坂上香のレビュー一覧
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表題作の映画が公開されたらしいことは何となく知っていた。今年になって本書が刊行されて、ああ『ライファーズ』の坂上さんか、と気づき読んでみることに。(『ライファーズ』を読んだのは4、5年前かなあ、と思いながら本棚を検索したら…もう10年近くも前だった!びっくり。最近、時間の感覚が実際より短いことが多くて…分母となる時間が伸びたせいかなとやや自虐的に思い返しつつ。汗)
昨日、刑法が115年前に制定されて以来、初めての改正案が成立したらしい(正確には、成立の見通し、だったか)。懲罰ではなく更生を軸にするという。私個人としては、ようやく、という思い。SNSなどでは、何かと自己責任、犯罪には厳罰化の声 -
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「サンクチュアリ」
「自己開示」
「対話」
「自己責任」
「厳罰化」
「加害者と被害者」
「理念と現実」
自己開示なんて、僕にはとても難しい話。だけど、どこかでそれを求めている自分もいる。ネットの世界では、自分の考えていることを「本音のように」話すことはそれほど難しくなくできるのだろうけど、現実には「本音のように」話すこともままならない。
自分を受け入れてくれる場所、仲間、環境。サンクチュアリをつくっていくのは誰なのだろうか。
話の舞台は「塀の中」だが、世の中の至る所で、サンクチュアリを求める人はたくさんいるんだろうな。
涙が溢れそうになっては、乾き。
感情が高ぶっては、低まる。
自分の -
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ネタバレ久しぶりのあいだシリーズ。『プリズン・サークル』、私も見てみたいなぁ。この本も10代の若者4人と話し合う感じ。プリズン・サークルに出た元受刑者2人と西鉄バスジャック事件の被害者がそれぞれゲストとして来てくれる。ほんとこういうのに参加する10代って素晴らしいよな。どうやって見つけてくるんだ。よく自分の言葉で話せるなぁ。やっぱここに学力の差というか、本人達も言ってるけど恵まれた環境で育っているということなんだろうなぁ。前の国語力の話を思い出す。ちゃんと言葉で話せること。暴力が当たり前にならないこと。TC(回復共同体)を刑務所でするところがあるのも初めて知ったし、サンクチュアリ、感情の筋肉を鍛えるこ
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日米の刑務所の教育プログラムなどを撮ってきたドキュメンタリー映画監督の坂上香と若者たちの5回にわたる対話。
私は非当事者が非当事者だけで非当事者の理解を深めるために想像を語り合うディスカッションに不信を抱いているので、真摯に向き合う大人である坂上さんがファシリテーターを務めるといえども若者たちだけが話し合う第1回は不安だった。
映画『プリズンサークル』の出演者である加害当事者のふたりと、西鉄バスジャック事件の被害当事者である山口由美子さんが各回のゲストとして出演する2回目からは良かった。
修復的司法というと被害者-加害者間で考えてしまいがちだ。
でも社会の大部分を構成するのは被害者でも加害 -
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先日約3年ぶりの死刑執行があり、色々と考えるところがあって積読していた本書を読んだ。
被害者遺族と死刑囚家族が共に死刑反対を訴えてアメリカ各地を巡る「ジャーニー」の取り組みは日本ではなかなか考えられない。すごい。
それを見つけて密着取材している筆者もすごい。
被害者遺族と死刑囚家族それぞれの立場から死刑についてじっくり考えることができた。
死刑を支える言説というものはいくつかある。
犯罪の抑止になる
被害者感情に報いる
など。
このうち、「犯罪の抑止になる」ことは全く根拠がないことは明白。死刑になる人たちは死刑になることをわかってやっているのであって望んでいる人すらいる。
「死刑になるから犯 -
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収監されている人たちに懲罰を与えるのではなく、お互いに自身と過去の体験を語り合う教化を通して自己変革を求めていく活動を丹念に追った記録である。焦点を当てた若い収監者が少しずつ変わっていく様子はとても感動的である。長い時間をかけて自己を見つめ、辛い過去の体験を共有する中で築かれていく関係性は、再犯防止効果があるばかりでなく、その後の人生を自分で開拓していく勇気と自信を与えていることがわかる。この様な実践が広がるどころか、継続すら危ぶまれているのは残念でならない。
それにしても収監者の多くに共有されている家庭崩壊、暴力、育児放棄の凄まじさには胸が痛む。その結果自暴自棄になって罪を犯した結果収監 -
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著者と10 代の若者たちが「サークル(円座になって自らを語りあう対話)」を行った記録。元受刑者の2 人や、犯罪被害の当事者をゲストに迎え、「被害と加害のあいだ」をテーマに語りあった記録を残した本
