千正康裕のレビュー一覧
-
購入済み
意外にポジティブ
タイトルからもっとネガティブな告発系の内容を想像していたが、著者の前向きな姿勢に惹かれるものがあった。
もともと実名でブログも書いていたようだが、やはりこういう形で出版するのは退官した後でないと厳しいものがあるだろう。
役所が時代遅れの古い体質ということはわかっていたが、あらためてどのような働き方をしているかを文字で読むと驚きを通り越してあきれてしまう内容。
背景には、新しいものを受け入れられない上位層、政治家や幹部職があるようだが、これは変われないダメな組織の典型例と感じた。
当然、離職も増えるし、就職者も減少する。
サービス残業とハラスメントが横行する昭和職場に好んでくる若者などごく少数。
大丈夫なのだろうか、この国は。
まずは、有権者が選挙で政治家をしっかり選ぶこと、一部くだらないマスコミの情報に踊らされないこと、自分の暮らしに関係する行政を知ることからかな。
政治、行政、働き方について考えるよいきっかけをいただきました。 -
Posted by ブクログ
◯色々な本やネットを見ても、国家公務員は大変だ大変だとしか書かれていない中、具体的に何をやっているのかを示しながら、大変さの本質を開示していこうという姿勢が見られる一冊。とても面白かった。
◯どう面白いのかと言えば、おそらく霞が関でしか使われないであろう専門用語や、一般には不可解ですらある形式主義を事細かに紹介している点。改善しようにも大企業病よろしく、直せないのだろうなと感じさせる。
◯解決策の具体性、とりわけ国会議員にも提言している点も特徴的。議員と公務員の関係性が一般には見えにくいため、どのように扱われているのかが大変わかりやすく、議員という性質上根深い問題が抉り出されている。国ごとの政治体制が異なるため、一概に比較しにくいと思うが、他国と比べてもちょっと公務員と議員の仕事上の関係が近すぎるのではないか。
◯ただこの本を読んでて一番感じたのは、やはり役所に残って後輩達を助けてくれる道を、なんとしても歩んで欲しかったなということ。 -
Posted by ブクログ
慶應(同じ!)出身の元厚労省、現在は起業した異色官僚の方が書いた本です
この本にも書いてありますが、彼は現役官僚の時から自分の仕事をブログなどで発信したり、積極的に現場を見に行くなど、いい意味でステレオタイプの"官僚的"な人とは一線を画した方です。
肝心の中身についてですが、彼のTwitterなどのSNSをより濃くしたって感じです。
彼が今もSNSで発信している、"官僚の働き方改革"、たしかに現在の官僚の働き方は非人道的ですし働き方改革をすべきだとは思います(民間の働き方改革の旗振り役である厚労省が不夜城状態ですし)。
ただし、そもそも官僚は東大法学部の集まりのガチガチのエリート組織でありそういう面に憧れて官僚になる人も少なくないため、働き方改革で余った時間を現場視察などに使ってくれる現場思考の官僚はそんなに多くないのではとも思ってしまいました。
著者のような方なら使ってくれると思いますが、少々その点は楽観的すぎる気がします。
著者はTwitterで、官僚の面白さについても書いたと述べていますが、もう少し法案を作る際どういうことを考えたかとかどういう議論があったかなども書いてもらえると臨場感があってよかったのではないかと思いました。 -
Posted by ブクログ
このテーマの本として、今まで読んできた中で、一番まとまっていて、問題の構造化や対策の方向性についての提言などが、最もクリアだと感じた。特に、女性、高齢者も等しく働くことのできる社会を追求する上で、今のままでは、組織として体をなさず、期待される役割や使命を果たすこともできなくなる、というのが重い。短時間勤務も、本人にやる気があるのなら(ある程度の)長時間勤務もあってもいいが、無定量無制限の呪いをなかなか拭うことのできない官僚の仕事では、独身・男・中堅に超過度の負担がかかるだけだ。ダイバーシティの議論では、この組織としてのマネジメント困難が論じられることが少ないので気になっていたところである。きちんとメッセージにできている論はあまりなかったので、著者には今後期待したい。
