渡辺延志のレビュー一覧
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本書でいわれている関東大震災についての「通説」についてメモしておく。
これは当時の治安三人組といわれた内務大臣水野錬太郎、内務省警保局長後藤文夫、警視総監赤池濃(あつし)らが、1923(大正12)年9月1日、震災発生後に戒厳令を布き、朝鮮人たちが暴動を起こしているという流言蜚語を広めたという説のことである。
著者によれば、この通説を形作り、今日に至るまで影響を及ぼしている書籍として、以下の2冊を挙げている。
吉村昭『関東大震災』文藝春秋、1973年
姜徳相(カン・ドクサン)『関東大震災』中公新書、1975年
後者の姜徳相は、『現代史資料6 関東大震災と朝鮮人』みすず書房、1963年の著者で -
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関東大震災時に朝鮮人による加害があったラムザイヤー論文のレビューを依頼された著者だが、後にラムザイヤー教授は、その論文の主要部分を取り下げている。
取り下げられてからも著者は当時の新聞を渉猟し、流言飛語が現れた原因を知ろうとし、ある仮説に至る、というのが本書の基本構造である。
ところで、私からすれば、約40年前の小学生の時分から朝鮮人虐殺があったことは常識に属すると思って生きてきたのだが、近年、これを否定し、又は存在を曖昧にしようとする見解が有力化している。
大学生の頃、海外における歴史修正主義(例えばアウシュビッツ大量虐殺の否定論)なるものを知ったときには、一種の異端学説のようなものであろ -
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日本が本格的な戦争として関与したの日清戦争が最初であり、その「正史」の内容を精査し数多くの問題点を洗い出した著作だが、公文書に対する感覚が以前から変わっていないことに驚いた.東条英機の父、英教が執筆した「決定草案」は多くの部分が改竄され「公刊戦史」の形で公開されている.その過程で大島健一なる人物が登場するが長州閥の圧力で、重要事項が削除されていた.著者の訴えたいことがp227に凝縮されている.'' 戦争の事実を歴史として後世にどう伝えるかという問題をめぐる大きな路線の対立が明治の半ばに陸軍内であったことも浮かんできた.その結果、戦争を歴史として正確に後世に伝えるという考えは
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なぜ日韓はこうも理解し合えないのだろうか。歴史認識がこうも違うのだろうか。韓国(中国もだが)での組織だった嫌日教育は、どう考えても将来に渡って仲良くしたくないとの現れでしか見えない。確かに戦争では酷いことをしたのは間違いないだろうが、建設的な教育が出来ないものか。
疑問が尽きないため、韓国の教授が書いた反日種族主義等を読んだりもしたが、色々な見方が必要かと思いこの本を手に取った。
今正に訴訟で原告側の主張が認められ、手続きが進行している徴用工問題、関東大震災での朝鮮人犠牲者が6000人と碑に書いてあることに対し、一人の都議が一方的な政治的主張だと批判し、以降毎年出席していた追悼式に主席してい -
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関東大震災からちょうど100年にあたる今年(2023年)、テレビ局各社も震災の発生した9月1日に合わせて特集番組や番組内で特別枠を設けるなど多くが特集を組んでいた。その中で朝鮮の人々に対する虐殺の話は必ずと言って良いほど出てくる。日本は地震大国であるが故、東日本震災の時も東電の原発事故から様々な噂や嘘が流れた事を思い出す。大規模な自然災害で混乱し、恐怖に怯える人々からそうした流言が生まれ拡がっていく様は容易に想像できる。
本書はアメリカの権威ある研究論文で一時期掲載されていた、関東大震災時に朝鮮人の虐殺を否定する内容に対する反証として著者が調査し、まとめ始めたのがきっかけだ。果たして朝鮮人虐殺 -
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徴用工訴訟や慰安婦の問題について解決の糸口を見いだせないまま、日韓関係は戦後最悪とまで言われていることは知っているが、その争点について、両国の言い分まで全く理解していなかったので、本書を読んだ。
徴用工訴訟について両国が噛み合わない争点をさらった後、その歴史的背景を探るべく東学農民戦争まで遡り、その後の関東大震災、三・一運動などの経緯やその際に実際に起こったことを証言する当時の学生の作文や記事等を調査し、両国の間で齟齬が起こる原因を考察する。
過去に起こったことを今から変えることはもうできないのは当たり前であるが、良いも悪いも事実をしっかりと認識しておくことは必要であったと思う。自分