受刑者も被害者もなかなか話を聞く機会などないし、接点がないぶんどうしても自分の世界の外にいる存在として考えてしまう。それは良くないんではないかと思っていて、少しでもそういう人たちと自分にある距離を近くするために読んだ
受刑者は「TC(回復共同体)」という対話による更生プログラムを刑務所で受けてきた経験があり、それらを経て刑務所はどういうところか、価値観の変容や出所してからどう生きていきたいかと考えてい -
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「根っからの悪人っているの?」という問いに対しては、読む前も後も「そうじゃない人も多いけどそうである人もいそう」という感想だった。
この本においては、主に他人を理解するには?自分の感情を理解するには?なぜ理解が必要なのか?等の話が興味深かった。
グループワークに参加した10代の若者や犯罪を犯してTCを受けて出所した人たちの言語化能力や考える力に驚き、自分になかった言葉で言語化していて新鮮だった。
犯罪者は必ずしも悪人じゃないよ、というよりは
今犯罪者ではない我々も環境やこれからの出来事によっては犯罪者になりうる可能性があること、そうならないためにできることを考える良いキッカケになった。 -
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犯罪者と未犯罪者は些細な切っ掛けなんだと改めて感じた。周りの大人達がそうさせるものも多分にあるから子供の環境は物凄く重要なんだね。
Twitterなどではよく「犯罪者はどうせ再犯するんだから殺せば良い。そうしないと遺族は満足しない」という匿名だからこその極論もよく見かけるが、その意見もこれを読んだあとには傲慢さを思い知る。
内省をする機会ややり方を知らないだけだったりするし、外野が「そんなの普通に生きてれば身につくでしょ!」というのもおこがましい。どうとでも言える。
島根あさひではそう言うプログラムがあるのね!って言ってもコロナ後は崩壊しかかってるのかな?
出所後は働くのに制限が厳しそう -
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革新的な更生プログラムを一部の受刑者に実施している「島根あさひ社会復帰促進センター」を撮影したドキュメンタリー映画『プリズン・サークル』の監督・坂上香さんをファシリテーターに、10代の若者四人と元受刑者が語り合う。
若者たちの柔軟性と、元受刑者の方たちの言語化能力の高さに驚く。
若者たちはもちろん日本全国から無作為に選ばれたのではなく、加害や被害について興味が深く理解力のある方たちなのだろうと思っていたが、予想以上だった。
元受刑者の方おふたりは、きっとプログラムで何度も何度も自分と向き合って、見たくないものまでしっかりみつめて言葉にしてきたのだろう。
自分の思い込みとか、いろいろ恥ずか -
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映画『プリズン・サークル』の監督、坂上香さん著。妻の実家近くで立ち寄ったオシャレ独立書店が本書を題材に読書会を開くとのことで気になって購入。坂上さん、10代の4人、そしてプリズンサークルにも出てきた元加害者、元被害者など複数名が一同に介して成された会話を纏めたもの(本書は「あいだで考える」シリーズという企画の1冊だそうだが他の作品もどれも面白そう)。
どの章も良かったが、元加害者である翔さん(仮名)の回にただただ圧倒された。
翔さんは未成年の頃、身内を犯された復讐で10代の若者を殺してしまい、少年刑務所に8年収容された過去がある。映画では自らの感情を出さなかったとあるが、本書では自分が何故 -
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本当に以前犯罪を犯した人と本物の被害者が話し合う1人として参加することで、ヒリヒリするような緊張も生まれるが、同時に「事実である」強さを感じ、深い理解に繋がっていく。
・加害者は過去に被害者であったことが多い。
・受刑者が自分の感情に気づくTCがもっと広がってほしい。
・加害者と被害者が対話できる「修復的司法」が広がってほしい。2023年度から始まったらしい制度(刑務所や少年院の職員を媒介するもの)がその第一歩になればいい。
「根っからの悪人にさせない方法は、ある気がする。その余地は全然ある。」という一文、いいなぁ。
「あいだで考える」シリーズの本気さがよく分かった。 -
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受刑者が自らの生い立ちや犯罪について語り合う刑務所での更生プログラムを映したドキュメンタリー映画『プリズンサークル』。そのプロデューサーが10代の若者と、映画に出演した加害者、被害者たちを集めて行ったワークショップの記録である。
万引きをやめられない青年。友人のために人を殺してしまった青年。中学生によるバスジャック事件で友人を殺害され、自らも重症を負った女性。それぞれの話は、今まで思っていた「加害者」「被害者」のイメージとは全く違っていて、犯罪というもののイメージが変わるものだった。
犯罪を犯してしまった二人に共通していた、自分は悪いことをしたのだから、誰にも話を聞いてもらえないという感覚を