マーガレットアトウッドのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「待女の物語」の15年後の物語
指導者のリディア小母
司令官の娘アグネス
カナダで暮らすデイジー
それぞれの立場で日々
暮らしながらも
何かを求めていた
デイジーの両親が
殺されたのをきっかけに
思惑が動き出す
ギレアデを告発し、自由を掴むために!
国民の婚姻、生殖、子育てへの介入、管理
教育と言語の抑制
文化、芸術、学術への弾圧
歴史上、あるいは現実にも
存在するこれらに対する
抗議が網羅されている
さらにそれに加えて
この物語には無謀な冒険がある
生きようとする力
自由を求める力
大きな革命のために
自ら犠牲になる少女
思わず、頑張れ!と
叫びつつ
読むことを止められなかった
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Posted by ブクログ
「侍女の物語」の15年後を描く続編。
こちらは前作と立場がまるで違う3人の女性それぞれの視点から全体主義国家「ギレアデ共和国」がいったいどのような国で、監視社会としていかに女性の人権を蹂躙していたのか、その隆盛から崩壊するまでが描かれる。
前作から35年後に書かれたこともあり前作の閉鎖的で陰鬱な文体から一転しアップテンポなスピード感のあるポップな文体でエンターテインメント性に溢れ、登場する女性たち全てのその懸命な生き様に魅了され、本から読む手を離させないエキサイティングな展開でワクワクさせられた。
前作を読み終えた時には喪失感に胸が苦しくなる思いがしたが、今回は「救い」があり穏やかな読後感を得 -
Posted by ブクログ
リディア小母、デイジー、アグネスの視点で描かれる、「待女の物語」の15年後のギレアデ、その腐敗と崩壊について。前作はオブフレッドの独白という形だった為見えなかった、ギレアデの全体像と細部、そのなかで生きる人々がしっかりと描かれていて、非常にエンタメ感があり、本当にかなり、とにかく、面白かった!!立場が違うと見え方が違うので、読んでいるほうもたくさんのカメラで見ている感覚になり、700ページの長編だが最後まで全く飽きることがない。
感想を書く為に読み返していてまた何回も泣いた。
シスター・フッドここに極まれり!570ページ「心臓止め」からラストまでの量みかけるような
激動の描写は特に圧巻だっ -
Posted by ブクログ
人間の嫌らしいところ…人を陥れる心の動き、卑屈な精神とその態様、驚くほど残酷な側面、、リアルに表現されてた。それは人のネットワークを制限され、文化との接触を極限まで限られた不自由な暮らしを受忍させられてる人間の、どうしようもなく人間らしい歪み方、生き方なんだと思う。同じ状況なら自分もそうなると思う。
それでも、そんな中でも状況を変えるために自分が犠牲になることを分かっていて、国家の敵になる危険な行為をする知恵と勇気を持てるのもまた人間なんだよね。
そんな社会にならないように、〇〇ファーストとか、差別を助長するような(人間区別しだすと際限がなくなるのは歴史が証明済)言説にノーと言っていくことが、 -
Posted by ブクログ
女性差別は必ず打倒されるという希望の光を心に差し込むような本だった。
先日、神戸で若い女性が何の接点もなかった男性につけられ、エレベーターで刺殺された。この数日前には未遂で通報されているのに対応が取られてなかった。
選挙のときには家制度を復古させるようなことを平然という政党が支持を集めた。
アフガニスタンでは、もう何年も女性は教育を受けられず、要職から排除され、身を隠すことを強要されている。
ギレアデはすでにあるこの現実世界のことを書いているということを読み進めるほどに感じ、ディストピア小説といってよいものかとさえ思う。
しかし、最後には女性が勝利した。
私たちフェミニストも必ず勝利を掴むべく -
Posted by ブクログ
ネタバレ「侍女の物語」から34年後に出版された続編。解説によれば、TVドラマになったことともリンクしているようだ。
アメリカのトランプ政権を見ていると、この小説の世界が、あながち架空の世界に思えなくなってくる。実際、これまで歴史上や現実社会に存在しなかったものは書いたことがないと、アトウッドも述べているようで、これはとても恐ろしいことだと思う。
最後の逃亡劇、途中の記述で、チップを落としてしまったのでは?とハラハラさせられたが、結局、どちらの話も最後には希望が描かれる。その点、歴史上に存在してないんじゃないの?と言ったら皮肉過ぎるね。
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Posted by ブクログ
ネタバレ本当に面白かった!
「侍女の物語」では侍女目線であったために情報量が抑えられていたが、今作では小母のリディア、司令官の娘アグネス、他国で育ったデイジーの三名が語り手となり、よりギレアデについて理解が深まるつくりになっていた。この三名がどんなふうに繋がっていくのか、そしてギレアデの女性たちがどうなるのか、恐る恐る読み進めていった。
女性の権利をとことん剥奪していくくだりは読むのもつらかった。でもそれよりも、ギレアデで生まれ育った少女たちが、すべてを奪われていることすら知らない点が一番恐ろしかった。最初から無いものにはなかなか気付けないものだから。
リディア小母が、人生を失ったあの状態から権力と情 -
Posted by ブクログ
名作だということは知っていたが、なかなか手をつけられずにいたところにグラフィックノベル版が出たということで読んでみた。
現代でこそ新しく感じられる、感じられてしまう、衝撃に満ちた物語。
コロナが蔓延し、ウクライナとロシアは戦争状態、安倍元首相が銃撃に倒れ、テレビであからさまな情報規制がされる。正しい自由が得られる国なんて、もはやどこにもないのではないかと思えるような2022年の世界で、この作品が持つ意味が重要なものになってきていると思う。
『侍女の物語』という、けして派手ではないタイトルも、これが彼女の物語であるということ、この物語を誰かに託そうとした人間の生き様であることを表しているように