滞/後退)にも責任を果たす」よりも気持ちの切り替えはつかないだろうし、逆にずっと罪の意識を引きずらなければならない辺りが、むしろ救われてないラストだったかな。
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フリーライターの深沢岬は、新しい仕事の打ち合わせのために訪れたホテルで、呼び出された男にベビーカーに乗った赤ちゃんを無理矢理押し付けられた。「その子はあなたの娘さんです。引き取ってもらいたい。」。わけがわからず激昂した岬だったが、覗き込んだ赤ちゃん(ミチル)の顔は昔の自分に面影があり、そしてよくよく考えてみると一つ気になることがあった。そうだ、1年前に私は卵子を売ったのだ・・・。
最初のうちはミチルを押し付けた男を探し出し、返すことしか考えていなかった主人公だったのが、ミチルの出生の秘密を知るごとに、何よりもミチルの将来を考えて行動するようになっていったのがよかった。罪を隠すために殺人を -
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最近、注目している女性作家の一人。
夏のある日、幼稚園で食中毒事件が起きた。そして物語は日めくりで、様々な展開を見せていく。
食の安全が大問題となった2007年。
今年の世相を表す漢字も「偽」という字が選ばれたらしい。
(その他の候補も「食」「嘘」「疑」というような関連する字だったそうだ)
不二家、赤福、マクドナルド、ミートホープ、比内地鶏、船場吉兆・・
もちろん食品の問題だけでないとしても、口に入るものだけに安心できなければ売る資格はない。
しかし、大人ならまだしも、子どもたちが食べるものは、細心の注意を払う必要がある。
そして誰が犯人かわからない食中毒事件。誰もが疑 -
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第1回小学館文庫小説賞受賞作。
最近、何かを思いつめたような様子の外科医の夫・仲沢啓介。同じ大学病院でウイルス研究医として働く妻の葉月が気になって聞いてみても何も話してくれない。夜中に突然電話で呼び出されて出て行くということもあり、葉月は啓介に他に女がいるのではないかと疑っていた。そんなある夜、啓介の前妻・原島公子から電話がかかってくる。啓介との息子・宏が帰ってこないというのだ。そしてその日も啓介は、突然の呼び出しをうけて留守だった。
夫を信じたい気持ちと、夫しかありえないのではないかという疑いの気持ちで揺れながら、葉月は真相にせまっていく。途中まで、なぜ「感染」というタイトルがついた