山田朗のレビュー一覧

  • 兵士たちの戦場 体験と記憶の歴史化

    Posted by ブクログ

     戦後80年の節目の年に、2015年に岩波書店より刊行された「シリーズ戦争の経験を問う」に加筆した書籍が岩波現代文庫より刊行された。1931年の満州事変(柳条湖事件)から日中15年戦争が始まり、1941年の対英米蘭などへの戦争は、アジア・太平洋戦争へと拡大した。戦争の記憶の希薄化が顕著となり、戦争の「体験」、「証言」、「記憶」の継承は難しく、忘却・消滅の危機に瀕していることが危惧される。本書は100名、845点の戦争体験者の回想録・エゴドキュメントを、歴史経過にあわせて点描的歴史叙述でまとめた書籍であり、実にリアルである。零戦(零式艦上戦闘機)撃墜王と呼ばれた岩本徹三などの著名人はじめ、将校から一般の兵士、日赤看護婦などの体験が時事刻々と綴られる。各戦闘のターニングポイントで何が起き、兵士は何を感じたか。戦争全体に波及した戦局や日本国内の情勢も踏まえ、先の15年戦争全体を俯瞰して学ぶことができる歴史教科書でもある。

    0
    2026年05月29日
  • 軍事力で平和は守れるのか 歴史から考える

    Posted by ブクログ

    抑止力としての軍拡には際限が無くなってしまうのではないか?という疑問から読み始めた。
    やはり徹底した外交努力以外に、平和を守る術はないのではと思うが……。

    0
    2026年02月15日
  • 軍事力で平和は守れるのか 歴史から考える

    Posted by ブクログ

    はじめに
    第Ⅰ部 ウクライナから考える
     第1章 ウクライナ戦争はどのようにして起こったのか………南塚信吾
     第2章 NATOの東方拡大は戦争を抑止したのか………油井大三郎
     コラム1 ユーゴスラヴィア紛争からの教訓………山崎信一
    第Ⅱ部 近現代世界史の中の戦争と平和
     第3章 どのような戦争が起こってきたか………木畑洋一
     第4章 軍拡が戦争を呼び起こす………山田 朗
     第5章 戦争を許さない世界を求めて………木畑洋一
     第6章 平和を求める運動はやむことはない………南塚信吾
     コラム2 武力で平和は守れない………藤田 進
    第Ⅲ部 日本をめぐる戦争と平和
     第7章 日本の戦争から考える──軍事同盟と〈戦争放棄〉………山田 朗
     第8章 東アジアの戦争をどう防ぐか………油井大三郎
     コラム3 「バンドン精神」はどのように継承されているのか………小谷汪之
    おわりに 戦争と平和を歴史から考える………木畑洋一

     歴史学研究は現代の戦争にどうアプローチするのか? その一つの答えは、視点を変えること、パースペクティブを広く取ることなのだろう。第1章の南塚は、ウクライナを1980年代以降の「新自由主義」拡大の重要なフロントの一つと位置づけ、独立当初は非核化と中立化を志向したウクライナに対する米国の持続的な干渉と介入という経緯を浮上させる。第2章の油井は、ソ連=ロシアから見たNATOの東方拡大の非連続的なプロセスをたどりなおし、ドイツの統一を可能にした欧州での新たな安全保障枠組みの構想が、米国内の政治状況との相関でなし崩し的に反故にされていったさまを明らかにした。

    0
    2023年09月08日
  • 大元帥 昭和天皇

    Posted by ブクログ

    「君臨すれども統治せず」の立憲君主としての天皇や「四方の海皆同胞と思う世の〜」と明治天皇の御製を引用して開戦を再考させた平和主義者としての天皇…。これら戦後の天皇免責論者が形成してきた昭和天皇像が、本書を読めば音をたてて崩れること請け合いである。
    その名も「天皇と戦争責任」などと名乗りながら大元帥としての天皇が統帥部の輔弼を前提としてた、等と帝国憲法さえまともに目を通していない記述が満載の児島襄の著書等は、本書が出版された以上もう絶版にすべきではないか?

    0
    2020年09月07日
  • 大元帥 昭和天皇

    Posted by ブクログ

     本書の意図について著者は次のように述べている。「国策・戦略・作戦の決定に際して、昭和天皇が具体的にどのような役割を果たしたのか、その発言の表面的な理解でなく、可能な限り、個々の問題に天皇がどのような質問をし、関係者とのやりとりのなかでどのように考え、その上で膨張・戦争という判断を下していったのか、それを一次資料から読み解こうとしたのである」とされる(文庫版あとがき)。その言葉どおり、大元帥としての天皇の戦争関与の実態が相当に詳しく叙述されている。

     本書を読んで、軍は大元帥たる天皇に必要な情報はきちんと上げていたこと、割拠主義的な陸軍及び海軍いずれもの情報を把握していた天皇が優位な地位にあったこと、そして大元帥としての責任意識から、戦略や作戦についてただ聴き置くのではなく、かなり具体的なことにまで意見を述べていることなどが良く分かった。
     また、満洲事変における関東軍・朝鮮軍の独断専行の軍事行動、熱河作戦、張鼓峰事件など当初こそ天皇の怒りをかったが、「戦果」が上がると一転してこれらの暴走を事後承認しただけでなく、勅語を出すなどして賞賛・激励したことが述べられる。このような天皇の結果優先の態度は、結果として軍部の暴走を煽ることになったと思われるのが、これは将兵が士気を失ってしまうことを大元帥たる天皇が何よりも恐れたからであると著者は指摘する。そういうことなのか。

     昭和天皇の戦争責任の問題については、法的、政治的、倫理的などいろいろな面からの様々な議論がされているが、天皇が戦争に対してどのように向き合っていたのかという事実を知る上で必読の一冊と言っても良いだろう。

    0
    2024年10月27日
  • 大元帥 昭和天皇

    Posted by ブクログ

    大元帥としての昭和天皇の振舞いは、若い頃から軍事の英才教育を受けてきただけあって、視野が広く、軍の統率者として能力の持ち主だった。
    ただ、当時の教育が積極的攻勢に基づくものであり、昭和天皇もそれに固執してしまったのではないか。それが為に終戦の判断が遅くなってしまい、悲惨な敗戦を味わってしまった感は拭えない。
    日本国天皇と大元帥の2通りの顔の使い分けの難しさ、どうしても戦中は大元帥としての面が表に出すぎてしまい、考え方が偏ってしまったのではないか。

    0
    2020年07月21日