【感想・ネタバレ】悪い言語哲学入門のレビュー

あらすじ

「あんたバカぁ?」「このタコが!」「だって女/男の子だもん」。私たちが何気なく使う言葉にも、悪い言葉がたくさん潜んでいる。では、その言葉は本当はどこが悪いのか? さらには、どうしてあの言葉はよくてこれはダメなのか? 議論がつきない言葉の善悪の問題を哲学、言語学の観点から解き明かす。読み終えると「ことば」への見方が変わるはず。

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Posted by ブクログ

言語哲学について知らなかったので、目から鱗の一冊。(言葉」に関心がある人は持っておくべきと思った。

哲学というので小難しかったり、抽象的な話なのかと思えば、さにあらず。
具体的な言葉の運用で、どう解釈すべきかという大問題にさらっと切り込んでくれる。
言語学で意味論というのがあるが、あんまり意味について説明してくれていなかった不満があった。この本を読んで自分が知りたかったのは言語哲学だったというのがよくわかりました。

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2025年07月07日

Posted by ブクログ

川添愛さんの著書で紹介されていたので購入。
本書もそうだが、連鎖的な読書にはハズレがない。
専門用語は多数出てくるものの、導入が丁寧なので抵抗感はない。身近な「悪い言葉」が題材であり、実例も豊富で最後まで興味深く読めた。
悪口がなぜ悪いのか、悪口が悪口たる条件等いくつかの問いに明快な回答が示されている点も良い。
愛情を込めた「馬鹿だな」が、悪口にならない理由が論理的に説明できるようになります。

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2024年11月27日

Posted by ブクログ

「『悪い言語』哲学入門」であり「悪い(=あくまで正統的でない、という意味で)『言語哲学入門』」でもある本。
言語哲学については、言語行為論をはじめいくつか目を通したことがあったが、それら、「言語哲学」の中でいくつか出てくる理論(けして奇をてらったものではなく、言語哲学のなかではかなりベーシックなものだ)を総ざらいしつつ、それらの理論が「ヘイトスピーチ」など、現代社会における発言・言語をめぐる問題にいかにインパクトをもたらすかまで論じられており、単純に面白い。「言語を哲学する」という営為が、たしかに、私たちの日常を変え、社会問題を考える際の切り口を提供することを実感させてくれる本。

そして個人的には、言語哲学における固有名論争を理解するさいに、『とってもラッキーマン』の知識が非常に有用だということを示してくださった点が、素晴らしいと思いました。

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2022年06月08日

Posted by ブクログ

言葉のもつ表の意味と裏の意味を知った。この分野は語用論という。実際の言葉の形から、ではどういう意味をもつのかを研究する。
京都の人が「えらいいうまい演奏ですなあ」といった場合、それは演奏を誉めているのではなく、うるさいからピアノを引くのをやめろ、という含みをもつ。このように言葉にはその言葉の裏にある「含み」をもつものがある。
自分は正面から言葉の意味を受け取ってしまうタイプである。この本のなかで言葉の表の意味と裏の意味を取り上げている中で、裏の意味がすぐにわからないことが多々あった。

言語行為論
言葉を発するのは純粋な情報伝達手段だけではなく、行為のひとつである。これを言語行為論という。

(1) 掃除は一年担当だよ(先輩が一年生に向かって)

この場合、文の意味は掃除をするのは一年生であるという真理的条件文(真か偽が導ける文)であるが、その含みは「お前が掃除しろよ」である。
この言葉は相手にこういう行動をとれと命令している行為なのだ。

ヘイトスピーチの章で、いわゆる「言葉狩り」を批判している。
差別的な歴史をもつ言葉の使用により共有基盤(両者が了解している前提条件)がアップデートされる。特定の社会集団の序列・ランキングを下げる効果がある。「お前タバコやめたんだ」という言葉にはタバコを吸っていたという前提条件が含まれる。このようにいうことで暗黙のうちに共有基盤がタバコを吸っていたという事実があったとしてアップデートされる。
そういった言葉の使用は憎悪のもとであり使用の禁止を検討すべきである、という。

