村上茂久のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレこんなにもストレスなく財務会計領域の知に触れられた経験は初めてである。
企業分析に向けて、財務情報・非財務情報の調理の仕方を正しく理解し、実践するための術を学び、新たな視野視座視点をもたらしてくれる良書。
財務会計領域の書籍は、専門用語が多く、前提知識がないと理解が困難なものが多い。あるいは、意味は分かったとしても、具体的にそれがビジネスの現場でどのように役立つのかは押さえきれず、読んでも自分の血肉へとつながらないケースが多い。
その点、本書は、初学者を置き去りにすることなく、各用語の意味は何なのか、その情報から分析者は何を把握できるか、具体的に企業の事例の落とし込むと各指標を比較することで何を掴めるのか、といった要点が丁寧かつ論理的に記されており、読むことにストレスを感じないどころか、読み進めるたびに知的好奇心が駆り立てられる。
また、本書の中には、各企業の一次情報をもとに筆者がまとめた図表が多く掲載されている。これらの図表は、ポイントが非常に簡潔かつ見やすくまとめられており、読者に対し理解促進の役割のみならず、実務において煩雑なデータを他者へわかりやすく伝える術を教えてくれる。
全体としては、全10章、411ページから成り、一見分量が多い書籍と感じるかもしれないが、上述のわかりやすさに加え、各章のページ数が適切な情報量に調整されているため、1日1、2章は無理なく読むことができるので安心してほしい。
そして、タイトルに「ビジネスモデルを視る技術」と記されているように、各企業の事例では、ビジネスモデルにまで踏み込んだ内容がまとめられている。それらからは、あらゆる業界・企業の特性や、モデルの特徴のみならず「聞いたことはあるが、何を意味するかは知らない」といったようなビジネス用語も幅広く学ぶことができ、非常に有意義である。
本書の筆者は、「自分で考えるという部分が欠落すると、教科書を暗記し、練習問題を黙々と解くという、単なる高等教育の消費者に終わってしまいます。」という大学院講師の言葉に衝撃を受けた経験から、「知の生産者」になることをモチベーションにされている。私は本書を読み進める中で、堅苦しい印象を抱いていた会計・ファイナンス領域の本を、なぜ自分が好奇心を絶やすことなく読み続けられているのか不思議に感じていたが、筆者のこの想いがそうさせてくれていたのだと実感した。
私も本書の学びを消費者で終わらすことなく、生産につなげていきたい。まずは自社について、本書に記された調理プロセスに則り、分析を進めるところから始めたいと思う。 -
Posted by ブクログ
P\Lを把握する際には
定石①
企業の一次情報を取得する
・有価証券報告書「過去に関する情報」
・決算短信 「未来に関する情報」 業績予想など
・決算説明資料「過去に関する情報」
有価証券報告書は1ページ目が一番大事。
定石②
決算書の裏にいるステークホルダーを意識する
定石④
決算書をグラフ化や図解してシンプルに表現して対局的に捉える
赤字の理由は企業によって異なるが、滝チャートによって赤字の要因を探ることができる。
定石⑤
時系列や他社の観点から比較を行う
定石⑦
決算書の裏側に隠れているビジネスモデルを見つけ出す
企業価値は「企業が生み出すと予想されるキャッシュフローの現在価値」で決まる→売上高成長率とROIC、将来キャッシュフロー、割引率などで!
ROIC=税引き後営業利益÷投下資本(有利子負債+純資産)
資本コストの計算はCAPMやスリーファクターモデル等の手法があるが手間かかる。
そのためPERの逆数としての割引率を簡易的に使うのがいい。
PER10倍の場合は1/10となり簡易的な資本コストは10%。
そのため時価総額が高い企業と低い企業を比較すると、①売上高成長率が高く、②ROICが高く、③資本コストが低いことが考えられる
ROE=PBR(時価総額/自己資本)÷PER(時価総額/当期純利益)
ROE=当期純利益÷自己資本
ROEは8%以上が望ましい。
ROEが8%を超えることでPBRも上がるという統計データがある。逆はない。
日本企業のROEが低いのは単純に利益率が低いため。欧米の企業に比べて3倍〜4倍低い
EBITDA=営業利益+減価償却費(無形固定資産の減価償却費も含まれる)
ROEやROAよりもROIC(Return on Invested Capital)を指標として採用している会社が多い。
なぜかというと
ROEは財務レバレッジを上げることで上がるため、過度なレバレッジにより歪められてしまうから。
ROAは分母を総資産としているものの、本業のビジネスに投下した資本からどれだけのリターンを得たかを正確に把握できないため。
非財務情報は2020年には企業の時価総額の90%を占めるまでになった。
そのため、環境問題や人材育成の取り組み、知的財産などといった、非財務情報が掲載された統合報告書の重要度が増している。
SaaS企業の分析では「SaaSメトリクス」が必須。 -
Posted by ブクログ
一般的な財務分析ではあまり取り上げられない企業が分析対象となっており、興味深く読めた。
営業キャッシュフロー(CF)の重要性は、「倒産」という事実を前にすれば強調しすぎることはない。例えばトライアルホールディングスにおいて、マイナス25日というキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の短さが事業基盤を強固に支えている点は納得感のある分析である。小売業でよく見られるデポジット(預り金)の活用がCCCの改善に寄与するという構造についても、改めてその効果を認識させられた。
個人的には、第3部で描かれる「常識外れのファイナンス」——アップル、スターバックス、ハルメクの事例が特に面白かった。アップルがあえてデット(負債)による資金調達を選択する背景に財務レバレッジの論理が存在する点は、実に興味深い。一方、スターバックス(特に米国本社)に関しては、営業CFの創出を追及し続けた結果、事業の行き詰まりが顕在化しつつある。ブランドや「のれん」としての評価を踏まえると、同社のファイナンス手法を単純に礼賛することはできないだろう。
そしてハルメクの事例は、企業にも不可逆的な命のありよう(生き死に)が存在するという事実を教えてくれる。「倒産」という事象は、人間の人生と同じく多様な病状や容態が存在することを再認識させられる一冊である。 -
Posted by ブクログ
ソフトバンクの場合、持分法適用会社の利益は、持ち分に応じて利益の一部が計上される。だから株価が変動しても、利益には影響を与えない。
他方でビジョン・ファンドの出資先の場合は株価が変わることで、時価も変わりそれに応じて利益が変動する。
決算書を見る際の視点は3つ。
デッドの目線かエクイティの目線かで全く違ってくる。
①負債
デッド目線の場合→自己資本比率、流動比率など。
②純資産
エクイティ目線(グロース株)の場合→売上高の成長率やPER、PSR
バリュー株の場合→時価総額の低さ、PBRや、PERの低さ
③資産それぞれの利害関係者の視点
「会社の値段」には合計4種類ある。
①会計上記載されている純資産の簿価
②純資産の時価
③買い手が提示する買い値
④株式市場で評価されている「時価総額」
「のれん」は②と③の差額
減損損失とは「のれん」が想定よりも高かった場合に見直すことによって発生する。