ユンジヨンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ『この世界からは出ていくけれど』に次いで著者を読んだのは2冊目かな。
この本がデビュー作なので、順番としては逆転してしまったけど、テーマを考えると『この世界からは出ていくけれど』から読むのもそんなに間違ってなかったのかな、とか思ったり。
『この世界からは出ていくけれど』は、他者との間にあるどうしようもない断絶を(どちらかと言えば)悲劇的に書かれていることが多かった印象。
対して『わたしたちが光の速さで進めないなら』は、この理解できない他者がそれでも「愛すべき誰か」であった、という部分に善性が感じられて非常に良い。
時が変わっても場所が変わっても、何かを愛する人間性というものは共通しているはず……というささやかな信念が感じられてほっこりしました。
たまにはこんな光のSFもいいですね。カシワイ氏のカバーデザインも相まって良質な一冊でした。 -
Posted by ブクログ
前作『わたしたちが光の速さで進めないなら』が大変良かったのでこちらも。旅立つ者と、見送る者の7つの短編集。
広大な宇宙にある無数の星々、多様な外見、テクノロジー、死生観、多数派と少数派…それぞれの理解と無理解。家族であれ恋人であれ友人であれ、お互い譲らない(譲れない)一線があり、愛していても理解、許容できないこともある。
互いに分かり合えなくても相手を愛すること、相手を思いやることはできる。
どの話も良いのだけど個人的なお気に入りは「キャビン方程式」
文字を追いながら静かに揺さぶられるような感覚。繊細な翻訳も素晴らしい。
寂しさの中に一滴の優しさがふわりと溶け込んだような読後感の一冊。 -
Posted by ブクログ
本屋に並ぶ背表紙にこのタイトルを見つけたとき、すぐにキム・チョヨプさんの作品だとわかった。棚から抜取りレジに向かう。タイトルの勝利だ。
今回の作品は差別的に分断された集団同士でも、個人の単位で向き合えば、わかりあえる、愛することができると言えば大きく括りすぎだろうか。
建付けはSFだが、描かれているのは人の心だ。星間ロケットが飛ぼうが、脳の外に記憶装置を持とうが、他の惑星で亜種に進化していようが、寿命ある生物である限り、切なさはなくならない。社会を形成する動物である限り他者を想う心はなくならないと信じたい。本作品を読めばそれが良くわかる。対立する集団同士でも、身近で会話をすれば信じあえているではないか。 -
Posted by ブクログ
『私たちが光の速さで進めないなら』が良かったので期待してこちらも購入。文庫化たすかる。
たとえ同じ人間という種族であっても違う個体であれば本当に理解し合えない部分というものは存在する。様々な理由からどうしたって一緒にはいられないけれど、あなたはかけがえのない存在で互いの芯の部分に触れ合えたような気がした瞬間や一緒に居れた時間をギュッと抱きしめて、あなたの幸福を祈りつつ私は自分の人生を生きていくよ、といったような寂しさを描くのが本当に上手だなと思う。
好きだったお話は『ブレスシャドー』と『古の協約』。
『ブレスシャドー』は全然馴染めなかった故郷と、そんな中でも仲良くしてくれた数少ない友人を思い出した。悲しくつらい環境の中で温もりを感じされてくれるただ唯一の存在。ジョアンの言葉に私はとても共感した。「ここに愛着を抱かせるものが、ここへの憎しみを紛らわせてくれるわけじゃない。それは同時に存在するものなの。あらゆるものがそうであるように」
『古の協約』はノアからイジョンへのメッセージの形式で書かれている。違う星で生まれた者同士がこれほどまでに気が合って交流している様子が本当に尊くて、二人が一緒に居た宝物のような時間を見せてもらった気持ちになる。彼らはやっぱり一緒にはいられないけれど、このメッセージを読み終えた時、私が想像していたノアの住む惑星ベラータの景色がさらに彩度を増し輝いた。惑星の生命サイクルの一部つまり惑星の一部としてノアはきっとずっとそこにいるし、かつて二人が交流した美しい時間があったことを知っているので。 -
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ネタバレ本格的なSF物を見るのは初めてだったので、正しい楽しめ方を出来たのか分からないが、それぞれにしんみりとするものがあって感傷に浸っていた。
この作品は、
・巡礼者たちはなぜ帰らない
・スペクトラム
・共生仮説
・わたしたちが光の速さで進めないのなら
・感情の物性
・館内紛失
・わたしのスペースヒーローについて
という7つの短編集だ。
全体を通して、「愛」をテーマにしているように感じた、暖かいハートフルSFのように感じる。
地球で見つけた愛、巡礼者の帰らない理由。
未確認生物との交流、言葉が通じなくても確かに芽生えた愛。
赤ちゃんの健全な成長を結果的に支えている共生者。
百年以上、コールドスリープで家族のことを思い続けた愛。
マイナスの感情を何故わざわざ摂取するのか。感情の物性については、私は面白かった。
館内紛失、私も家族との仲が良くないが情があるので何となくのめり込んだ。
最後の作品は、私だったらどういう選択をするのだろうか、と考えていた。深海で暮らしてみたいような気もする。
感傷に浸るような、考えさせられる作品が多かった。私が未熟なゆえのこの評価だが、私がもっとSFに詳しくなってまた再読をした時に評価は上がりそうだ。別の作品も読んでみたい。 -
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ネタバレ読書ノート
作品:『キャビン方程式』
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P116
