ミン・ジン・リーのレビュー一覧
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「在日韓国人」というテーマや「人生をパチンコになぞらえた解釈」などはおもしろく読めたが、それよりも韓国ドラマのお約束感が非常に目立つ。例えば、正反対の性格を持つ異父兄弟(もちろん成績はトップクラス)、飛ぶように過ぎてゆく年数、重要人物たちの突然の死、不動産業界での土地をめぐる問題、そして裏切り…。上巻はともかく、下巻では韓国ドラマでよく見かける内容がぎっしり詰まっていた。
ハンスがソンジャを庇護し、生涯その存在を求め続けていたのは、おそらくソンジャが唯一手に入らない存在だったからだと推測する。常にビシッと決まった身なりで紳士的なハンスが、若く綺麗でわがままな日本人女性をボコボコに殴ったことがあった。彼女はその後、鼻が元に戻らず勤め先のクラブから風俗店に流され、悲惨な終末を迎えた。わずか数行だったが、このシーンが一番強烈で印象に残った。 -
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ネタバレ子の世代ではなんとかこの窮状から抜け出してほしいという親世代の強い願いが何度も書かれていて、子にとっては重責だろうなと思った。そして願いを叶えるのは簡単なことではないのだと、物語の中で示されることになる。どれだけ真面目で優秀であっても、在日コリアンというだけで日本では差別され職がなく、さまざまな場面で理不尽な目に遭ってきたということを、リアルな視点で読むことができた。知らなければ想像もできないことだ。
人種や生まれに関係なく良い人もいれば悪い人もいて、どの国にも色んな面があることが丁寧に描かれていた。一方的に善悪を決めつける書き方はされておらず、登場人物たちがそれぞれの立場でものを考えている。現実の多種な問題に対する読者の意識を刺激し、考えさせられる内容になっていた。
ノアは正当に認められなければと思うあまり、自らも差別をしてしまう状況になっているのが悲しかった。たとえばモーザスの職業についても、ノアは良く思っていないようだった。人並みの日本人になりたがったノアの苦悩は計り知れない。なにか別のものになる必要はなく、自分が自分のまま生きられる国にならなければいけないと思う。
人生はパチンコのようだとはいえ、あまりみんなが運命に振り回されてほしくないと願ってしまった。そんな読書体験だった。 -
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下巻は1955年から1989年までの話。
二人の男の子を抱え、お菓子を作って屋台で売る生活。相変わらず忙しくて生活に追われているソンジャ。
夫の兄ヨセプは長崎で被爆して寝たきり。
でも子供たちも大きくなり、長男は学問、次男は商売の道に進み始め、明るい兆しが見え始めてきたが、その間もずっと長男の父親ハンスの援助が見えないところで行われていた。
やがて長男はその父親の存在を知ることとなり、ソンジャはまた奈落に突き落とされるごとく絶望の淵に立たされる。
次男はパチンコ業界で、誠実にコツコツと努力を重ね順調に業績を伸ばしていくが、在日=パチンコという図式は日本人には色眼鏡で見られてしまう。
どんなに謙虚で、実直でまじめにやっていてもそれは払しょくされない。
アメリカの大学を出て教養を身に着けた我が息子には継がせたくない。
でも結局息子はアメリカより日本で生きることを選択し、仕事を手伝うことに。
何年日本で暮らしても、日本で生まれ育っても在日コリアンという出自は彼らを苦しめる。
パチンコとはその生業からきているタイトルだが、はじかれた球はどこに飛ぶかわからない、自分の意志ではどうにもならない。という意味合いでもあるようだ。
