ユンジヨンのレビュー一覧
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本屋に並ぶ背表紙にこのタイトルを見つけたとき、すぐにキム・チョヨプさんの作品だとわかった。棚から抜取りレジに向かう。タイトルの勝利だ。
今回の作品は差別的に分断された集団同士でも、個人の単位で向き合えば、わかりあえる、愛することができると言えば大きく括りすぎだろうか。
建付けはSFだが、描かれているのは人の心だ。星間ロケットが飛ぼうが、脳の外に記憶装置を持とうが、他の惑星で亜種に進化していようが、寿命ある生物である限り、切なさはなくならない。社会を形成する動物である限り他者を想う心はなくならないと信じたい。本作品を読めばそれが良くわかる。対立する集団同士でも、身近で会話をすれば信じあ -
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キム・チョヨプさん初読です。93年生まれ、韓国SF界新進気鋭の作家は、バリバリのリケジョでした。でも、全く堅苦しさのない、むしろ優しさが感じられる筆致でした。在学中の文学賞受賞作を含む著者のデビュー作で、 7篇の短編集です。
どこか遠い場所や未知な存在への憧れがあるという著者は、豊富な理系知識とそのアイディアを駆使し未来世界を描きます。巧みなのは、明るいはずの未来世界で、こぼれ落ち孤独な人に目を向けた構成で、希望を示している点だろうと思います。
私たちが今暮らす社会の差別や抑圧・孤独が、未来でも見られるのは悲しいですが、著者は人間の本質に迫り、私たち個々の価値を認識して人との距離を大 -
Posted by ブクログ
『私たちが光の速さで進めないなら』が良かったので期待してこちらも購入。文庫化たすかる。
たとえ同じ人間という種族であっても違う個体であれば本当に理解し合えない部分というものは存在する。様々な理由からどうしたって一緒にはいられないけれど、あなたはかけがえのない存在で互いの芯の部分に触れ合えたような気がした瞬間や一緒に居れた時間をギュッと抱きしめて、あなたの幸福を祈りつつ私は自分の人生を生きていくよ、といったような寂しさを描くのが本当に上手だなと思う。
好きだったお話は『ブレスシャドー』と『古の協約』。
『ブレスシャドー』は全然馴染めなかった故郷と、そんな中でも仲良くしてくれた数少ない友人を思 -
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色んな意味での旅立ちや別れがそれぞれの短編で起きるので、どうしてもものさみしい気持ちになる。
同じ場所で、あなたと変わらずこのままで、が叶わない世界。
だけどそれは決して絶望的な別れではなく、互いのことを想いあった上でのままならない別れであったりもするから、読み終わったあとに残る感情は決してネガティブなものではない。
不思議。
別れの中でも死別が最も大きなものと私は捉えてしまうけれど、今なら「またね」と言える気がする。もう会えない、交わらない時間のことだけを想って絶望する私ではなくなったような感じがする。
地球が舞台の短編の方が少ないくらい、あくまでもしっかりSFなんだけど、舞台がどこかな -
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「巡礼者たちはなぜ帰らない」の感想。
なぜ巡礼者たちは帰ってこないのか?その疑問を追うSFストーリー。物語の構成とSF設定、心理描写が面白い。
序盤から中盤にかけて謎と情報が点のように散らばり、終盤でその点が繋がっていき線になる。語り手の視点を追うような構成。これにミステリーで謎を解いていくような面白さがある。話の中で、資料を見るという形で視点が切り替わる多重構造も面白い。
SF設定と心理描写については、「科学技術」と「人の思い、葛藤」が関係付けて描かれておりリアリティがある。若者の見えない未来への不安、好奇心、希望がリアルに描かれている。
追記:
短編「わたしたちが光の速さで進めな -
Posted by ブクログ
最近あまりSFを読んでなかったが、
とある動画で紹介されてるのをみて
タイトルに惹かれて購入してみた。
調べてみると、同世代の韓国女性の作家さん。
まずとても読みやすい文体と短編で長過ぎず、短過ぎずな点が、久々にSFに触れるということもあるが素晴しかった。
取り扱ってるテーマは感情などの普遍的なもので、
舞台装置としてSF世界に置かれることで、
その普遍性や特性をさらに炙りだし、
読者にも考えさせたり、感じさせたりする構造になっていると思った。
SF世界のようにAIなどのテクノロジーが外界を目まぐるしく変化させていく半ばSF的な今世において、人間性を考えるきっかけにもなったかな。
ま