あらすじ
全米図書賞最終候補作!オバマ元大統領も絶賛
日韓併合下の釜山沖の小さな島、影島。下宿屋の娘、キム・ソンジャは、粋な仲買人のハンスと出会い、恋に落ちて身籠るが、実はハンスには妻子がいた。妊娠を恥じる彼女に牧師のイサクが手を差し伸べる。二人はイサクの兄が住む大阪の鶴橋へ。しかし過酷な日々が待ち受けていた――。全世界で共感を呼んだ大作、ついに文庫化!
※この電子書籍は2020年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
韓国併合。朝鮮戦争。
文字だけでは重みが分からない。理解できない。
フィクションではあるけど、これ以上に過酷な環境だったに違いない。
全員のキャラクターが立っているし、全員が今日1日を死に物狂いで生きている。辛いけどものすごく感情移入できるし過酷な情景が目の前に広がる。
ただ、イサクと聞くとどうしてもリバプールのイサクが頭に浮かんでしまってブレる。
Posted by ブクログ
再読。なんでこんなに面白いんだ。一つ一つの情景が脳内で克明に映像となって流れる。映画みたい。
彼女たちはなんの落ち度もなく困難な状況に置かれ続けて、必死に生きている。そのことに改めて胸を打たれ、大袈裟でなく、自分も真剣に生きなければと奮い立たされた。
例えば大阪に着いて間もない頃、ソンジャがハンスからもらった懐中時計を質屋に売りに行くシーン。
ソンジャは本当は不安や焦りを内心に抱きながら、冷静に、落ち着いて、誇り高く交渉し、生き抜くためのお金を得た。
ちょうどそのシーンを読んでいたのは、通勤電車の丸の内線社内。霞ヶ関駅に着いて、本を閉じ、いつものように階段を駆け上がりながら、なんだか胸がいっぱいになり力が沸いてくるのを感じた。
おおげさでなく、ソンジャは劣悪な時代と環境をたくましく誇り高く生き抜こうとしてるのに、こんなに恵まれた環境にいる私が頑張らないでどうする、と思った。
初読時はそんなに印象に残らなかった気がするのだが今回ぐっときたのは、イサクが死ぬ前にノアに語りかけるシーン。
「おまえはとても勇敢だね、ノア。父さんよりずっと勇敢だよ。自分を人間として認めようとしない人々に囲まれて毎日を過ごすには、並外れた勇気がいる」
まさにイサクが留置所でそのような日々を過ごしてきたのだろう、だから息子の気持ちが手に取るようにわかるし、息子もそれをわかっている。
初めてそこに思い至った。
私は幸いそのような環境に身を置かれたことがない。
置かれて初めて試されるものがあるのだろうか。
Posted by ブクログ
昨年、釜山に行ったときに影島を訪れた。限られた土地に所狭しと住宅が立ち並び、ここに朝鮮戦争で攻められ避難してきた住民たちが肩を寄せ合って暮らしたのだという話を聞いた。
在日朝鮮人―日本が1910年に韓国併合を実施し、1948年にサンフランシスコ平和条約が発効するまで、韓国から日本に渡ってきた人々とその子孫は特別永住者としての地位が与えられた。朝鮮半島では地勢的影響から、長く他国の占領下に置かれまた東西冷戦の分断最前線として経済発展が抑制されてきた。
貧困にあえぐ人々は着の身着のままで日本に渡り、言語も通じないままバラック小屋のような不衛生な住環境で暮らして日銭を稼ぎながら生きてきた。そのバックボーンには様々な事情があり、母国の朝鮮では次々と戦争が発生して血縁者の安否すら分からない。一方で日本での暮らしも根強い差別や強烈な男尊女卑、忍び寄る戦争の影響など多くの不安が押し寄せてくる。
そんな状況下でもたくましく生き、また数多くの出会いと別れを繰り返して、今日までその血脈と生業を繋げてきたのだという、何とも壮大な親子三代に渡るライフヒストリーの前編である。
Posted by ブクログ
韓国併合~戦後にかけて日本に渡った在日コリアンたちの、四世代に渡る物語。日本の社会に馴染みほとんど日本人のように生きていて、それでもルーツは分断する前の朝鮮で。帰化するかあるいは韓国籍か北朝鮮籍を選ぶ、そのことに割りきれない思いを抱く在日コリアンの気持ちが痛いほど伝わってくる。
おそらく多くの日本人が無意識に内在してしまっている在日差別・ガイジン差別も突き付けられてしんどいけど、日本人はもっと歴史に向き合わなければならないなと痛感させられた。
海外の人が描く日本て違和感を抱くことが多いけど、この『パチンコ』は日本の描写の解像度がすごくて、引っ掛かることなく読めた。ちょうど朝ドラで在日コリアンのことを取り上げているときに読んでいたので、ドラマの登場人物の気持ちと重ね合わせて読めたのもよかった。
Posted by ブクログ
素晴らしい!