私は言葉狩りには反対の立場であった。なぜなら言葉というのは、今ここに記している通り、自分の考えを伝えるものであり書き留めていく技術なのである。
その言葉を制限されるのは自分の思考・表現を制限されるようで、かなりの苦痛である。
それを踏まえて言葉狩りには反対の立場であったが、言語行為論を知り発話は行為ならば、集団を傷つける言葉は暴力行為になる。そうならば規制されて当然だろう。

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2022年03月24日

Posted by ブクログ

悪口という切り口から言語にまつわる理論を紹介する本で、長ければ順番を変えたり飛ばしたりして読んでもいいよ、と書かれていますが、
最後のヘイトスピーチの論考に必要な要素を順に導入していき、最後に回収するという作りになっているので、そこは順序を守って読むのが良さそうです。

悪口がなぜ悪口として機能するのか。
ヘイトスピーチがなぜ悪くて、なぜそこでは表現の自由が認められないのか。
禁句がなぜ必要になるのか。
言語素人ながら言語でコミュニケーションを取らざるを得ない我々が知っておくべき教養だと感じました。

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2024年10月30日

Posted by ブクログ

悪口を例にした言語哲学の入門。

「なぜ悪口は悪いのか?」
「そしてときどき悪くないのか?」
「どうしてあれがよくてこれがダメなのか?」

こうした問い、ある表現や言葉が悪くなったり悪くなくなったりする原理を、言語哲学の概念を使いながら解き明かしてくれる。(あまりよいことではないが)悪口は、軽いものから重いものまで、身の周りに溢れているので、実感を持って難しい哲学的な概念についても理解することができるし、そうした概念を通して身の周りの悪口についての理解も深まるので、とても面白い。より専門的に勉強したい人向けに、巻末にブックガイドもある。

おわりにまとめてある「あるべきでない序列関係・上下関係を作り出したり、維持したりするから」悪口は悪いのだという結論が、個人的にはすっきりとして納得のいく答えだった。
つい先日、中学生の女の子が「顔面土砂崩れ」というあだ名をつけられたのだが、本人的には嫌ではないから別にいいと言っていたことを読んでいて思い出した。よく「いじり」と「いじめ」の境目は何かといった話があるが、こうしたときに、本人が良ければいいじゃないかという意見は、よく見かけるように思う。「顔面土砂崩れ」と呼ばれた彼女も、自分はいいと言っているが、この本のまとめから考えると、やっぱりだめなんじゃないかと思う。
著者の結論から言えば、彼女が、それを自分は別に気にしないからという理由で認めてしまえば、そこに「あるべきでない序列関係」がおそらく生まれる。だから、これは「悪い」のだと言える。
たとえ彼女がよかったとしても、それを許してくれる女の子が一人いたということが、言ってもいいことなんだという事例を作ってしまう。この本7章と8章では、名詞化とヘイトスピーチがテーマになっているが、やがて、そうした事例は、クラスの中で「女の子」という集団を下に見ていいという雰囲気を作りかねないのかもしれない。
あだ名や悪口は、ただ単純に本人の気持ちの問題ではなく、やはり、口にされた言葉が何をもたらすのかから評価されなくてはいけないということを改めて思った。

著者も言っていることだけれども、言語哲学という分野に興味のある人が入門するための本としても、もっと直接的に「悪口」と呼ばれる表現にモヤモヤを持っている人が「悪口」について考えるきっかけにする本としても読める。そして、ここで言われている問題は、上の自分の体験のように、誰にとっても心当たりのある、切実な問題なのではないかと思う。
そんな言葉の問題について一度でも切実に考えようと思う人には、十分おすすめできるいい本だった。

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2024年07月27日

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第8章のヘイトスピーチに関する議論をするため、それまでの章で言語哲学的道具立てを整えている。そんな作りの本。第3-4章辺りがややハード。言語学を学ぶモチベーションのある学生さんには良い本かもしれない。第8章については、なるほどと思った。

