ジョナサン・ゴットシャルのレビュー一覧
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ネタバレすごい興味深い内容だった。
自分が持っている知識は、自分が見つけ出した知識ではなく、他人が持っていた知識を信じている。みたいなのとかね。
それなのに著者のあの人が嫌いすぎる文章が強すぎて、笑ってしまう。
貴方のそれはナラティブに支配されている状態なのでは?
これ、ちゃんと自分が嫌いという気持ちに支配されている(あの人が悪というストーリーを自分が作り出している)と自覚されながら書いてるんだよね?
でも、読んでいるとそういう俯瞰して自分を見てないような気がして……少しあの人への悪い描写を削った、というところはあっ、ちょっとは俯瞰してみてるんだ。と思ったけど、そこだけだったしなぁ。
そのちぐはぐさが -
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「物語」をテーマにした本.銃乱射事件,反ワク,テロ,ホロコースト,宗教,芸術…これら全部に「物語」が関わっている.
物語は人間は互いに意思を疎通し協力し合うための強力なツール.物語は複雑な現実を単純化する.結果,人々は各々の限られた認知能力の中で誰が敵で味方かと言った世界観を共有することができる.だからこそ地球の覇者になれた.
しかし昨今では物語が災いを招く事が往々にして起きている.陰謀論に取り憑かれ悪を懲らしめる正義というナラティブに侵された殺人犯による銃乱射事件.反ユダヤ主義を掲げたホロコーストなど.
2024年1月,世界経済フォーラムのグローバルリスク報告書は「誤情報」を最大のリスクと -
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日頃SNSに耽溺しがちな人間が読むと、納得と納得と納得しかない本。読みながら、いろいろな集団のことが頭をよぎる(し、著者が指摘する通り自分のことはそこに入れて考えたりしないもの!)。頭が悪いから、同じようなことを言う人に囲まれているから、そうしないと保てない惨めさがあるから、etcの自分ではない集団への「分析」を目にするけれど、そもそも人間はそうやって物語を必要として、物語を作りながら、生きてきたよね。SNSでは負の力ばかり見て取れるし(なぜなら読みながらストーリーに閉じ込められたSNS上の特定集団を思い浮かべているから)、実際ものすごく悪さをしている、のがどんどん顕著になっているけれど、「じ
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ストーリー(物語)に、なびきやすい脳を持つ人類たちのためのワクチン的な一冊。
人類はストーリーなしでは生きられない。
この世界はストーリーで溢れている。
本や映画やドラマはもとより、宗教や歴史、ニュース、あとは、広告、会社の同僚のおしゃべりまでストーリーだと思う。
外から自分の中に侵入するようにやってくるストーリーに影響されたりされなかったりして人間は日々生活しているのだ。
ただ、人間には脳の癖があって、自分を善人、対立するものを悪人として組み上げるストーリーに耽溺しやすい気がする。
世界中で頻発している対立も、そのせいに思う。
私自身も、うっかりすると、そういう構造に飲み込まれて世界を認識し -
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人間は物語が大好きという事を、その大好きな物語の形式面やストーリーの種類を特定した点が秀逸と思いました。
何と、ほぼ全ての超人気ストーリーには、多様なものがあるのではなく、ある同じ共通の建て付けはあるという衝撃の分析。
他方でそのストーリーにのらない方法の語りで、いかに重要なものとか事実を力説しても、聞き手の人間は興味を持たずに、伝播することもないという事実も指摘されています。
これは人間の特徴でもあり、人間による認知というものの限界を示していると思いました。
生成AIが爆発的な人気が出ていますが、AIであれば人間が興味を持たない重要な事実やストーリーも根気よく分析してくれるのであれば、様々な -
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大変面白かった。強い国家や宗教思想を広めるため不可欠な共同幻想を民衆に抱かせ、文明を築くのに不可欠な道具であったストーリーテリング(物語化)。良い面ばかりに注目されがちだが、ここではフェイクニュースや陰謀論に同じ力が働いている現代の問題に注目する。
物語の力をスター・ウォーズの「フォース」に例えて説明しているのも(私にとっては)とても分かりやすかったし信頼できるな、と共感・納得したら著者の語る「物語」がストンと入ってきてしまうようになった。脳が操作されてる!
