イーアン・ペアーズのレビュー一覧
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歴史の転換期に立ったイングランドを舞台に、多数の実在の人物を壮大なフィクションの世界に引きずり込んで繰り広げられる謀略の物語。上巻で積み上げられた謎を下巻で解き明かしていく構成で、正直、上巻はかなり忍耐力が必要でした。
書物と宗教的背景が絡んでくるためウンベルト・エーコ『薔薇の名前』が引き合いに出されていますし、「犯人探し」の体裁を取ってもいますのでクリスティも言及されています。が、おそらく読書子各位はそれが作品を皮相的に捉えただけの惹句であろうことを、早々に見抜いた上で読み進められたことと思います。
そういう意味では、クリスティもエーコも「レッド・ヘリング」だったと言えるかも知れませんね -
Posted by ブクログ
ネタバレ下巻は暗号解読の達人である幾何学教授の手記から始まる。
上巻は、まずヴェネツィア人の医学生であるコーラの手記から始まったのだが、真面目でお人好しの好青年と思われた彼の姿は、ふたり目の法学生プレストコットの手記によって、いささか様相が変わってくる。
重大な事柄の記述漏れ、明らかな噓。
コーラはなぜ、ロンドンではなくオックスフォードにやってきたのか。
しかしプレストコットの手記も変だ。
尊敬する父の汚名を返上するための彼の行動は、どう見ても常軌を逸してきている。
ヒステリックなその行動を、彼は、さらに魔法をかけられたからだと思い、その魔法から逃れるために、サラを無実の罪に陥れ、死刑へと向かわせる -
Posted by ブクログ
ネタバレまだ上巻なので作品のできについての判断はできないけれど、あまりにも衒学過ぎてとっつきにくいにもほどがあると最初はうんざりした。
何しろ17世紀のイギリスの話で、第一章の語り手はイギリスに着いたばかりのヴェネツィアの若者。
多分本人による手記よりも会話は困難を極めただろうし、それに伴う勘違いのようなボタンの掛け違いもあっただろうし、文化の違いによるバイアスもかかっただろう。
何よりも、宗教の違いは大きい。
語り手は敬虔なカトリック教徒であり、英国は英国国教会を国教としている国。
日本人から見ると同じ神を信じているはずなのに、神に対する姿勢は全く違う。
”プロテスタントがよく聖書の引用をして競 -
Posted by ブクログ
17世紀のイギリスを舞台にした宗教と政争と策略をめぐる物語。4人の異なる男性(異邦人であるヴェネチアの商人、汚名を着せられ命を亡くした父親の名誉挽回に猛進する弁護士志望の若者、暗号を解く技能を使い自分も重要人物であると自負してやまない数学者、華々しい政治の舞台には縁遠いながら身分としてはジェントルマンである不器用な歴史学者)の手記で構成されていて、日本語訳はそれぞれ4人の翻訳者が担当したという凝った作品。ある出来事を別々の視点から語るという群像劇が好きなのでその点では楽しめましたが、世界史にも英国の歴史にも詳しくないので、実在の人物と史実をベースに架空の人物とフィクションを織り交ぜて良質な娯楽
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ネタバレ読み応えがあった。
語り手が変わるたびに意味が変わっていく出来事の連続で、主観が違うとこうも違うのかと。もちろんあえて真実を書いていない語り手も存在しているのだけど。2人目が1番手こずった。ちょっとどこまでが妄想なのか…。下巻に入ってからは割と一気に読めたかな。
手記ごとに訳者が違うも面白い。より一層、4人それぞれの視点、それぞれの物語へと入ってしまうので事実はさらにわからなくなっていく。
語り手が変わるたびに、ひっくり返されるミステリ。あまりこの時代の宗教戦争に詳しくないことが悔やまれたけれど…薔薇の名前を読んでみようと思う。 -
Posted by ブクログ
四人の語り手の手記により、大学で発生した毒殺事件と、その犯人と疑われた女性の運命如何を主筋として、イングランド王政復古時代の政治情勢や党派対立等を絡ませながら、物語は進んでいく。
ミステリとして見れば、信頼できない語り手の問題や語り=騙りといったことになるが、媚びず、卑屈にならず生きていくヒロインの人物造形が実に魅力的だと思った。
ヒロインのラストについては、ウーンという気持ちも拭えないが、語りの中で、そこまで含めて書かれているではないかと言えば、そうかもしれないと思わされる(ネタバレ気味の恐れもあるのでぼかしていますが、最後まで読まれた方には分かっていただきたい)。
本書では、 -
Posted by ブクログ
先ずは本書の無事刊行を寿ぎたい。
本書の帯とカバー裏には、『薔薇の名前』とクリスティの名作が融合と謳われているが、本作を手に取り、内容ではない別の面での『薔薇の名前』との共通点を思って、しばし感慨に耽った。
それは、日本語訳がなかなか出なかったということである。『薔薇の名前』が映画化された頃、原作ではアリストテレスやキリスト教、異端審問等に関わる内容が満載だということで、それらに纏わる蘊蓄本がだいぶ刊行されていたのだが、肝心の原作の翻訳が待てど暮らせど出ない、その出版社が東京創元社であった。
翻訳者の一人である日暮氏が、本書についての打合せの始まった時期のことを書いた文章を読んだ -
Posted by ブクログ
やっと読み終わった。。読み終えるのに読者にかなりの忍耐力を要することになる、と作者が言っていたそうだが正に。「月長石」が類似作に挙げられてるけど、月長石はこういう忍耐は要らなかったな。
イギリスの歴史や宗教宗派に馴染みがないことも理由かも知れないが、それだけではない。最初の語り手コーラはいいとして、2人目と3人目がまあ何というか好きになれない。何で誰も彼も引っ叩く。。。耐えて読み進め(謎は気になる特にコーラが)、それを乗り越えた先にウッドが居てくれてよかったが、何しろ疲れ切っててちゃんと読めない。ウッドごめんよ。ザーッと読み飛ばして、終わってから読み直しました。
最後まで意味わからないジョ