30年くらい前に、当時の厚生省の「中の人」の告発として、宮本という人の著作がいくつかあったが、そのころと官僚のしんどさは全然変わっていないし、むしろきつくなったように見える。
pp29-33にある、「典型的な仕事の様子」は、極めてリアル。ITでコミュニケーションのバリアが低くなった分、情報のやり取り密度は組織内で加速度的に上がっており、その一つの細胞としてはたらくマネジャーも担当者もたまったものではないだろう。 -
Posted by ブクログ
小泉政権以降、日本の政治・政策決定は、「政治主導」「官邸主導」の方向に変化したと言われているが、それには一長一短がある。筆者は、2001年から2019年まで厚生労働省に勤務していたキャリア官僚であり、その一長一短を、自身の経験を踏まえて本書で記している。
一長一短の「一短」の方で言えば、まずは内閣の支持率至上主義ということがあげられる。これにより、人気取りのための政策が、根回しや実現可能性の詰めなしに行われる。例えば「アベノマスク」がこれにあたるだろうが、実際には、「人気取りにもならず」「迅速には実行できず」「高コストの形で」1人2枚の使いにくいマスクが配布されてしまい、配布された時点ではマスク不足も収まっているというような、馬鹿なことが起こってしまう。そういったことは、枚挙にいとまがないようであり、それが、本書の題名の「官邸は今日も間違える」に繋がっているのである。特にコロナ対応の際に、「一長一短」の「一短」が目立つことになった。
もちろん、うまく運用できれば、「意思決定が早くなる」「既得権益への配慮なく、抜本的な改革が可能」などの「一長」もあり得るのであるが、それが実感できる形の政治になっていないのは残念である。 -
Posted by ブクログ
日経書評で「日本のコロナ対策を検証」した3冊のうちの1冊として紹介されていた本。
タイトルが、そのとおりだよね、と。
オビの「バラマキ給付、アベノマスク、接触アプリ、GoToトラベル、欲しかったのは、これじゃない!」ってフレーズ、まさしくそのとおり!
じゃあ、なんでそうなっちゃったの?ということを論じた本。
政策の意思決定は、小泉劇場型政治などを経て、官僚主導から官邸主導へと変わってきている。政策は大きく早く動くようなった。
特に国民の注目度の高い政策は、①権力の集中した官邸が、②国民の人気を気にして、③少数の人間で急いで決めるようになった。
政治は、小選挙区制導入などで「支持率至上主義」 が加速化され、それがSNS時代の到来により、どんどん短期的な人気取りに陥ってきている。
実務的に業務がちゃんと回るかということを考えずに意思決定がされ、ミスは繰り返され、官僚の実務担当者や自治体、委託先の民間企業が、過重労働で疲弊する。そしてそれにもかかわらず、国民には政策の効果が届かない構図は続いていく。
…トホホな図式だ。
経済が右肩上がりの時代は、基本的には利益を分配するのが政治の役割だったが、今は誰かに負担や我慢をお願いする形での意思決定が必要だ。全員に不都合のない結論を出すことは難しく、政治家にとっても難しい時代だ。
コロナ禍の政策決定には、日本の政治が抱えている「不都合なことを意思決定できない」問題が色濃く出たものといえる。
なんというか、悲観的になってしまうのだけど…
霞ヶ関改革や国会改革、国民のできることについても書かれているので、自分のできることを地道に一歩一歩進めていくしかないなあ、と。 -
Posted by ブクログ
霞ヶ関がこんなにもブラックだったとは。
著者の写真に胡散臭さを感じたが、読んでみると、政治と行政の有り様についてよく考えているなと感心する。
・「年金ほど将来の少子高齢化の見通しを先取りした上で財政的な裏付けを含め設計しているのはない。医療や介護の方が危ない。」という指摘には正直びっくりした。
・「役所の広報が分かりにくいのは徴税権に甘えているせい、片手間に考えているせい」という指摘にはうなずける。
・政策の中身とともに税金で飯を食っている国会議員と官僚に「くだらない仕事に時間を使うな」と声を上げて。
・官僚たちの日々も「与野党のケンカを支える」から「国民のための政策を考える」に変わっていく。