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2023年10月10日

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本書の主題は、「悪口はなぜ悪いのか」と「どうして場合によるのか」ということである。本格的な議論の道具立ての導入も丁寧だし、語口調も面白い。それでも、難解な部分が残るのは、言語に関わる行為を真正面から捉えることの難しさが関わっているのだろう。逆に言えば、本書が随分とハードルを下げてくれている部分は多いので、語用論の良い入門書でもあると思う。
第7章の総称文については、主語の大きさ問題を考える上では興味深いし、第8章のヘイトスピーチも現代的な問題として重要。これら終盤の2章までしっかり読んで欲しい。

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2023年07月16日

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ネタバレ

虫や獣に例える悪口はランクづけのために行うというのはなるほどなぁと思った
タイトル自体がいろいろ分岐できるようにしてあるのは面白い

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2022年08月20日

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あだな、悪口、嘘、ヘイトスピーチ。
こういった邪悪な言語使用がもとで命を落とす人もいる。
本書はそれらに立ち向かうためにまずはどのように理論的に分析されるのかを解いていく。
新書としては貴重な本だと思う。

前半は、分析のために使用する言語学、言語哲学の概念が紹介される。
タイプとトークン。
意味はどこに存在するか。
意味の機能的側面(真理条件的内容、前提的内容、使用条件的内容、会話の含み)。
確定記述。
言語行為論(発語行為/発語内行為/発語媒介行為)。
扱われている概念の広がりを見ると、なるほど、本書が「入門書」を名乗ることがわかる。

筆者によるとヘイトスピーチは、権力を持った者がある集団を不当に低くランク付けするところに問題の根源があるという。
そして、「ヘイトスピーチ」という語の用法に、単に憎悪を表現したものと矮小化したものがあるとも指摘されていた。
この問題について、自分がいかに考えていなかったのか気づかされる。

とはいえ、上に列記したような概念を、一応頭に入れて読み進めることになる。
例をたくさん挙げ、語り口も少しくだけているので、読みやすいと言えば読みやすいけれど、やはりある程度下地がないと、ちょっと厳しい。

総称文のところを読んでいて、以前読みかけて放り出している飯田隆『日本語の論理』が何を問題にしようとしていたか、ちょっとだけわかった。
この本を手掛かりに、積読状態になっていた本が読めるようになるかもしれない。

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2022年07月09日

Posted by ブクログ

「悪い」言語「哲学」。それはまたどういうことだろう?タイトルにひかれて読んだら、とても興味深い内容で、日頃モヤモヤしていることの霧が晴れた気がした。

恥ずかしながら、言語哲学という学問分野があることを、これまで知らなかった。筆者は「言語のダークサイドに立ち向かう際に、言語哲学が必ず役に立ちます」と言う。言語学は「こうなっている」と事実関係を明らかにするが、そこに、歴史的にものごとの善悪について考えるための道具を提供してきた哲学をプラスすることで、「これはよくない」「こうすべきだ」というような、価値についての判断にまで到達することができるのだ、と。なるほど~。

具体的に取り上げられているのは、悪口や嘘、デカイ主語、ヘイトスピーチなど。どれも切り口が新鮮で、とても面白かった。「入門」とある通り、学問的探求の入口を示す程度にとどめてあるので読みやすく、同時に、重ねられてきた研究の成果としての信頼感があると思った。以下は覚え書き。


・ことばの評価はタイプ単位ではなく、トークン単位で行うべきもの。どんな場で、どんな文脈で使われたかで、同じことばが違う意味を持つ。

・「言語行為」という考え方。あることを言うことそのものが行為である。「○○とは言ったけどからかったりしていない」という言い訳はできない。

・「ことばは情報伝達の道具」という考え方の誤り。誹謗中傷をしながら「本当のことを言っているだけ」という場合、単に情報(本当のこと)を伝えたいだけではないはずで、これも言語行為。

・悪口や不適切な発言があったとき、単にどの表現タイプを使った、使ってないということだけに注意をそらされてはいけない。また、「どういうつもりだったか」という答えの出しようのない問いは煙幕となる。