この物語は何かを求めて朝鮮半島からやってきた、ある一族の話だ。 -
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「1910年日本が大韓帝国を併合した。」
貧しい漁師夫婦に生まれた一人息子。年頃になり嫁に迎えた働き者のヤンジン。その一人娘ソンジャが主人公。
ソンジャが未婚の母になりかけた時に、結婚し救いだした牧師の夫イサク。二人はイサクの兄ヨセプを頼り大阪に渡る。
ソンジャの息子、ノアとモーザス。ヨセプの妻キョンヒ。そしてノアの実父コ・ハンス。
ソンジャと彼ら、4世代にわたる在日コリアンの家族の物語。
懸命に働きに働いても楽にならない生活。差別と偏見。子供たちが生まれて幸せになったかと思うと、イサクの逮捕やヨセプの悲劇など、次々にどん底に落とされる。ソンジャの人生に入り込む形で喜んだり悲しんだりしつつ一気読み。
NHKの朝ドラ・アメリカのテレビドラマ、同様に途中で止めることはできない。アップルTV連続ドラマになるのも納得。
下巻になる頃にようやく、タイトル『パチンコ』を理解した。
著者の謝辞に記載された多くの方のお名前。構想から30年の歳月をかけた著者の熱い想いを感じた。 -
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在日の友達がいる。在日3世の彼女は頭がよくてものすごく優しく、しかも美人、その上とっても面白い。今から30年くらい前、出会って数か月経った頃に、日本国籍ではないと知らされて、びっくりし、しかも反応に迷ったことを覚えている。「日本人じゃないんだ」「日本人だと思った」というのは失礼だし、「そうなんだ」だけだと冷たいかな…等々一瞬のうちに色々頭をよぎり、結局、「韓国語も話せるの?」と聞いた。当時は韓国についての情報もほとんどなく、私自身も無知だったけれど、在日の人を偏見の目で見て差別する人もいるということは知っていたので、ただ、私自身はそうではないということだけ伝えられたら良いなと思った。
彼女の実家もパチンコ屋を経営していた。パチンコ屋を経営することに対して私自身は何も思うことはない(騒々しい場所で働く人は大変だなとは思う)ので、職業差別の対象にもなっていたことに、「世間」とは本当に面倒くさいなと思ってしまった。大勢が遊びに行く場所を経営している人を差別するって、本末転倒というか…変なの。
とにかく、読んでいる間、友達のことや友達の家族のことが思い浮かんだ。彼女の家族もこんな苦労を経てきたのかなと思うと、なんだかやるせないし、友達が理不尽に傷つけられるのは、許せない。
私はなるべくフラットな目で、背景などではなく、その人自身を見て接することを心がけたい。 -
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ネタバレ《あらすじ》
第二部 母国 1939〜1962(承前)
勤勉なノアとは対照的に喧嘩っぱやく学校が嫌いなモーザスは、靴下屋での警察沙汰をきっかけに後藤のパチンコ屋で働き出し、順調に出世していく。後藤懇意の仕立て屋はモーザスの学生時代唯一の友人春樹の実家であり、2人は後にモーザス退学以来の再会を果たす。また、モーザスは仕立て屋の従業員裕美と恋仲になり結婚する。
ノアは浪人の末無事念願の早稲田大学に合格し、ハンスの金銭的援助の元大学生活を送る。そこで晶子という聡明で蓮っ葉な美人の恋人を得るが、ある日晶子がノアの了承を得ずハンスとの会合に顔を出したことがきっかけで喧嘩が勃発。ノアは彼女のうちに秘めた差別意識に気づき、別れを告げる。また、晶子から「ハンスに似てる」と言われたことで出生の秘密を知ったノアは、絶望から大学を退学して家族との縁を切る。
そしてチャンホは帰国事業の波にのって北朝鮮へ渡り、音信不通となる。
