坂上香のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
とても面白い。
もちろん全員ではないが、自分の犯した罪に対して罪悪感がない受刑者って一定数いるんだろうなと思った。
本書でも「なんで悪いのかわからない」とか「なんで自分ばっかりこんな目に遭わないといけないの」とか言ってる人何人もいて驚いた。
だって彼らは公判でも反省していますと言ったり反省文書いたりする。
でも、やっぱほんとはそうでもないんだと驚いたし、
そのリアルな内心を拾えたことが本書のまず大きな成果だと思う。
受刑者たちは幼少期に虐待やいじめなどの経験がある子も多く、生きづらさを抱えている人が大概であるから、被害者意識の方が強いというのも興味深い。
そして自分と向き合って自己憐憫を -
Posted by ブクログ
刑務所での刑罰というイメージが、根底から覆されるノンフィクションです!
プリズン・サークル‥塀の中の円座。受刑者同士が語り、問い、己の罪と向き合うだけでなく、過去の記憶と喜怒哀楽の感情を呼び起こします。そしてそれらを表現する言葉を獲得し、新たな、いや、ひょっとしたら人生初の価値観や生き方を身に付けていく姿が克明に描かれています。
読み手はそれらを目の当たりにし、人間的成長や相互影響の大きさを実感し、心を揺さぶられます。
受刑者の語りからの共通点として、「加害者はかつてもれなく何らかの被害者だった」という事実が浮かび上がります。つまりは「負の連鎖」なのですね。だからこそ、本作で描かれ -
Posted by ブクログ
そもそも刑務所の仕組みについて、ほとんど知らない、というか気にかけたことがなかったことに気が付く。そのため、このような更生プログラムが行われていることにいい意味で衝撃を受けた。しかも、本書に出てくる受刑者たちの生い立ちや家庭環境も壮絶だ。そんな受刑者たちが、徐々に心開いていく様はとてつもなく読み応えがあり、固唾を飲んで読み進めた場面も多かった。
もちろん前進する受刑者もいれば、後退するもの、変わらないものもいる。本書には、更生プログラムを軸に、刑務所の在り方、厳罰化の流れ、地域や社会とのかかわり方、様々な問いを発している。どれも自分たちのことでもあるのに、あまりにもこうしたことに無知だったこ -
Posted by ブクログ
受刑者が互いの体験に耳を傾け、本音で語り合う、そんな更生プログラムを持つ男子刑務所がある。そこで2014年夏から2年間、出所後の取材を含めると5年余り監督としてカメラをまわし、2020年に映画として公開した著者の渾身のノンフィクション。
舞台は島根あさひ社会復帰促進センター。日本で4つしかないPFI刑務所のひとつで、ドアの施錠と食事の搬送は自動化され、ICタグとCCTVカメラが受刑者を監視するなど、従来の刑務所にないシステムが取り入れられている。
著者が取材したのは、ここで実施されているTC(セラピューティック・コミュニティ)と呼ばれる更生プログラム。受刑者同士の対話をベースに犯罪の原因を探り -
Posted by ブクログ
映画『プリズンサークル』を見ていれば、もっと深い感慨があるだろうが、見ていないので純粋にこの本のみの感想である。
他のさまざまな本、研究でも言われている通り、犯罪者は生育環境に問題があり、自分が大切にされた経験が極端に少なく、そのため自尊感情が育たず、自分の感情を殺す傾向にある。そうしなければ虐待や貧困などに耐えられないからだ。この本に出てくる元犯罪者も、そうである。普通の若者たちが、対話と学習によって、「犯罪者」と自分の間に理解不能な溝があるわけではないことを、自ら理解していく過程が描かれている。
とはいえ、こういう集まりに参加する若者というのは意識が高い若者で、これに参加しなくてもこの答え -
Posted by ブクログ
映画「プリズン・サークル」撮影の過程、あるいは後日談。
舞台の島根あさひ社会復帰促進センターはれっきとした刑務所である。PFI刑務所と呼ばれる官民混合運営型で取り組まれる「TCユニット」と呼ばれる更生に特化したプログラムに参加する受刑者と支援員の物語。
このTCサークル、素晴らしい取り組みである。TCサークルがどなんものかということは本書を読んでいただくとして、しかしながらこの取り組みがこの国の「犯罪者を懲らしめる」ことを唯一の目的とした刑務所のあり方を変える蟻の一穴にはなりそうもない、ということも著者は感じている。それほどまでに、この国の刑務所行政は堅牢であり、LBGTQや入管問題や