・総称文(「男は~だ」「日本人は~だ」)は、単に「そうでない人もいるからよくない」のではなく、その集団が「本質的に」その性質を備えていると主張し、ステレオタイプや偏見を表明している可能性があるから、そのことに自覚的になるべき。

・哲学者のミルによる言論の自由擁護の論証では、真か偽となる「意見」を提示する自由が擁護される。意見の提示ではない加害行為を、言論と見なして擁護する必要はない。

・哲学者のヒラリー・パトナムの言葉。「ことばを一種の道具と見なすとしても、それがハンマーやねじ回しのような一人で使う道具ばかりでなく、複数の人間が関わる蒸気船のようなものである可能性も考慮しなければならない」

・敬語などが持つ含意を私たちは自由に決められない。差別的語彙が持つ含意も、私たちは自由に決められない。
「差別的発言が、同列に位置づけられるべき集団を低くランクづけするような効果を持つならば、それは話者の意図と無関係に何らかの制裁の対象となるべきでしょう。本当のところは、深層心理では、差別的意識がないとかあるとか、そういったことは、表現の公共的使用とは無関係なのです」

・「ヘイトスピーチの可能な規制や、人権を侵害する言語使用を批判するとき、私たちは蒸気船やタンカーの造船技術・運行規制・免許制度などについて話をしているわけです。『タンカーの操縦に規則なんかいらない、大事なのは安全に運転しようとするそれぞれの意識だ。ほっといてくれ』などと言われて納得する人はいないでしょう。ところが、言語については、『ことばよりも個人の意識が大事だ』のような見解がしばしば提示されます。少なくとも、私たちは、言語がときとして、大事故を引き起こすタンカーや航空機のように、人を傷つけ、社会を壊すことがあることを忘れてはならないでしょう」


以前テレビで、民族学校に街宣車が乗りつけ、「○○を叩き出せ!」「○○を殺せ!」と大音量で叫び、学校のなかにいた子どもたちが「怖い-」と泣いてるのを見た。憤りで体が震えた(本当に)。このとき以来、「ヘイトスピーチ」は「ヘイト」でも「スピーチ」でもないと思っている。恫喝や脅迫は犯罪だし、あれは絶対に「スピーチ」なんてものではない。「言論」が尊重されるのは権力に対するときであり、「何を言ってもいい」わけではない。本書のような論考はとても大事だと思うけど、現実には、そんなもの屁とも思わない人たちがたくさんいることを思うと、もどかしくてたまらなくなる。

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2022年05月01日

Posted by ブクログ

悪口とはなんなのか?に興味を持ち読み始める。また事実だから言っても良い論法の人に出会ったため、上手く何故それが悪いかを説明するためのヒントが無いか探そうという目的での読書。
図があるともっと入りやすかったかも…
読み終えた感想
「ヤツの尻尾を掴んだぞ!」

例や説明に使うモノが古く(結構重要な役割を持つラッキーマンはまだいいけど横山ホットブラザーズはちょっと…)著者のプロフィールを見て納得、自分よりちょい上の方でした。
それも含めて面白かった。
読み終えたけど、再度要素だけ抜き出して図示しておくことにする。

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2022年04月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

一般の人の声(偏見というかほぼ私)、筆者の声、ナレーション(私の声)の3視点構成で解説してみようと思う。

一言でいうと、悪い言語=悪口について言語哲学的に考えてみましょう!という本。
まずタイトルからして、一般の人から突っ込みが入る。

一般の人「でたでた専門用語。『言語哲学』とか分けわからんこと言っちゃって。学者さんは、簡単なことでも無理に小難しくしちゃうから困っちゃうよ。私たち、日本語普段から使ってるし、日本語の専門家みたいなもんでしょ。悪口についても、言語哲学?なんか学ばなくても理解できてるし。」