国籍差別、人種差別、性差別、学歴差別、職業差別など、多様な差別が渦を巻き、
その中で誤ちながらも強かに生き抜く人たちに頭が下がる。
こうじゃなきゃ! と、応援したくなる。
Posted by ブクログ
日韓併合下の朝鮮で生まれ、貧困の中で育ち、ハンスと恋に落ち息子を授かり、イサクの愛に守られながら大阪へ渡る。
今の私たちには想像もできないような貧困と差別の中、控えめに誠実にたくましく、愛する家族のためだけに生きる女性ソンジャ。
在日韓国人を韓国人の視点から書かれているが、日本を糾弾する内容ではなく、全ての登場人物を愛情を持って書いている点が素晴らしい。
1940年代の在日韓国人の生活に、こんなにも引き込まれて読めるのは、訳者の翻訳力の高さでもあろう。
日本人が知ろうとしなかった在日韓国人の歴史に思いを馳せながら、ソンジャとその息子たちの人生がどのように流れていくのか、下巻に期待したい。
Posted by ブクログ
鶴橋駅はよく行くので、猪飼野の在日コリアンの住宅街から鶴橋駅のキムチ売り商店街までの土地風景はよくイメージでき馴染みやすかった。
戦時中の在日コリアンの、生きるために不遇な環境に争う姿を描いたストーリーで終始弾かれました。
まだ上巻読後ですが、、
Posted by ブクログ
まず思ったのが、私は歴史を知らなさすぎる。戦中戦後の在日コリアンの立場や生活を生々しく知ることができた。その上で戦後80年の現代を生きている私はどう生きるべきなのだろうか。
Posted by ブクログ
朝鮮に生まれながら、時代の流れの中で日本に来て、必死に生きていくソンジヤ。ハンスとの出会いで、息子を授かり、イサクの愛に包まれて日本へと辿り着く。賢く世の中の流れを読み取り、戦争を乗り越えて、陰で彼女と家族を支えるハンス。家族への愛を、それぞれに抱きながら、日々を懸命に生きていくソンジヤとその家族。戦前戦後なので、過酷な運命ながら、一人一人への作者の温かい描き方がとても良い。訳者の方の文章が巧みで、最初から好感を持って、話にグイグイ引き込まれていった。
Posted by ブクログ
ミン・ジン・リー『パチンコ 上』文春文庫。
祖国から日本に渡った韓国人の数奇な人生を描いた大河小説。韓国版の『おしん』という感じのストーリーである。噂通り面白い。
激動の時代の中で祖国に別れを告げ、日本という異国の地で逞しく活きる韓国人。戦時中は日本人も韓国人に負けず劣らず逞しかった。今の時代、軟弱な多くの日本人は言葉もままならない異国で暮らすなど不可能だろう。
日韓併合下の釜山沖に浮かぶ小さな島、影島で下宿屋を営むキム・フニはヤンジャを嫁に迎え、ソンジャという娘をもうける。しかし、ソンジャが13歳の時にフニは結核で静かに息を引き取る。その後もヤンジャは娘のソンジャの手を借りながら、下宿屋を続ける。
17歳になったソンジャは、34歳の仲買人コ・ハンスと恋に落ちて身籠るが、ハンスには大阪に妻子がいることを知り、ハンスに別れを告げる。妊娠を恥じるソンジャに牧師のパク・イサクが手を差伸べ、二人は結婚し、イサクの兄が住む大阪の鶴橋へと向かう。
大阪でイサクの兄のパク・ヨセブとその妻キョンヒと暮らすことになったソンジャとイサクはノアとモーザスの2人の息子を授かる。やがて、戦争は激化し、ソンジャたちは再会したハンスの言葉に従い、田舎へと疎開する。
本体価格960円
★★★★★
Posted by ブクログ
凄え色々な大事な事が詰め込まれてるのに面白い。。。!
