山内一也のレビュー一覧
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ウイルスと細菌はちがう。細胞を持たず他者(生物の細胞 )に入り込むと増殖をする、ただの微粒子。
独特の生と死。
不活性が起きなければいつまでも生き続ける。ノロウィルスは外気にさらされても不活性になりにくいので危ない。
ウイルスの死は何かの原因で不活性になり増殖ができなくなったり組織が破壊された時。
しかし破壊されたウイルス同士が集まることでフランケンシュタイン的に復活する。
ウイルスを持ち運ぶいい方法は生物に感染させてその生物を移動させること。
研究者の中には自らにウイルスを感染させた持ち運ぶ究極に体を張った人もいる。
「九名の患者の便をプールし遠心器にかけたあと、細菌フィルターでろ過して -
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著者は1931年生まれで、長年ウイルス研究に携わっている。新型コロナ禍真っ只中の2020年に書かれた本だが、筆者の長年の経験と、人類がこれまで経験してきた多種のウイルスとの闘いの記録だ。
医療関係者達が命がけで対策を講じ、また数々の動物実験も含め多くの犠牲の上でウイルス対策がなされてきたことが医学的、科学的観点で語られている。
感染源として度々登場する動物の中に豚、コウモリ、ネズミが出てくる。コウモリやネズミを見ると人間が本能的に不快感を感じることがあるのは、「ウイルス感染源」としての恐怖を感じるからだろうか。また、豚を「不浄な生き物」として扱う宗教があるのは、大昔に「豚から流行病に感染し -
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牛疫のコントロールをめぐる一国主義と国際主義のせめぎあいが、帝国主義と冷戦構造を背景に描かれる。牛の健康は、肉やミルクの供給だけでなく、労役を通して農業生産にも寄与することから、人の食に直結する。第二次世界大戦後の「欠乏からの自由」を実現するための取組として、科学者の国際的情報共有、官僚機構の整備、現場の農民の協力などが編み上げられていく。
食の安全保障を国際的な協力で実現していくことの意味は大きいが、一方で牛疫が細菌兵器になりうることの脅威も示し、さらに単一の疾病のみを対象にしなければ国際協力が成立しにくい現状を示唆する点が興味深い。 -
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Covid19が確認されるちょうど1年前に上梓された本。
この本からわかることは、ウィルスのことをわかった気になってはならないということだ。
Covid19は、どうすれば感染が防げるのかはわかっているが、ウィルスそのもののことはわからない。
解決策がわからない問題が難しいのではなく、どうすれば解決するのか極めてはっきりわかっている問題のほうが難しいのだ。
P3 ウィルスは独力では増殖できない。ウィルスは、遺伝情報を持つ核酸と、それを覆うたんぱく質や脂質の入れ物からなる微粒子にすぎず、設計図に従ってたんぱく質を合成する装置は備えていないからだ。
P20 致死的な傷の場所が異なるウィルス同士で -
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ネタバレウィルス学の泰斗による、ウィルス及び感染症についての研究史と最新の成果(といっても、新型コロナ以前の2018年出版)を踏まえた本書は、もちろん、コロナ禍がはじまっていた2020年7月に購入したもの。なかなか、読みすすめることができていなかった。関係する書籍を複数並行読みをしているせいだ。
本書をよんでいて、地球はウィルスの惑星だと思ったのは、水圏ウィルス学という最近の成果の紹介の部分である。地球上のどのような水にも、ウィルスを含む多様な微生物が発見されていて、その大多数が、全く知られていなかったもの(気づかれていなかった)であるという。また、人体には遺伝子の中に残るウィルスの痕跡をふくめて、 -
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新型コロナウイルスに翻弄されて2年。ワクチンを打った人も周りに増えてきている一方で、ウイルスによって、オリンピックは無観客になったり、個人的にも、世界的にも大打撃を与えられた。そもそもウイルスって何なんだろう。今だから読みたくなったウイルスの変遷、仕組みをまとめた本だ。
例えば、「なぜ石鹸で手を洗うことが予防になるのか?」ウイルスの核を覆っている外殻が、石鹸の中の油に弱いうえ、その核だけではウイルスが生き延びれないため。また、「なぜ長い間ある国で清浄されたと思われていたウイルスが数十年後に突然現れるのか?」それには各国の発展や輸出・輸入による動物や商品の取引など、大きい経済の動きが関連してい -
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たとえば天然痘は周知の通り人類を永きにわたって苦しめたウイルス性疾患の一つだが、1980年に根絶宣言がなされ現在では人々の意識に上ることはほぼないといっていい。しかし当然ながら、根絶に至るまでには原因ウィルスの特定やワクチン開発を始めとする先人たちの弛まぬ努力があった。著者もその一人であり、天然痘のウシでのワクチン製造に関わって以降、一貫してウィルスの研究に携わってきた農学博士である。略歴によれば上梓時なんと87歳。驚くほかはない。
「意味論」とタイトルにあるように、本書は「ウイルスは宿主であるヒトにとってどのようなものであるか」を中心に論ずるもの。しかし読者は同時に逆の意味論、すなわち