あらすじ
「最初に『何かすごい』と思い、それがずーーーーーっと止まらず、一冊全部がそうだった。」
――斎藤真理子(翻訳家)
デビュー作『優しい地獄』で読書界に衝撃を与えた、ルーマニア出身の文化人類学者イリナ・グリゴレ、最新作。
娘たちと過ごす青森の日々。ふとよみがえる故郷ルーマニアの記憶。そして、語られてこなかった女たちの物語――。
「彼女の人生をスクリーンのようなものでイメージとして見せられたら、彼女の語らなかったことが見えて、あの夜ニュースを見た人たちも彼女を理解できたかもしれない」(本書より)
虚実を超えて、新たな地平を切り開く渾身のエッセイ。
今までに書かれたどんな日本語よりも、鮮烈なことばをあなたに。
感情タグBEST3
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こんなひとが近くにいたら、どんな手を使ってでも友だちになりたいと思った。みずみずしい感性が光る文章はもちろんのこと、挙げられているカルチャーがどれも好みすぎる。
アンドレア・アーノルドの映画、『Trance and Dance in Bali』、『世界の宗教大図鑑』、日本酒とよく合うアカシアの花の天ぷら、眠れない夜のLeo Welch。
温泉、ラジオ、踊ること。わたしも大好きだよ〜、気が合うなぁ…。
たんぽぽ綿を「かわい子ちゃん」と呼び、綿飴を食べさせようとする娘さん、ほんとうにかわいいし、ひいてはグリゴレ家全体のセンスを感じる。
終盤は、みえないものとしての女性の物語を、まさに口寄せするかのような臨場感があって、息を呑んだ。『優しい地獄』も読みます。
Posted by ブクログ
“お喋りが得意な人と下手な人は生まれつき決まっていると思う。そして人が人を選ぶ。この場合、私は人間より機械のほうがいい。機械のほうが冷静だから。人が客観的になるのはただの妄想だから。”(p.124)
“ここ最近の私の疑問ーー生物の身体、物体の経験は普遍的ではないことが確かなのに、なぜ社会は普遍的にしようとしているのか。社会とは何? 誰?”(p.105)
“「私じゃない」、「私じゃない」と泣き始めた。この世を傷つけているものは私ではない。麻酔で動かせない顔の半分で泣く。だから戦争がまだあると思った。イライラしてクラクションを鳴らしたのは後続車の男だ。でも私が泣いたのは誤解を受けたからではない。女の子の眼を見て泣いたのだ。私たちはあの人と同じ世界で共存しないといけない。お互いのことを何も知らないまま。彼は知ろうとしない。雪の中を歩く白い犬が綺麗。あの犬になりたい。”(p.145)
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世の中にはびこる、"彼女"たちへの暴力
暴力に溢れた世界で、自然を見つめる著者の優しいまなざし(いや、もともと人間は自然なのだという考え)が際立つ
人間は色々すぎて、みえるものとしての社会通念のもとで暮らしてると、みえないものが多すぎるのだな
Posted by ブクログ
現実のことを書いているのに別世界をのぞいているような?自分を律している理性とか、自分の中のいろんな人格とかの縛りが緩んでいった先の文章という感じがする。チェルノブイリとか、病とか、子育てとか、超、現実的事柄なのに。イワナや雪や、故郷の森や虫のお墓や、思い出のヴェールを纏って描かれていてとても美しい。
抑制がなくなって混乱してるのとは違う。理性的なまま、大脳新皮質の働きが薄くなってる感じ。不思議な文章だった。
Posted by ブクログ
この作者を読む楽しみは、紹介される文化人類学の数々、それらに関連した映像を深読みすること。
『バリ島におけるトランスとダンス』をみて衝撃を受けた。