坂上香のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
映画『プリズン・サークル』の監督、坂上香さん著。妻の実家近くで立ち寄ったオシャレ独立書店が本書を題材に読書会を開くとのことで気になって購入。坂上さん、10代の4人、そしてプリズンサークルにも出てきた元加害者、元被害者など複数名が一同に介して成された会話を纏めたもの(本書は「あいだで考える」シリーズという企画の1冊だそうだが他の作品もどれも面白そう)。
どの章も良かったが、元加害者である翔さん(仮名)の回にただただ圧倒された。
翔さんは未成年の頃、身内を犯された復讐で10代の若者を殺してしまい、少年刑務所に8年収容された過去がある。映画では自らの感情を出さなかったとあるが、本書では自分が何故前述のよう人生を辿るに至ったかがめちゃくちゃ見事に言語化されてて感銘を受けた。
シングルマザーで夜の商売をしている母親に、夜間保育に預けられていた。それが嫌で、3, 4歳の頃から一人で留守番するようになった。
TC( Therapeutic Community。 刑務所で受刑者同士が対話することを重視した教育プログラム)で己の過去を語るうちに、自分は一人で置いていかれるのが嫌だったという感情に気付く。そのうち夜に残るのが嫌で家を離れ遊ぶようになり、恋人と同棲している時も恋人が遊びに行くのが耐えられない。
これが翔さんの語るロジック。
「これが嫌だ」という自身の感情に理由をつけていく様にマジで圧倒されたし感動した。もちろん翔さん自身のポテンシャルもあるやろけど、TCが人をここまで変えるのであれば、日本にももっと広がって知られるべきと思う。
仲間のサンクチュアリは自分がつくる。で、自分のサンクチュアリは自分がつくる。
そして、重たいテーマな一方、出てくる若者たちが驚くほど知的で感性豊かで、
「いや日本の未来明る、、!」
とポジティブにもなれるとても気持ち良い作品でもある。妻の実家近くの読書会には物理的に出れんが、読んだ人と是非喋ってみたい教養本! -
Posted by ブクログ
本当に以前犯罪を犯した人と本物の被害者が話し合う1人として参加することで、ヒリヒリするような緊張も生まれるが、同時に「事実である」強さを感じ、深い理解に繋がっていく。
・加害者は過去に被害者であったことが多い。
・受刑者が自分の感情に気づくTCがもっと広がってほしい。
・加害者と被害者が対話できる「修復的司法」が広がってほしい。2023年度から始まったらしい制度(刑務所や少年院の職員を媒介するもの)がその第一歩になればいい。
「根っからの悪人にさせない方法は、ある気がする。その余地は全然ある。」という一文、いいなぁ。
「あいだで考える」シリーズの本気さがよく分かった。 -
Posted by ブクログ
受刑者が自らの生い立ちや犯罪について語り合う刑務所での更生プログラムを映したドキュメンタリー映画『プリズンサークル』。そのプロデューサーが10代の若者と、映画に出演した加害者、被害者たちを集めて行ったワークショップの記録である。
万引きをやめられない青年。友人のために人を殺してしまった青年。中学生によるバスジャック事件で友人を殺害され、自らも重症を負った女性。それぞれの話は、今まで思っていた「加害者」「被害者」のイメージとは全く違っていて、犯罪というもののイメージが変わるものだった。
犯罪を犯してしまった二人に共通していた、自分は悪いことをしたのだから、誰にも話を聞いてもらえないという感覚を、刑務所という空間や、検察官や弁護士による聞き取りは、助長していく。その様子が、「加害者」の口から語られるのは、痛々しかった。
更生の意志を持っていても、それを助ける人がいるか。現実には、ほとんどいないことに、もやもやとする感覚が残った。
「被害者」となった人の話も、考えさせられるものがあった。
「許したわけじゃない」けれども、目の前でバスジャックを起こしている少年を見て、どうしてこの子は、こんなことをしているのだろう、と素朴に思う気持ち。自分が傷つけられ、友人を殺され、「加害者」を許せない、極刑にしてほしい。そういった単純な気持ちや思考回路とは、全く違った、「被害者」の複雑な心理が、「被害者」自身の口から語られる。
何かしらの犯罪に関わった人が、実体験を語る言葉が、この上なく重い本だった。
今回は、犯罪の「加害者」と「被害者」がテーマであったが、それ以上に、人には語りたくない人の経験を聞く、その心構えを問い直されたように感じる。
自分以外の他人、人の心の奥底を垣間見ざるを得ない人、そうした経験に触れてみたい人、そうした人たちに読んでもらいたい。 -
Posted by ブクログ
とても面白い。
もちろん全員ではないが、自分の犯した罪に対して罪悪感がない受刑者って一定数いるんだろうなと思った。
本書でも「なんで悪いのかわからない」とか「なんで自分ばっかりこんな目に遭わないといけないの」とか言ってる人何人もいて驚いた。
だって彼らは公判でも反省していますと言ったり反省文書いたりする。
でも、やっぱほんとはそうでもないんだと驚いたし、
そのリアルな内心を拾えたことが本書のまず大きな成果だと思う。
受刑者たちは幼少期に虐待やいじめなどの経験がある子も多く、生きづらさを抱えている人が大概であるから、被害者意識の方が強いというのも興味深い。
そして自分と向き合って自己憐憫を認めてその原因を考えてそれを取り除いた上で初めて、罪悪感をもち反省する気持ちが芽生える、ということもよくわかった。
私たちは反射的に「悪いことしたら反省しろよ」と思ってしまうが、それは実は途方もなく長いプロセスが必要なんだな。
罰としての刑務作業ではなく、罪悪感を持ち反省に至るような思考のプロセスを形成できるトレーニングを提供しないと、絶対にまた再犯するだろうしこの世から犯罪はなくならないと強く思う。
来年の拘禁刑導入を機に、刑罰の形が良い方向に変わるといいな。 -
Posted by ブクログ
刑務所での刑罰というイメージが、根底から覆されるノンフィクションです!
