舞台は福島県郡山市。
福島、、、、となると、タイトルとあいまって震災が題材かなと思った。ピアノを弾く少女が表紙なので、あの「奇跡のピアノ」かな、と思った。
ダイビングシーンがプロローグにあるので、
震災で沈んだものを連想して、なおさらそう思った。(震災の物語、ではなかった)
2022年、今年の夏の高
...続きを読む校野球。ベスト4まで勝ち進んだ聖光学院の野球部が実名で出てくる。
主人公八雲の母が、塩化病という難病にかかってしまうところから物語は始まっていく。
震災や聖光学院、太宰治の『トカトントン』や、
ショパンコンクール、ワルシャワ侵攻、という本物が出てくるので、塩化病がなんかポーンと突き抜けた不思議な感覚だった。
天才ピアニストの揺月との出会いと成長。
母を失い、心のよりどころを揺月に見出していく八雲。揺月もまた、八雲は心の支えだったようで。。。その後イタリアに留学した揺月は、塩化病になってしまう。。
私としては、清水のエピソードと、ポーランドワルシャワ(ショパンの物語)がいいなと思った。
軽さと軽やかさの違い、という文章があって、
揺月の魂は軽やかだけど軽くはない、と書かれていた。なるほどなと思った。
たまたま重なってしまったのだろうが、
戦禍のワルシャワは現在のウクライナを思わせ、
さらに聖光学院が出てくるので、それら「現在」と
震災という「少し前の過去」が、実生活の時間の経過という妙なリアリティを持って、
病でも戦でも災でも、愛するもの(人も街も、腕や足も)が失われるということ、を私に突きつける気がした。それらを何か別のことに利用する是非も。
ただ、あちこちに小さな違和感があって、ん?と、ひっかかると、スッと引き戻される気がした。
たとえば、母を失ってひとりになった小3の八雲が
ひとり暮らしをしてる違和感。これは父のところに行くか施設に入るとこだよなと思ってしまう。
(児童相談所に保護される案件だわ)
揺月を失って家に引きこもるにも、大量の食料を買い込んでいるところも違和感。
憔悴してたら食べることなんて考えないと思うが、、、と思ってしまった。
連絡がつかなかったら心配して家に来そうなものなのに、2年もの間、清水も父さえも来ないのかという違和感。とか。。
ともあれ、読んでいてピアノの調べが聴こえる気がしたし、
あの義手や義足は本当に出来ればいいなと思うし、
揺月のビデオはすてきだった。ラストで初めてタイトルの意味がわかった。
リアルとファンタジーを合わせた「濃い」物語だった。