仙川環のレビュー一覧
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他の地との交流もほとんどなく、孤立した地で暮らす通島の人々。
閉鎖的な環境は人の心も閉ざしていく。
よそ者を嫌い、あからさまに警戒心を露わにする島民たち。
前任者の引退を受け、島へと医師として赴任した希世は何とか島にとけ込もうとするがなかなか上手くはいかない。
島で推進されている「ピンピンコロリ運動」。
だがその謎を解くと言っていた友人は失踪し、やがて島内で死亡が確認される。
目撃者もなく、どうやって友人は島にやってきたのか。
希世は漠然とした不安を抱きながらも、医師としての務めを果たしていくのだが・・・。
初心忘るべからず。
当初は崇高な目的があったとしても、時は人を変えていく。
いつしか -
Posted by ブクログ
幼稚園で起きた集団食中毒事件。
だがそれは、単純な食中毒などではなかった。
管理体制に問題があったわけでもなく、誰かの責任でもない。
分析の結果特定された原因が何故混入してしまったのか。
何者かによって意図的に混入されたものではないとしたら・・・。
人は驚くほど強くもなれるし、脆く崩れ去ってしまうほど弱い面もある。
追い詰められた人間は、より安易な道へと逃げ場を求めるものかもしれない。
それにしても安易すぎる展開に唖然としてしまった。
たぶん仙川さん自身もそう感じたのではないだろうか。
主人公が反省する場面が描かれている。
身近な恐怖・・・環境問題を絡めた重いテーマを描いているのに浅く感じてし -
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仙川さんのデビュー作でもある物語。
そのせいなのか、展開も結末も、描写すらも浅い感じがしてしまった。
子供は宝。
そんなふうに無条件に子供を愛する親ばかりではないことはわかっているが、ほとんどの親にとっては自分の命に代えてもいいくらいに大切な存在なのではないだろうか。
病気だとしても治せるものなら治してやりたい。
自分たちに出来ることがあるとすれば、何でも出来る限りのことはしてやりたい。
それは自然な感情だとは思うのだけれど・・・。
大概の場合、子供にとって親とは絶対的な保護者だ。
だが、親はその限りない子供への愛ゆえに愚かになってしまう。
親とはそんな哀しい存在でもあると伝えたかったのだろう -
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江戸時代に飼われていた地鶏「相州地鶏」を研究機関が復活させ、その卵が高値で販売を開始した。
ところが、「極卵」と名付けられたその卵を食べた人たちが次々と中毒症状を起こす。
死者の数も増えていき、メディアは面白おかしく騒ぎたてる。
厳正な検査の結果、飼育をしていた養鶏場には、環境・設備等の問題は何らないことが判明。
いったいなぜ、卵はどこで汚染してしまったのか?
マッチポンプ野郎と呼ばれる記者を筆頭に、養鶏場を中毒事件の元凶だと決めつけ、次には研究機関に原因があると糾弾していくメディア。
声高に国による隠ぺいだ、陰謀だと叫ぶ自然食品ネットワークの主催者たち。
本当の原因は何か?国民の安全のために -
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薬は使いようによっては毒にもなる。
決められた用法や用量をしっかりと守らないと逆に健康を害することになったりする。
物語は「薬」をめぐる連作短編集だ。
それぞれの物語に登場する人物たちは微妙に他の物語とリンクしている。
医療ミステリーシリーズとあったけれどミステリー感は少ない。
隠された心の暗部が描かれている心理サスペンスのような気がしないでもなかった。
それぞれに描かれている人たちの身勝手さやずるさ、愚かさや陰湿さにも非現実的なリアルさもあり面白かった。
深く掘り下げた物語が好みの人には物足りなさもあるだろう。
けれど短編集が好きな人にはいいのでは?と感じた。 -
Posted by ブクログ
食に関わるものとして「食品の安全とは何かを鋭くえぐる社会派ミステリー」という惹句には惹かれるものがあって、手に取ってみた。
巷に蔓延っている「食べてはいけない」系のあまり科学的とは言えない、煽るだけ煽って逆に食の安全を脅かしている言説と、モンサントに代表される遺伝子組み換え産業の、生命や自然に対する畏れのなさ、科学的謙虚さのなさ、そしてジャーナリズムの全くジャーナリスティックではない無節操さ。そういう諸々を批判的に、そして単純化してものすごくわかりやすく提示している、ということでは成功している。フィクションだけど、「食の安全をめぐる社会の構図」をおおまかに知るにはいい感じ。生産者だけが、なん