プリズン・サークル‥塀の中の円座。受刑者同士が語り、問い、己の罪と向き合うだけでなく、過去の記憶と喜怒哀楽の感情を呼び起こします。そしてそれらを表現する言葉を獲得し、新たな、いや、ひょっとしたら人生初の価値観や生き方を身に付けていく姿が克明に描かれています。
読み手はそれらを目の当たりにし、人間的成長や相互影響の大きさを実感し、心を揺さぶられます。
受刑者の語りからの共通点として、「加害者はかつてもれなく何らかの被害者だった」という事実が浮かび上がります。つまりは「負の連鎖」なのですね。だからこそ、本作で描かれるTCユニット(後述)が、塀の中ではなく、塀の外にこそシステム構築される必要があると痛感しました。
もうこれは学校教育の中で行われる「対話的で深い学び」に他ならない気がします。ICT(情報通信技術)教育も大切ですが、学校は何か大事なことを疎かにしている気がしてなりません。痛切に考えさせられる秀作でした。
(以下は、本書刑務所の特徴と著者の紹介です)
島根にある官民協働の新しい刑務所 : 社会復帰促進センター。初犯、刑期8年以下、男性のみ対象とし、これまでの刑務所の顕著な特徴である〝懲罰対象で半強制の「沈黙」〟の逆のアプローチを推進する刑務所です。特に、受刑者(訓練生)同士の対話により更生を促す「TC(セラピューティック・コミュニティ=回復共同体)」プログラムを、日本で唯一導入しているのが大きな特徴です。
著者は、米国の受刑者を取材し続けてきた、ドキュメンタリー映画監督の坂上香さん。2022年3月初版発行です。坂上監督による同名ドキュメンタリー映画が2020年1月に公開され、文化庁映画賞・文化記録映画大賞を受賞されているようです。取材許可まで6年、プログラムの密着撮影2年、完成まで計10年を要したとのこと‥。(私はまだ拝見しておりません。動画配信サービス・販売DVDも見つけられず‥、残念です) -
Posted by ブクログ
そもそも刑務所の仕組みについて、ほとんど知らない、というか気にかけたことがなかったことに気が付く。そのため、このような更生プログラムが行われていることにいい意味で衝撃を受けた。しかも、本書に出てくる受刑者たちの生い立ちや家庭環境も壮絶だ。そんな受刑者たちが、徐々に心開いていく様はとてつもなく読み応えがあり、固唾を飲んで読み進めた場面も多かった。
もちろん前進する受刑者もいれば、後退するもの、変わらないものもいる。本書には、更生プログラムを軸に、刑務所の在り方、厳罰化の流れ、地域や社会とのかかわり方、様々な問いを発している。どれも自分たちのことでもあるのに、あまりにもこうしたことに無知だったことに気が付かされた。自分の知らない未知の世界について、考えるきっかけをくれるノンフィクションならではの読書体験だった。 -
Posted by ブクログ
映画『プリズンサークル』を見ていれば、もっと深い感慨があるだろうが、見ていないので純粋にこの本のみの感想である。
他のさまざまな本、研究でも言われている通り、犯罪者は生育環境に問題があり、自分が大切にされた経験が極端に少なく、そのため自尊感情が育たず、自分の感情を殺す傾向にある。そうしなければ虐待や貧困などに耐えられないからだ。この本に出てくる元犯罪者も、そうである。普通の若者たちが、対話と学習によって、「犯罪者」と自分の間に理解不能な溝があるわけではないことを、自ら理解していく過程が描かれている。
とはいえ、こういう集まりに参加する若者というのは意識が高い若者で、これに参加しなくてもこの答えにたどり着いたのではないかと思う。もちろん読んで考えたことより実際に交流して考えたことの方が深く残るので、これはこれで良いとは思うが、こういう集まりに参加しない大多数の人たち、「プリズンサークル」も見ず、本も読まない人たちにどうわかってもらうかは難しい。
子ども食堂(本来国がどうにかすべき問題を善意の一般人におしつけ)の必要性が増す日本社会で、子どもの育成環境を良くすることが、未来の犯罪防止に繋がると、どれだけの人がわかっているだろうか。
刑務所内のTCも大事だが(それが全国に一ヵ所しかない日本!)、子どもが他者に大事にされる世の中になって欲しい。 -
Posted by ブクログ
映画「プリズン・サークル」撮影の過程、あるいは後日談。
舞台の島根あさひ社会復帰促進センターはれっきとした刑務所である。PFI刑務所と呼ばれる官民混合運営型で取り組まれる「TCユニット」と呼ばれる更生に特化したプログラムに参加する受刑者と支援員の物語。
このTCサークル、素晴らしい取り組みである。TCサークルがどなんものかということは本書を読んでいただくとして、しかしながらこの取り組みがこの国の「犯罪者を懲らしめる」ことを唯一の目的とした刑務所のあり方を変える蟻の一穴にはなりそうもない、ということも著者は感じている。それほどまでに、この国の刑務所行政は堅牢であり、LBGTQや入管問題や夫婦別姓問題と同様、世界の常識からずれまくっている。つまり、人権や個人が全く尊重されていないのである。
僕らはすでにノルウェーのリゾートみたいな刑務所(ルトガー・プレイグマン「希望の歴史(下)」)、ハルデン刑務所の取り組みなどを知っている。
希望の書・・・・というより、絶望の書かもしれない。