永井みみのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ介護の問題について検討する話だと思ったが、そうでもあるけれども、泣きそうな物語である。余韻が残る小説である。
物語は、一人称の「あたし」すなわちカケイさんがヘルパーのみっちゃんに滔々とまくし立てるシーンから始まる。饒舌といっていいほどの雑談と、ひらがなが長く続く文は、最初は少し読みにくかったが、その少々脈絡の乱れる独り言のなかに、カケイさんの波乱万丈の過去が少しずつ浮かび上がってくる。そして現実に戻ると、家族の過酷な接し方などを見て、その無力さが鮮明に描かれている。
では、カケイさんは、しあわせだと思うのか。
全編を通して、涙を誘うところは二つある。まず、前半を読んでいながらずっと疑問を -
Posted by ブクログ
ネタバレ2025のナツイチクリアしおりが欲しくて購入。ナツイチがなかったらたぶん読むこともなかったろうなあ。とてもおもしろかったです。
認知症で施設に預けられている老女、カケイさん。
過去のことははっきり憶えているが、最近のことは日付すら分からない彼女のすがたを、主体と客体が入り交じる文体で描写する。しっかり過去を回想していたかと思えば、「あい」「しりましぇん」と気の抜けた返事をする自分をどこか他人事のように見ている箇所もあり、もしかすると認知症の人の自己認識はこういうものなのかもしれないと思った。実際のところは知らんけど。
解説にもあったが、カケイさんのように介護が必要になった高齢者は、それまで -
Posted by ブクログ
なんの事前情報もなく読み始めて、読みやすくてさらさら読めてしまった。
でもなんというか、作品のリズムがちゃんとあるんですよね。
ゆっくり、まったり、思考が忙しくないのに、読んでて退屈はしないという不思議。
言ってしまえば、介護が必要になった認知症のおばあちゃんの一人語りなのですが、生きていてずっと覚えている人生の後悔だったり、死期が近づいて周りの人間も死んでいく中で初めて知る事実があったり、死に際のことだったり。
老いて死んでいくということが、必ずしもみじめだったり怖かったりするものではないのかもしれないな、と思わせてくれる作品でした。