「善をもたらす強力な物語の力を真のジェダイが操るのであれば、すばらしい。しかし人をなびかせる物語の力は、ダークサイドにも使われる。
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ネタバレ人類がこれほど多くの集団で生き続けることができたのは、古くから語り継がれてきた物語の力によるものである。
過去の人々にとって、物語は学びの場であり、結束や共同体の維持に役立っていた。
しかし、現在では、この文明を築くほど人を団結させる力を持った物語の力が悪用されていると著書で説明されている。
その結果、陰謀論、フェイクニュースが世にあふれ、根拠の薄い話や、偽情報を信じたりすることで人々は騙されてしまっている。
これは、物語は人々を結束させるだけでなく、誤解や混乱を生み出す要因にもなり得ることを示唆している。正しい情報を得るためには、事実を確認することや多様な視点から情報を収集することが必要にな -
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すばらしいほんだった。
現代社会の抱える問題点を端的に表しているし、構成も無駄がなく内容はギッチリと詰まっている。
大きな物語やSNSでの示唆に触れない日はない、どころか毎分触れてしまうような時代において、自分にハマる物語に容易に出会ってしまうことは現実との接点を失ってしまうような自体も生じうるだろうと考える。
触れようと思えばいくらでもじょうほうにふれられ、皆客観的なつもりで自分の形に合わせて情報を整えており、自分の物語の増幅に全てが働いてしまう。おあつらえ向きに対立が実在しており、そこにあるヘイトは本物である。
実在する対立は自分たちを強めようとすればするほど、相手を叩けば叩くほど、相手を -
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『幅広い分野の研究者が共同で科学的手法を用い、「物語に関わる脳」を研究している。その結果は率直に言って不穏なものだ。研究成果を見ると、物語の名手はフォースの使い手に似ていなくもない。物語の語り手は私たちに魔法をかけて心の中に入り込み、私たちの物の感じ方を変え、それによって考え方を変え、お金の使い方、投票先、関心の対象を変えている。善をもたらす強力な物語の力を真のジェダイが操るのであれば、すばらしい。しかし人をなびかせる物語の力は、ダークサイドにも使われる』―『序章 物語の語り手を絶対に信用するな。だが私たちは信用してしまう/必要不可欠な毒』
基本的に、ジェットコースター本と勝手に呼んでいるエ -
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ネタバレ『ストーリーが世界を滅ぼす』読書メモ
ジョナサン・ゴットシャル著/月谷真紀訳/東洋経済新報社
◆核心テーマ:物語は文明を築きも破壊もする
人類が進化の過程で獲得した「物語依存脳」が、デジタル社会で暴走するパラドックス。陰謀論・フェイクニュースの拡散、社会分断の加速という現代病の根底に「ストーリーテリングの毒性」がある。
◆物語の二面性
【薬としての機能】
・共感形成(難民問題を個人の体験談で伝える)
・社会統合(#MeToo運動のような集合的変革)
・知識伝達(複雑な事象の単純化による理解促進)
【毒としての脅威】
・善悪二元論(移民問題を「善良な -
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著書はストーリーが好きだし、人類の生活と結束に必要だと考えている。→同意。
ただし、ストーリーが生み出す結束は善悪二元論をベースにした他者と我々の分断を基盤としており、その基本構造が社会の分断を招いていると説く。→なるほど。そうかも。
ストーリーがない社会は考えられないし、実存しえない。よってどうやってストーリーの悪い面を捉え、それを自覚しながら活かすか?というのが主張。→言われればそうだけど実際には難しい。自分が持っているストーリーだけでもそれを自覚することから始めたい。
この本は、「NEXUS」、「プロフェッショナルはストーリーを語る」、「ホモデウス」、「楽園の楽園」などストーリーについ -
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この本がセンセーショナルな本として受け取られているらしいが、正直内容はだいぶ見飽きたような話である。
物語批判からくるプラトン解釈は、本書にもあるようにやはりというか、ポパー読解に通ずるものがある。物語を支配することが独裁政権がやってきたこと、というのはまあ間違いない。ただ、
「カトリック宗教が物語を利用している」
このくだりを読んだ瞬間、
「そんなん誰もが知ってる話やん!!!」
と思わず突っ込んでしまった。
「悪魔は私たちだ」と、
米軍の戦争を批判するところでは、
思わず突っ込んだ。
「…やっと気づいた?」
物語のパノプティコンを批判する本書だが、批判自体は正当なものと受け取られるとし