【感想・ネタバレ】関東大震災「虐殺否定」の真相 ──ハーバード大学教授の論拠を検証するのレビュー

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Posted by ブクログ

関東大震災からちょうど100年にあたる今年(2023年)、テレビ局各社も震災の発生した9月1日に合わせて特集番組や番組内で特別枠を設けるなど多くが特集を組んでいた。その中で朝鮮の人々に対する虐殺の話は必ずと言って良いほど出てくる。日本は地震大国であるが故、東日本震災の時も東電の原発事故から様々な噂や嘘が流れた事を思い出す。大規模な自然災害で混乱し、恐怖に怯える人々からそうした流言が生まれ拡がっていく様は容易に想像できる。
本書はアメリカの権威ある研究論文で一時期掲載されていた、関東大震災時に朝鮮人の虐殺を否定する内容に対する反証として著者が調査し、まとめ始めたのがきっかけだ。果たして朝鮮人虐殺があったのかなかったのか、あったのであれば、その規模や証拠は何であるか、そして何故それらが発生するに至ったのか、若しくは事実と反対の意見が何故出てくるのか。この様な数々の疑問を抱きながら、論文の根拠と思しきソースを一つずつ解析していく内容となっている。結論は本書内で確認いただきたいが、筆者が論じたいのは、そうした事象の発生過程や原因である。
大震災という非常事態、集団全体がほぼ不安や恐怖に陥った特殊な心理状態、震災前の1910年に併合した朝鮮とそれに反発する朝鮮人の活動家が居るという背景、更には朝鮮から引き上げた在郷軍人の存在など発生に繋がる要因は数えきれないほど存在する。当時は余震に火災に見渡す限りの混乱状態で警察や消防なども組織不全に陥っている。必然的に火事場泥棒の取り締まりは市民の自警団に頼らざるを得ない。
また政府としては軍国主義的に朝鮮人へ民衆のやり場のない怒りの矛先を向けるのは好都合であっただろう。更には民衆の中には併合した朝鮮人への差別的意識もあったに違いない。
個人的には日本人の国民性にも着目したい。島国で隣人との関係性、集団を大切にする国民意識が、一度朝鮮人憎しの方向に傾けば、集団から阻害されたくない意識で皆が追随・一体化してしまう。サッカーワールドカップなどを見ていても、日本の大応援団の熱狂と統一感は凄まじい事で知られている。その様な逃げ場のない島国、隣人との距離が近すぎる日本国民が、政府や警察組織の扇動によって、朝鮮人虐殺に熱狂的に導かれる姿が容易に想像できる。
本書が教えてくれるのは、あったがなかったかの事実ではなく、何故当時の状況がその様な情報を発生させたのか、人々がその様な行為に及無可能性があるのかについてである。なお特集番組では四国から渡ってきた行商一行が、避難先にてことばのイントネーションが違うがために、地元住民に朝鮮人の疑いをかけられた挙句、殺害された歴史を紹介していた。映画化もされるそうだ。
日本人としては虐殺があったなら事実は表立って騒ぎたくは無いだろう。だが真実を知り、受け入れる事が将来を背負っていく国民の責務として存在する事を忘れてはならない。

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2023年09月02日

Posted by ブクログ

ハーバード大学教授の論拠を検証する、という副題であるが、そのマーク・ラムザイヤー教授は結局論文を取り下げた。しかし、転んではただでは起きないという通りで、その論拠を探したという結論である。
 東大教授や京大教授でも変な論文や偽論文を提出する昨今、ハーバード大学教授だからといってまともでない論文を提出してもおかしくない。
 それほどあたらしことは書いていないが、フェイクニュースというものを日本でもあらためてその影響を再認させることには意義がある。

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2021年10月18日

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