著者「では、聞きますが、そもそも悪口って、いったい何ですか?」

一般の人「簡単簡単、悪口=人を傷つける言葉でしょ?」

筆者「確かに間違ってはいないですが、不十分です。『人を傷つける言葉』であることは、『悪口』であることの必要条件ではないし、十分条件でもありません。」

〇人を傷つける言葉 ↚ 悪口
まず、『人を傷つける言葉』であることは、『悪口』であることの、必要条件ではないということ。日常語に言い換えると、『悪口』がいつも必ず『人傷つける言葉』ではないということを、一般的な感覚で捉えるために、次の例え話を紹介している。尚、これはあくまで理解を促進することだけを目的とした「お話し」に過ぎず、結論の正当性を強化する根拠ではないことに注意したい。この「お話し」を、根拠だと勘違いして反論することはいくらでもできる。しかしそんなことをしても得られるものは何もなく、時間を無駄にするだけなのでやめよう。

例え話:メンタル最強浅草さん
浅草さんはどんな悪口を言っても絶対に傷つかない人です。そんな彼のもとに、性格が悪いAさんがやってきて、言いたいこと(お前は下の下の人間だ。死んだ方がよい。生きてる価値なし。自殺しちゃえ、などなど)を好き勝手にいいます。しかし、浅草さんは全く傷つきませんでした。

筆者:「この場合、Aさんが言ったことは、浅草さんを傷つけていません。『人を傷つける言葉』が『悪口』の必要条件であれば、Aさんが言ったことは、悪口ではない、ということになります。しかし、みなさんの大半はそう思わないはずです。つまり一般の感覚的な理解においても、『人を傷つける言葉』であることは、『悪口』であることの、必要条件ではないのです。」

〇人を傷つける言葉 ↛ 悪口
次に、『人を傷つける言葉』であることは、『悪口』であることの、十分条件ではないということ。日常語に言い換えると、『人傷つける言葉』がいつも必ず『悪口』ではないということを、一般的な感覚で捉えるために、次の例え話を紹介する(著者のが微妙だったので自作)。

例え話:可愛い恐怖症のウサギちゃん
ウサギちゃんは、可愛いという単語を聞くとトラウマを連想して必ず傷ついてしまいます。そんなことを知らないBさんがウサギちゃんの容姿を褒めようと「可愛いね!」と言いました。その言葉に傷ついたウサギちゃんは、泣き出してしまいました。

筆者「この場合、Bさんが言ったことは、ウサギちゃんを傷つけました。『人を傷つける言葉』であることは、『悪口』であることの、十分条件だとすると、Bさんの言った『可愛い!』は悪口だということになります。しかし、みなさんそうはおもいませんよね。なので、感覚的にも『人を傷つける言葉』であることは、『悪口』であることの、十分条件ではないのです」

筆者「以上より、『人を傷つける言葉』であることは、『悪口』であることの必要条件ではないし、十分条件でもない、ということに納得して頂けましたでしょうか。納得といっても、あくまで感覚的な範囲内での話ですが。」

一般の人「ふんわりとは分かったけど、じゃあどうすんだよ? 何が悪口の必要十分条件なのか、どうやって見分ければいいんだよ?」

筆者「言語哲学という道具を使えばいいのです。悪口について考えるとき、まずは言葉の中身がどうゆう構造になっているのか、考える必要があります。その時に、役に立つ道具が『言語学』です。次に、なぜその構造だと悪いのか、も考える必要があります。その時に役に立つ道具が『哲学』です。だから、悪口について考える時には、言語学と哲学をくっつけた『言語哲学』という道具を使うことが有効です。」

以上が一章までの内容。

しかし、道具を使うためには、その道具に対して、仕様や使い方を知っておく必要がある。その道具(言語哲学)について、実践を交えて浅く広く解説しているのが、二章―八章(予測)。この部分に関しては専門的な話が多く、整理も理解もできてないので省略(理解でき次第追記する予定)。

終わり部分を先に書いておく。

筆者の結論「『平等の理念上あるべきでない、序列関係、上下関係を作り出したり、維持したりする機能(構造?)をもつ言葉』であることが、『悪口』の必要十分条件である。」

しかし、本書の最も大事なことは、上の筆者の結論に納得することではない。大事なポイントは以下の2点。
①本書で学んだ言語哲学という道具を使って、悪口の必要十分条件を自分の言葉で、設定できること。

