河野啓のレビュー一覧
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著者の河野啓(1963年~)氏は、北大法学部卒、北海道放送のディレクターとして、ドキュメンタリー、ドラマ、情報番組などを制作。『北緯43度の雪』で小学館ノンフィクション大賞(2011年)、本書で開高健ノンフィクション賞(2020年)を受賞。
栗城史多(1982~2018年)氏は、北海道生まれ。2002~09年に、6大陸(北米、南米、ヨーロッパ、アフリカ、オセアニア、南極)の最高峰、世界6位の高峰チョ・オユー、7位の高峰ダウラギリに登頂し、その後、2009~17年にエベレストに7度挑む(様々なルートで)も敗退、2018年に8度目の挑戦に失敗した下山中に滑落死した。35歳没。「単独無酸素」を謳うと -
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カッコ悪いところを見せられることが、一番かっこいいのに。
話題性とユニークなキャラクターで一躍有名になり、「No Limit」「否定という壁への挑戦」という言葉を掲げてエベレスト登頂を目指すも、2018年に山中で滑落、不慮の死を遂げた栗城史多さん。彼の活動初期を共にしていたTVディレクターによるノンフィクションです。
栗城さんのことは存命中から知っていましたが、いいイメージではありませんでした。巧みな営業力で有名企業から援助として莫大な金を調達し、おかげで何度もエベレストに挑戦できているけど、実力もトレーニングも不足しているから毎度失敗し、時には登山データの改ざんも図るといった体たらくのた -
Posted by ブクログ
本書を読むまで栗城史多という人物をよく知らなかった。もちろん、名前は聞いたことがあったし、エベレストに挑戦していたこと、その挑戦の半ばで亡くられていたことはなんとなく聞いたことがあった。つまり、メディアでその名前を聞いたことがあっても、実際どんな人物でなにをやっている方なのかよく知らない、という状態であった。
本書を読んで、彼のことがよくわかったかというと、より謎が深まった気もするし、何かが明確になったわけでもない。ただ、色々と考えさせられる内容となっており、読んでよかったと思えた。事実を淡々と積み上げて、真実を明らかにする、というよりは、途中途中でかなり著者の推論が入るが、そのプロセスを読 -
Posted by ブクログ
登山界でばかにされてた栗城さん。テレビで見たことあるけど、押し付けがましさ、暑苦しさを感じて苦手だった。彼が登山を始めたのは、好きだった女の子を見返すため。何一つ成し遂げられなかった彼が、自分を面白がってくれる人たちに後押しされ、その声に応えるようにチャレンジを重ねる。それが紛いものでもかまわない。みんなが喜んでくれれば。でも、何度ものエベレスト失敗により、彼のニセモノぶりがたたかれるように。凍傷の指をまだまだ夢物語の再生医療に頼ったり、占い師の助言に頼ったり。恐山のいたこを通じて栗城さんが会ったのは、17歳のときに亡くなったお母さん。聴衆者のこころが離れていき先が見えなくなったとき、彼は死を
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Posted by ブクログ
単独無酸素の真相 構成は、初期の栗城さんに惹かれた筆者が取材を通して失望しつつも登山家としてではなく人間として興味を抱き、死後に丁寧に周辺のひとや専門家の意見を聞きまとめながらその謎に迫るミステリーのような雰囲気がある。単独無酸素への疑問を拾うラストは見事であった。
わたしが栗城さんを知ったのはもう既に指を失い叩かれるようになってから。専門家の無酸素単独に関する厳しい意見からネット的な袋叩きのようなものまで目にしたが、その時はさして興味がなくふと最近Twitterで話題になっていたこの本を手にしてみた。
世界の名だたる山に登山はじめて数ヶ月後に単独で登ってしまった大学生。確かに起業家が好き