第三部 パチンコ 1962〜1989
大学退学後、ノアは在日であることを隠して長野のパチンコ屋にて経理の職を得、そこで知り合った理佐と結婚。4人の子供を授かるも、ソンジャがハンスに連れられて会いに来た翌日に自ら命を断つ。
春樹は仕立て屋の主任あやめと結婚するが、2人の間に子どもはできなかった。春樹の母の逝去をきっかけに、2人は障害を持つ春樹の弟大介を連れて横浜へと引っ越す。ある日、あやめは散歩の途中で同性愛者の性行為を目撃したことにより、自身の性的欲求を自覚する。そして発展場へ再び赴くことになるのだが、その際春樹が男性と性行為をしているところを目撃する。
モーザスと裕美の間には、2回の流産の末1人息子のソロモンが誕生。しかしソロモンが3歳になった年、交通事故によって裕美は命を落とす。数年後、モーザスは悦子と交際を開始。悦子は自身の不倫によって過去に家庭を崩壊させており、子どもたちとは今も関係が良好とは言えない。唯一口を聞いてくれる娘は10代にして悦子と同じように妊娠し、中絶する。花は母とモーザスの縁で出会ったソロモンに関心を抱き、やがて2人は関係を持つようになるが、しばらくして花は家を飛び出し行方をくらます。
数年後、モーザスと悦子は再婚。その頃花はホステスやソープで日銭を稼ぐ生活を送っており、後にエイズで若くして命を落とす。
ソロモンはアメリカの一流大学から投資銀行就職と出世街道を歩み出し、ガールフレンドのフィービーと共に日本へ戻る。
しかし、投資プロジェクト失敗の責任を負わされて会社をクビになり、フィービーとも別れる。ソロモンは花が死の床で放った「パチンコ屋になれば?」という言葉に導かれるようにして、父のあとを継ぎパチンコ屋になることを決意する。
《感想》
読み出してすぐ、「あ、これは苦手かもしれない」と悪い予感がした。主人公のソンジャはじめ、彼女の一族がまぁことごとく人間ができているかのように描かれているのだ。実際の言動を見れば「ん?」と思う箇所も散見されるのだが(もちろんその時代の朝鮮における倫理的価値観を現代に生きる私が受け入れ難く感じるのは当然のことではあるが)しかし、とにかく作者がこの一族をやけに持ちあげることには、やはりどうしても鼻白らんでしまった。
例えば
「フニは口唇裂と内反足を持って生まれたが、たくましい肩とがっちりした体つき、黄金色の肌に恵まれていた。優しく思慮深い性質は、おとなになっても変わらなかった」p9
「国中のあらゆる家族がこれほど分別のある父母に恵まれたわけではなく」p11
「嫁に与える食事や衣類を惜しんだりなど決してしない義父母だった。無事に育つ跡取りを産めない嫁に、暴力を振るったり非難を向けたりしたことも一度もなかった」p17
「ヨセプはおおらかで心の広い人物だ」p93
といった具合に、ちょっとパラパラページを捲っただけで、こうした褒め言葉にかなりの数遭遇する。もうおなかいっぱいですよ。。
あと、おそらく作者は在日を題材に「抑圧や差別の歴史に翻弄された人々」を描きたかったのではないかと思うが、メインキャラたちの不幸話が「不倫からの妊娠」「事故死」、「自殺」などかなり個人的なもので、歴史の渦に巻き込まれたダイナミックさにいまいち欠けるところがある点にも「うーん…」となった。
ヨセプの被曝や帰国事業の話などをもっと掘り下げてほしかったが、この2つはことの他あっさり流されてしまい、消化不良感が否めない。
それから、日本人女性が皆やけに性に奔放というか、性的倒錯を抱えている点には気持ちの悪さを感じた。しかもこれが揃いも揃って美女ばかりで、ソンジャ一族の男たちをホイホイセックスに誘うのだが、この辺りはなんというかすごく村上春樹みを感じる。ノアは早稲田で英文学専攻してジャズ喫茶行ってるし。いや、もう春樹やん。
というか、モーザスの親友の「春樹」とあやめの話、なんやったん…??