②①で設定した、条件を基準に、実生活で悪口かどうか疑わしい事例について、判断できるようになること。具体例としては、アスカがシンジに言い放った「あんたバカぁ?」は悪口なのか、悪口じゃないのか。また、最近三男である私が母に言われた「三男は長女より下」は悪口なのか、どうなのか、などなど。

感想
まだ軽くしか読んでないが、全く興味がなかった言語哲学に興味がわいてくる、面白い本だった。もっと言語哲学を学びたい人向けの、ブックガイドもついているので、入門書として当たりなのでは。

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2022年04月12日

Posted by ブクログ

悪口について知りたいと思い、読みました。著者の『悪口ってなんだろう』のほうが、知りたかったことに近かったかなと思いました。こちらはもっと哲学的というか学術的な感じがするというか……まあタイトルにも「哲学」とあるので……。

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2025年10月19日

Posted by ブクログ

悪口、悪い言葉について様々な角度から提示している。
読者と会話しているような文章や難しすぎない表現が多く、題名通り"哲学入門"というような本。読みなれない自分にもわかりやすく感じた。
何事にも疑問をもち考えることの大切さや面白さを学んだので、こういった書籍を今後も読んでいきたいと思えた。

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2025年09月23日

Posted by ブクログ

ゆる言語学ラジオに出演してた著者の話に興味を持って読んでみた。悪口に関する様々なトピックを言語哲学視点から取り上げており、どの章から読んでもよいと最初に書かれているとおり話の繋がりはあまりない。軽いノリのカジュアルな話題から入って言語学の話(意味論、言語行為論、ランキング、固有名等々)に繋がって「へー」「なるほど」と盛り上がって「それから、それから...」ともっと深く知りたいと思ったところで章が終わって別の話題になってしまう感じなのが残念。なので、最後に深く知りたい場合のブックガイドが乗っているだけど、もう少し話題を絞ってこの本で学びたかったなあ。

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2025年07月04日

Posted by ブクログ

何で見たのだったか、本書の言及があって、悪口についてやヘイトスピーチ、誤誘導等にちょっと興味が湧いて読んでみた。
最初は読みやすかったのだけど、だんだんやっぱり哲学的な話になり、すっごく集中してないとスッと頭に入ってこないような箇所も出てきて、飽きてしまった。
言葉にはそれ自体に差別的な意味が内包されていて、話者がどれほど「そんなつもりはない」と言ったところで、聞き手にそのように受け取られてしまうことはどうすることもできない、というのを読み、やっぱり言葉はかなり暴力的だよなーと自戒の念をこめて再確認した次第。
時間ができたら、もう一度しっかり読み直したいかなあ。

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2025年06月22日

Posted by ブクログ

悪口はどうして悪いのか。
同じ言葉なのに、なぜ友達と「バカ」と言い合えば仲むつまじく、職場で「バカ」と言い合えば問題なのか。その理由が解説されている。

3章あたり理解が追いつかなかったが、上記にある本書の結論が知れただけでもためになった。語用論が気になったので次はそのあたりを読んでみようかな。

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2024年12月08日

Posted by ブクログ

「悪い言葉」ってのは確かにある。
では、なぜその言葉は悪い言葉とされるのか?その理由を解き明かしていく。
単に言語学だけでなく、哲学的要素が入ってくると、とたんに頭が痛くなってくる。統語論、意味論、語用論で解説されても簡単にはついていけない。でも注意すべきポイントは理解できるよね。

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2024年11月09日

Posted by ブクログ

「なぜ悪口は悪いのか」を切り口に、意味の外在主義とか言語行為論とかを噛み砕いて紹介してくれる本。読み易くしよう、かつ言語哲学の楽しさを伝えよう、という熱意が感じられた。
Jap呼びは「真理条件的内容としては同等だが、使用条件的内容として集団的な序列関係が組み込まれている」から差別語になるのだね

