イリナ・グリゴレのレビュー一覧

  • 優しい地獄

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    獅子舞と女性、ジェンダーを研究しているルーマニアのイリナ・グリゴレさんの初エッセイ。こう言うのをオートエスノグラフィーというらしい。チャウシェシク政権下で育った少女時代から日本の白神山地の麓で娘たちと暮らす今を描いていて、時折、現実なのか妄想なのか分からなるような幻想的な表現もある。映画監督になりたかったらしく今も映像をよく撮っておられるようで、映像的な表現も随所に見られて、なんか不思議な気分を味わせてくれるエッセイだ。

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    2023年11月17日
  • 優しい地獄

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    ネタバレ

    想起力というのかなあ。イメージがしゅるしゅるとつながって出てくる。それがとてもすてき。おっかないのも多いけど。こういう日本語がかける人はかなり少なくなっている気がする。赤毛のアンをふっと思い出させるものがあるこの想起力。その健康さも含めて。

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    2023年10月23日
  • 優しい地獄

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    自身の生きてきた道のりとそこで目にしたこと感じたこと。それを書き記して自らの研究対象にすることをオートエスノグラフィと言うらしい。これはその実践の書ということだろうか。著者の半生自体が自分とはかけ離れていてとびきりユニークだし、概ね読みやすいし文章に時折混ざる独特の言葉遣いが面白い。時々脈絡がわかりづらいというかわからない、つぶやきのような文やイメージの連なりに出くわすが、それも詩的と言えば詩的。

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    2023年04月15日
  • 優しい地獄

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    ネタバレ

    私から腫瘍が彼にうつったと酷く差別された。それがほんとうなら、私はそこまで彼に愛されたことになる。
    p.108

    筆者の感覚なのか、異文化の育ちなのかわからないけど、こう言った状況に置かれた日本人ならば大抵出てくる「自己肯定感の低さ」をまったく感じさせない、とても客観的で淡々とした語り口が非常に不思議な感覚だった。さりげなく織り交ぜられている悲惨さが、タイトルを都度思わせる。絶妙な表題だと思う。

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    2023年02月06日
  • 優しい地獄

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    ルーマニアのイリナグリゴレさんが日本語でかくも美しく簡潔な表現で、現在と過去を行き来する自分を書いている。祖父母や育った家への愛や女性であることの哀しみ、人類学者になるという強い意志など、今そこにいることに払ってきた努力に敬意を払う。
    タルコフスキーの映画の最後の家の表現が原作と違うことで、監督が家を描いた気持ちがわかるという箇所を読んで、あぁそうだったのかと納得。
    とても素晴らしい、考えさせられることの多い本でした。

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    2022年08月26日
  • ガラスと雪のように言葉が溶ける 在日韓国人三世とルーマニア人の往復書簡

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    “私たちにできることは毎日生き残ることだけ。病気になっても、死ぬまで生きる。その1秒、1秒を普通に生きるのは一番大変かもしれないが、意味を探さずにただ生きるというのは大きな力だと最近気づきました。”(p.62)



    “また男と女の話か、と思うかもしれませんが、私の悩みを聞いてください。私は逃げられないから。女性であることから。いくら頑張っても。だからもう頑張らないです。”(p.49)


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    2025年11月25日
  • 優しい地獄

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    通読。全編通して哀しみのようなものを感じた
    繊細で、剥き出しの神経のまま生きているような

    ふわふわとした夢のような言葉選びでわかりにくいところもあったが、同じような年代に生まれ、ルーマニアで育った彼女と私の違いを意識した。
    共感もあった。同じような理由で私も男になりたかったし、今でもそれは変わらない

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    2025年11月02日
  • みえないもの

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    この作者を読む楽しみは、紹介される文化人類学の数々、それらに関連した映像を深読みすること。
    『バリ島におけるトランスとダンス』をみて衝撃を受けた。

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    2025年10月18日
  • みえないもの

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    どうしても一冊目に読んだ「優しい地獄」と比較してしまう。好き好きだが、私には一冊目の驚きが今回はそれほど感じられなかった。

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    2025年09月09日
  • 優しい地獄

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    お気に入りの本屋さんで平積みされていて何の気なしに買ってきたけど、まあ、自分の見識のなさというか、生きてきた世界の狭さを感じさせられたことでした。

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    2025年08月22日
  • 優しい地獄

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    文章のリズムが自分とは合わなかったものの、さまざまな経験をしている著者の話は興味深く、ふたりのお子さんへの愛のこもった眼差しがとてもあたたかいなと思いました。たくさんの映画や音楽、作家、学者等の名前が出てくるので検索しながら読むのも面白い。個人的にあとがきがとても好きです。

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    2025年03月24日
  • 優しい地獄

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    ジェンダーとか、閉鎖的な国について書かれたものは、どこからその人たちを見ているのか、が結構重要になると感じている今日この頃。

    私たち(いわゆる自由が比較的ある環境に住む人)の視点から、厳しい男尊女卑が続いている国に住む人たちを描いたり、言論の自由がかなり制限されている国に住む人たちを描いたりすると、かわいそうな人々とひとくくりにしてしまう傾向があると思うのです。
    (偏見かもしれませんが)

    日本から遠く離れた、文化も宗教も考え方も全く違う場所で生きてきた生の声(一次情報)は、かなり稀な存在だと思います。
    この本の著者、イリナ・グレゴリはルーマニアで育ち日本に留学し、一時帰国したりもしたけれど

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    2024年12月23日
  • 優しい地獄

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    社会主義国だったルーマニアで生まれ育った著者のエッセイ。
    ルーマニア革命やチェルノブイリなどの話しも出てくるので興味深かった。

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    2024年12月07日
  • 優しい地獄

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    社会主義国。宗教と芸術がないか…。今迄耕していた自分の土地が、国有になり、農業をして暮らしていたのに、工場で働くことを強要される。国の有様で、人の幸せが奪われていく。

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    2024年06月01日
  • 優しい地獄

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    済東鉄腸氏の「千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、・・・」でルーマニア関連の書籍を紹介していたので、読んでみる。

    ルーマニアの歴史をあらためて知ることとなり、そこで過ごした子供時代の暗部がたんたんと語られている。
    詩的な要素もあり、不思議な世界、夢が多く出てきて、この様々な世界に助けられ、今の著者がいるのだろう。

    続編をまた読んだみたい、この先をもっと知りたいと思う。

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    2023年09月08日
  • 優しい地獄

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    極めて丁寧に書かれた良質な日本語の随筆であるというのは否定しない。

    一方でこのような作品にあってはその語り口や描かれるテーマなどについて、やはり一種の共感をするということが「面白い本だった」という読後感に繋がるように思う。

    その点で、そうしたリンクを自分の中では得ることができず、自分とは全く異なる感性を持つ人の作品だ、という思いしか残らなかった。これはもちろん著者や作品の問題ではなく、読み手である自身との相性のようなものだと理解している。

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    2023年01月22日
  • 優しい地獄

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    感想
    私的領域と社会の中で生きる女性の生活史。雪国の文章を彷彿とさせると同時にアンネの日記も想起させる。手の届く範囲に及ぶ社会の影響を描き出す。

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    2022年08月05日