あ、そして、ノアは結婚したのに在日って隠し通せているのはどういうこと…??あと父を自殺で亡くした妻と子ども4人を残して自殺するなよ。
と、不平不満をタラタラ書きましたが、とはいえこの四世代に渡る壮大な物語をサクサク読み進めていかせるリーダビリティの高さには目をみはるものがあり、飽きずに楽しむことができました。 -
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ネタバレ⭐︎感想は下巻に
《あらすじ》
第一部 故郷 1910〜1933
釜山の影島にて生まれたフニは、口唇裂と内反足という障害を抱えていたが、聡明な働き者であったため気立の良い娘ヤンジンとの良縁に恵まれる。
2人の間には結婚後すぐ幾人かの子どもが生まれたが、元気に成長したのは女の子のソンジャだけだった。2人はソンジャに愛情をかけ、大切に育てる。
彼女がこの物語の主人公である。
ソンジャが13歳の時、フニは結核で命を落とし、その後母娘は2人で精一杯下宿屋を切り盛りして生計を立てていく。
17歳になったソンジャは市場で一人の身なりのいい男と出会う。名はコ・ハンス。ある日、ソンジャが日本人の学生に陵辱されそうになっているところを助けられたことがきっかけで、二人の距離は急接近。やがてソンジャはハンスの子を身ごもる。しかし、実はハンスには大阪に妻子がいたため、ソンジャと結婚することはできないと打ち明ける。だから、朝鮮の愛人になってくれ、面倒は見る、と。ソンジャはその申し出を拒否し、結局二人は破局を迎える。
ある日、ソンジャとヤンジンが切り盛りする下宿屋に平壌から一人の青年が訪れる。青年の名はイサク。フニと同じく結核を患った牧師であり、体調不良を2人に助けられたこともあって、父無し子を孕ったソンジャを妻として迎え入れる。
影島にて婚礼をすませた夫婦は、イサクの兄ヨセプをたよって大阪の鶴橋へ渡る。
ヨセプには美しく優しい妻キョンヒがいたが、2人は子どもに恵まれずにいた。彼らはイサクからソンジャの事情を聞かされてはいたが、もっともらしい理由をつけて自らを納得させ、イサクとソンジャをあたたかく迎え入れる。イサクは牧師のポストを得るがその給料はままならず、四人の生活はヨセプのビスケット工場での稼ぎにかかっていた。また、ヨセプ自身もそのことを誇りに思い、キョンヒが働きに出ることをよしとしなかった。
ある日、ソンジャとキョンヒが家事をしているところに二人の男がやって来る。実はヨセプは弟夫婦の渡航費を借金でまかなっていたのだ。返済額は213円。ソンジャはハンスからもらった懐中時計を売ってこれを返すが、そのことがヨセプの逆鱗に触れ一悶着おこっている最中にソンジャは産気付き、そのまま無事男の子を出産。ヨセプによってこの子はノアと名付けられる。
第二部 母国 1939〜1962
ノアが6歳になった頃、ソンジャはイサクとの子モーゼスを出産。しかし、モーゼスが生まれてすぐ、教会の同僚が神社参拝を拒否したことにより、イサクは彼らとともに警察に捕まってしまう。ソンジャは毎朝差し入れを持って警察署にむかうが、決して面会は許されなかった。
ソンジャは生活のためキムチを路上で売ることを決意。キョンヒにも話を持ちかける。ヨセプは当然これに反対するが、キョンヒが売りに出ないことを条件にしぶしぶ承諾する。やがてキムチは評判を呼び、焼肉店からスカウトされてソンジャとキョンヒは調理の働き口を得る。
それから2年ほど経過したある日、イサクが釈放され家に戻ってくる。しかしイサクは衰弱しきっており、帰宅した翌日に息をひきとる。
その後、戦況はどんどん悪化していき、日本は慢性的な物資食糧不足に陥る。焼肉店も閉店を余儀なくされるが、そこにハンスが登場する。実はこの焼肉店はハンスのもので、ハンスは売りに出された懐中時計をきっかけにソンジャの消息を知り、彼女たちの生活を支えるため焼肉店での職を与えたのだった。
ハンスはさまざまな情勢に通じており、やがて大阪も空襲に見舞われるから疎開するようソンジャを諭す。ちょうどヨセプが長崎にて高収入の働き口を見つけたこともあり、一家は大阪の家を売り、ソンジャたちはハンスのつてで日本人農家のもとへ、ヨセプは一人長崎へと旅立つ。また、ハンスはソンジャの母ヤンジンもソンジャの元へ招き入れ、二人は久方ぶりの再会を果たす。
やがて日本は終戦を迎える。長崎にいたヨセプは被曝して大怪我を負い、一家は大阪へと舞い戻る。