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2024年10月17日

Posted by ブクログ

悪口、嘘、ヘイトスピーチなどの「悪い」言語使用に焦点を当てた言語哲学入門。
挑戦的で面白い試みだと思ったが、読み終えて、言語哲学の入門書としても、悪口やヘイトスピーチなど「悪い」言語使用の分析としても、ちょっと中途半端だったかなという印象を否めなかった。個々の記述には興味深いものが少なくなく、特に、悪口やヘイトスピーチの本質は自分より低くランクづけをすることという本書の指摘には納得感があった。

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2023年09月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

言語哲学を通してヘイトスピーチがなぜ悪いのかを説く本。
言語哲学の話と悪口の話をしながらヘイトスピーチの問題に収斂していく。
言語哲学なら言語哲学、罵詈雑言なら罵詈雑言の本、ヘイトスピーチならそのヘイトスピーチの現象や経緯と焦点を絞って一冊にしてくれたらわかりやすかったと思う。
言語哲学が専門なせいでしょうが、悪口の分析のあと、言語の話になり、そしてヘイトスピーチの話になり、あまり展開に一貫性がないように感じられました。
 それでも1章、1章独立して読めばそれなりに面白い話ではありました。
 ヘイトスピーチはよくないと私も思いますが、ヘイトスピーチをおこなう人はそれなりにヘイトスピーチをするに至った悲しい社会的抑圧を感じているのだと想像しています。その抑圧をいかに取り除くかあるいは抑圧と共存しながらヘイトスピーチをしないようにどうもっていくか社会的課題としてわたしたちに突きつけられていると思っています。
 その考えると、言語運用上ヘイトスピーチは社会的に害だと分析されても、問題の解決には遠いようにか思うのです。
 数学の勉強はそこそこしてきましたがフレーゲは知りませんでした。

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2022年06月01日

Posted by ブクログ

悪口は人を傷つけ、また、人にも嫌われる。これだけで悪口を言わない理由としては十分だと思う。
ただ、それだけではなく、悪口には、真偽とは関係なく相手のランクをさげることに繋がると。なるほど、その通りだと思った。言葉には公共性があり、行為としての責任も伴うとは思っていたが。

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2022年05月13日

Posted by ブクログ

面白い!けど眠くなるw
本来平等であるはずの人間にランクをつけてモノを言う事が悪口。言葉はタンカーのように大きなもの、個人の意図や感覚で好き勝手されたらみんなに迷惑。この2点すっきりした

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2022年04月10日

Posted by ブクログ

帯に書いてある、「どこまでがセーフで、どこからがダメなのか」ということに興味を持ち、久しぶりに衝動買いをした。入門編というタイトルの割に、私にとっては少し難解に感じ、理解できたかというと自信はない。言葉というのは、捉えることが難しく、AIでもなかなか追いついて来られない領域ではあると思うが、素人ながら、ここまで深く考える必要があるのかと疑問に思った。

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2022年04月06日

Posted by ブクログ

あまりにも多くの言説が流布するこの時代において、いわゆる”悪口”ーヘイトスピーチなどのように極めて現代的なものも含めーの流布もエスカレートしているように感じられる。では”悪口”とは何なのか?、どこまでがセーフでどこからがグレーなのか、などシンプルな疑問を言語哲学の理論を元に明らかにして、言語哲学という学問の面白さを知ってほしい、という著者の思いからまとめられた新書。

紹介される理論は、意味の外在論・内在論や言語行為論(Speech Act)などかなりソリッドなものであるが、著者特有の非常にユーモラスかつ難解な概念もシンプルになるべく伝えようという姿勢も相まって楽しく読み進めることができる。そして、”悪口”を糾弾されたときに往々にして言い訳として使われる「いや、そういうつもりはなかったんです」という言明が、言語哲学の理論を用いることでなぜナンセンスなのか、など、一種の学問の実践ともいえる知的な面白さがある。

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2022年03月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトル勝ち。悪口の言語哲学じゃ売れないよね。基礎概念を一通り追っかけることができる。ダークサイドというほどダークかというと、そこはそれ。よくできた入門書。これ読んでから教科書読むとか、そういう感じ。

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2022年03月23日

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