「ローラ。あなたがいなくなったら、私はとても悲しいと思う。あなたを愛することは、私にとって幸せなことだから。でも、だからといって、自分らしくなることを諦めるわけにはいかないの。自分らしくあることは、人生をかけた冒険だから。」
感じたこと
この言葉が心に残ったのは、誰かを愛することと、自分自身でいることは両立できると感じたから。
大切な人がいると、相手のために自分を変えたり、我慢したりすることもある。でも本当の意味で相手を大切にするには、自分自身の人生も大切にする必要があるのかもしれない。
「自分らしくあることは、人生をかけた冒険」という言葉から、自分を探し続けることの難しさと、それでも進んでいく強さを感じた。
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『プレスシャドー』P147
「どうして私を蘇生したの?」
感じたこと
生き返ったことへの喜びではなく、最初に出た疑問が「なぜ?」だったことが印象に残った。
出来事そのものよりも、その裏側にある「なぜそうなったのか」「自分はどう存在するのか」という葛藤が感じられた。
人の心の奥にある迷いや切実さに心を動かされた場面。
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『キャビン方程式』P283
「また、同じ時間を記録はできなくても。一緒に生きていくことはできそうだった。」
感じたこと
主人公の切実な思いを感じた。
過去と同じものを取り戻すことはできなくても、それでも一緒に生きていく道を選ぼうとする気持ちが伝わってきた。
「同じ時間」ではなく「一緒に生きる」という言葉に、失ったものを受け入れながら、それでも相手を大切にする覚悟を感じた。
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『キャビン方程式』P306
「そうだった。姉さんはこの方程式を見たかったんだよね。私たちが今、全く違う風景を見ているんだということも。姉さんを解き放ってあげるべき時が来たのだった。私たちの世界はある時別々に別れてしまったのだと認める時が。」
感じたこと
大切な人との関係が変わってしまうことを、受け入れる瞬間が描かれているように感じた。
嫌いになったから離れるのではなく、相手を大切に思ったまま、別々の道を認める。
「解き放つ」という言葉から、愛情とはそばに置いておくことだけではなく、相手の人生を尊重することでもあるのだと思った。
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全体を通して感じたテーマ
この本で心に残ったのは、
「大切な人を愛しながら、自分自身の人生も生きること」
というテーマ。
人との関係や時間は変化する。
ずっと同じ形で続くものばかりではない。
それでも、過去の大切さを否定する必要はなく、変化した関係を受け入れながら前に進むことができる。
この本は、愛すること・失うこと・自分らしく生きることについて考えさせられた。 -
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私は宇宙が怖い。もし放り出されたらどうしていいか分からない(当たり前)。上も下もない無重力空間で地球を見失ってしまったら、もう二度と戻れない。ただただ広い空間にひとり…怖すぎる。
地球外生命体がいる星に放り出されるのはもっと怖い。知識も経験も通用しない場所で赤ちゃんからやり直すようなものだ。その星の「当たり前」に順応できなければ即死……怖すぎる。
けれど得体のしれない怖さを感じる宇宙に、本作では温かさやノスタルジー、言葉にできない美しさを感じた。どれだけ願っても触れられないほど遠い場所に大切な人がいる。だからこそ生まれる物語があるんだなぁ。
なかでも私が好きなのは「スペクトラム」。
ヒジンが出会った景色や地球外生命体たちは、読んでいる私の頭のなかで静かに、けれど確かに存在していた。文字で読むからこそ広がっていく想像の世界はとても魅力的だった。映像化したら感じ方が変わりそうでそれはそれで楽しみでもある。
SF作品も海外文学もほとんど読んだことがなかったけれど、本作が良かったから他の作品も少し親しみを持って手に取れそう。 -
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ネタバレ韓国SFの新星、というよりも代表格と言って差し支えないぐらいの貫禄が出てきたキム・チョヨプ氏の本邦第二短編集。
一読しての印象は、第一短編集「わたしたちが光の速さで歩めないなら」と同様の、淡々としながらもしっかりとそこにある切なさ、それを乗り越えようとするほんの少しの勇気です。本短編集は、タイトルでも端的に表現されている通り、”この世界”に対するちょっとした疎外感と、そこから抜け出そうとする女性たちの姿を描いている作品が収められています。
この、「女性性と社会との関係性」というテーマに触れて、鴨がふと想起したのは、ジェイムズ・ティプトリー・Jr。本名アリス・シェルドンという、聡明で社会的にも恵まれた立場にあった彼女が、敢えて男性名のペンネームで綴った数々のSF作品は、21世紀の今読んでも相当に衝撃的な、性と社会との軋轢/衝突を強い筆致で描写しています。特に、女性が社会に感じる強烈なまでの違和感を描き出す筆致は、悲壮感すら漂わせています。
他方、キム・チョヨプ作品での女性キャラは、そこまでの「強さ」は感じません。むしろ、社会に対する爽やかなまでの「諦観」「疎外感」を感じさせます。アメリカ社会と韓国社会の土台の違いが大きな要素なのだろうとは思いますが、この差異に注目すると、SFというフォーマットを通して提議しうる課題とその表現方法の多様性に興味を惹かれますね。