優しい地獄

優しい地獄

1,980円 (税込)

9pt

『雪国』を読んだ時「これだ」と思った。
私がしゃべりたい言葉はこれだ。
何か、何千年も探していたものを見つけた気がする。
自分の身体に合う言葉を。

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社会主義政権下のルーマニアに生まれたイリナ。
祖父母との村での暮らしは民話の世界そのもので、町では父母が労働者として暮らす。

川端康成『雪国』や中村勘三郎の歌舞伎などに魅せられ、留学生として来日。
いまは人類学者として、弘前に暮らす。

日々の暮らし、子どもの頃の出来事、映画の断片、詩、アート、人類学……。
時間や場所、記憶や夢を行ったり来たりしながらつづる自伝的なエッセイ。


《本書は、社会にうまく適応できない孤独な少女の記録であり、社会主義から資本主義へ移っていくルーマニアの家族三代にわたる現代史でもある》

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五歳の娘は寝る前にダンテ『神曲』の地獄の話を聞いてこう言った。
「でも、今は優しい地獄もある、好きなものを買えるし好きなものも食べられる」。
彼女が資本主義の皮肉を五歳という年齢で口にしたことにびっくりした。
——本文より

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【目次】
■生き物としての本 上
■生き物としての本 下
■人間の尊厳
■私の遺伝子の小さな物語 上
■私の遺伝子の小さな物語 下
■蛇苺
■家
■マザーツリー
■無関心ではない身体
■自転車に乗っていた女の子
■天道虫の赤ちゃんは天道を見ることができなかった 上
■天道虫の赤ちゃんは天道を見ることができなかった 下
■なんで日本に来たの?
■シーグラス
■ちあう、ちあう
■透明袋に入っていた金魚
■社会主義に奪われた暮らし
■トマトの汁が残した跡
■冬至
■リボンちゃんはじめて死んだ
■毎日の魚
■山菜の苦味
■優しい地獄 上
■優しい地獄 下
■パジャマでしかピカソは描けない
■紫式部

■あとがき

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優しい地獄 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    まだ見ぬ世界。知らない場所。知らない環境。行けない時代。戻れない時間。知り得ぬ人々の日々の営みと、日々の地獄から逃げ出したいという想い。けれども逃げた先にあるまた違った地獄があるという現実。のびのびと自然と共に生きた小さき頃の鮮やかな思い出。青春期のセピア色のような、灰色のような時代。絶望を知り、希

    0
    2025年11月30日

    Posted by ブクログ

    社会主義政権下のルーマニアで翻弄された、人類学者の自伝的エッセイ。彼女の傷を淡々と開いて見せ、夢も現実の一つとして取り入れる彼女の語りは透明で柔らかく、そして強い。
    現代の『優しい地獄』に身を置き、私たちはどう生きるか。

    0
    2025年09月16日

    Posted by ブクログ

    エスノグラフィー。初めて知った。
    ルーマニアに生まれた著者が、日本に留学し、最終的には住むことになった。そして、日本語で書いたエッセイ。

    エッセイではあるが、詩的で映画的であり、不思議な世界に連れて行ってくれる。言葉でこの世界を伝えるのは至難の業ではないかとも思う。

    世界と自分が溶けているような

    0
    2025年08月25日

    Posted by ブクログ

    独裁時代・社会主義時代・資本主義時代という激動をルーマニアで経験した著者が、鋭い感性で自分や周囲について描いたエッセイ。非常に感受性が豊かで、詩のような表現も多い。

    0
    2024年08月04日

    Posted by ブクログ

    トンネルを抜けると、そこは…ルーマニアであり青森であり、過去と現在、夢と記憶だった。暗闇を通って行き来する時間や痛みや喪失の旅。静かで温かく湿った霧の向こうに、朧げに儚く寄る辺なく漂う残像。まさにタルコフスキー映画のよう。

    0
    2023年03月18日

    Posted by ブクログ

    『「私が死んでも何も変わらない」。死んでも何も変わらないのであれば、生きて世界を変えよう。』
    ー「優しい地獄 下」より

    こんなにも要約が書けない、こんなにも痛切で、一言で感想を表せない本はなかなか無い。
    著者の紡ぐ言葉の一言一言を、全て余さず噛みしめたい。忘れたくない。この本を、著者を抱きしめたい

    0
    2023年03月14日

    Posted by ブクログ

    どこかのレビューでおとぎ話みたいとあったが、本当にそう。
    エッセイで、時間軸行ったり来たり、映画からの引用、著者の夢の話、感じたこと、、
    大変な辛い話もあるけど、家族との交流、温かな眼差し、強い意志を感じて、おとぎ話に迷い込んだような不思議な感覚。

    繊細すぎる感受性、体と心があると辛いけど、でもこ

    0
    2023年01月03日

    Posted by ブクログ

    ルーマニアに生まれ、弘前に暮らし、書いて、研究する著者の過去と現在を行き来するエッセイ。26編が並ぶが、著者の感性を通した日々とその思いの描写が大きな一編の抒情詩のようでもあるし、また故郷の思い出や歴史、社会を克明に記した叙事詩のようでもある。
    著者の見た夢の話が何度も出てくることもあり、夢と現実の

    0
    2025年08月28日

    Posted by ブクログ

    この本を最初は翻訳エッセイだと思っていて、最初から日本語で書かれたエッセイだと知ったときには驚いた覚えがある。私も田舎の漁師町で生まれ育った身ではあるけど、そんな生い立ちとイリナさんのそれとでは凄まじく違いすぎる。こんな生き方、こんなものの感じ方があるのかと思った。スピリチュアルという言葉はもはやい

    0
    2025年07月20日

    Posted by ブクログ

    もっと年上かと思ったら、著者が80年代の生まれで驚く。森や農村で暮らした御伽話のような幼年期、社会主義の影響下の暗さとチェルノブイリ事故による体調不良や生命の不安を抱えた青春時代。すべて、遠い時代の出来事みたいにおもえた。わたしの人生と同じ時間に起きていた出来事、他の人生たち。知ることができてよかっ

    0
    2025年06月29日

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