和泉悠のレビュー一覧
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よくないもの、と思いながらもなんだかぼんやりとしたまま付き合い続けている「悪口」というものを、冷静ながらフレンドリーな語りで解き明かしていくとても読みやすい本でした。
日々当たり前に生きすぎていて、いくつかの概念が混合しているという指摘に、おおっとなりました。
悪口を言う者と言われる者がいますが、世の中の圧倒的多数の人は、悪口を聞く第三者にあたると思います。
面倒くさがらず(?)いちいち「そんなことを言ったらダメよ」と言うという行為が、同じコミュニティで生きていかなければならない者としての責任ですね。
そういった「悪口」に頼らずに人とコミュニケーションをするためにも、教養というものは持っ -
Posted by ブクログ
悪口は、その人たちが共有している存在のランキングから、その対象のランクを下げて貶める行為である。
「悪口じゃないよ、意見だよ」
「率直な批評だよ。」
「冗談だよ」
なんと言われようと、そこにランクを貶める効果がある以上、それは悪口だし、受けた側は不快に感じるものなのだ。
腑に落ちた。
私がなぜ、悪口を言いたくないのか、なぜ、人から言われたくないと恐れているのかも、納得できた。
自分のなかに、人の優劣をつける存在ランキングが常にあって、自分がそのランキングのどこにいるのかが気になり、貶められたくないと感じている。
だから、他人の評価を気にして、悪口言われてないかが気になる。
貶められてい -
Posted by ブクログ
「『悪い言語』哲学入門」であり「悪い(=あくまで正統的でない、という意味で)『言語哲学入門』」でもある本。
言語哲学については、言語行為論をはじめいくつか目を通したことがあったが、それら、「言語哲学」の中でいくつか出てくる理論(けして奇をてらったものではなく、言語哲学のなかではかなりベーシックなものだ)を総ざらいしつつ、それらの理論が「ヘイトスピーチ」など、現代社会における発言・言語をめぐる問題にいかにインパクトをもたらすかまで論じられており、単純に面白い。「言語を哲学する」という営為が、たしかに、私たちの日常を変え、社会問題を考える際の切り口を提供することを実感させてくれる本。
そして個人 -
Posted by ブクログ
言葉のもつ表の意味と裏の意味を知った。この分野は語用論という。実際の言葉の形から、ではどういう意味をもつのかを研究する。
京都の人が「えらいいうまい演奏ですなあ」といった場合、それは演奏を誉めているのではなく、うるさいからピアノを引くのをやめろ、という含みをもつ。このように言葉にはその言葉の裏にある「含み」をもつものがある。
自分は正面から言葉の意味を受け取ってしまうタイプである。この本のなかで言葉の表の意味と裏の意味を取り上げている中で、裏の意味がすぐにわからないことが多々あった。
言語行為論
言葉を発するのは純粋な情報伝達手段だけではなく、行為のひとつである。これを言語行為論という。
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Posted by ブクログ
悪口を例にした言語哲学の入門。
「なぜ悪口は悪いのか?」
「そしてときどき悪くないのか?」
「どうしてあれがよくてこれがダメなのか?」
こうした問い、ある表現や言葉が悪くなったり悪くなくなったりする原理を、言語哲学の概念を使いながら解き明かしてくれる。(あまりよいことではないが)悪口は、軽いものから重いものまで、身の周りに溢れているので、実感を持って難しい哲学的な概念についても理解することができるし、そうした概念を通して身の周りの悪口についての理解も深まるので、とても面白い。より専門的に勉強したい人向けに、巻末にブックガイドもある。
おわりにまとめてある「あるべきでない序列関係・上下関係