上巻の最後で一気に青春モノの香りがしてすぐに下巻読みたくなった。
歴史の上に立っている僕らは産まれた瞬間から罪を背負っているのかもしれません。
というか、自分は歴史を知らなすぎる。
国とはなんなのか、制度とはなんなのか、金とはなんなのか、土地とは、故郷とはなんなのか、人間とはなんなのか、生きるってなんなんでしょうか。
Posted by ブクログ
イサク、あっという間に・・・
もっと知りたかった。
本当に悲痛なんだが。涙でるとこだった。
ソンジャも最後お母さんに会えて良かった!ハンスは良い人なん?
昔と今では考え方が違うのか? いや妻がいるのにおかしいよな。ソンジャ幸せになってほしい。下巻はどうかな。楽しみ。
Posted by ブクログ
夫ではない男の子どもを宿し、ソンジャは日本に渡ってきた…4世代に渡る在日コリアン一家の過酷な物語。
大好きな韓国と日本との関係を考えさせられるという意味ではモヤモヤ感がありますが…
とても読みやすく…壮大で救いの物語面白いかったです。
Posted by ブクログ
グイグイ引き込まれてしまう。シドニィ・シェルダン氏の作品に出てくるような女性の強さと、裕福で権力のある男性から好意を持たれて庇護されるという韓国ドラマのような要素を併せ持った小説。ヨンジャの両親から注がれる愛情、ヨンジャの素直さと素朴さ、ハンスのスマートさ、すべての登場人物が魅力的。戦後の韓国人がどのように暮らしていたのかがわかる。
以外、本書より抜粋。
「本物の悪人がどういうやつか知りたいか。平凡な男を捕まえて、本人も夢見たことがないほどの成功を与えてやるだけでいい。どんなことでもできる立場になった時、その人間の本性が現れる。」
Posted by ブクログ
本当面白い
何世代もの話がドラマチックに進む
ただ、全体を通して最初の人が忘れられない…みたいのはなんか2人目の人が可哀想だな、と思ったがそれも人生か、、
Posted by ブクログ
健康に育つことが難しい時代に、影島に生を受け真面目に働きながらたくましく生きているソンジャという女性。最初は彼女の言動のひとつひとつにハラハラしたり心を持っていかれたけれど、次第に感情移入というよりも、これは一族の歴史を見ているのだという意識に変化していった。同時に国同士の歴史でもあり、これまでさまざまな立場の人々の生活を、具体的に想像したことがなかったことに気づいた。貧しさのなかで家族みんなで助け合って、家族を何よりも大切にしている姿が描かれていて心を打たれる。ソンジャの正しくあろうとする姿勢にホッとする自分がいる。
Posted by ブクログ
著者が韓国系アメリカ人ということもあり、日本人の視点とは違う日本の過去を書き表している。ほんの70〜80年前の話なのに、今では考えられない差別、貧困が描かれている。その辛い生活の中で、必死に生きていく主人公ソンジャの心の動きに、読み手も心を動かされる。
Posted by ブクログ
戦前〜戦中〜戦後にかけての朝鮮人一家の話し。
戦後の混乱と貧困や差別など、複雑な社会情勢の中での人生観や倫理観をテーマにした大河小説なんだけど、三浦綾子の様にもう少しテンポが良いといいかなあ。
内容は面白いけど、会話文よりも説明文が多い印象。
でも表紙のデザインが凄く好き
Posted by ブクログ
⭐︎感想は下巻に
《あらすじ》
第一部 故郷 1910〜1933
釜山の影島にて生まれたフニは、口唇裂と内反足という障害を抱えていたが、聡明な働き者であったため気立の良い娘ヤンジンとの良縁に恵まれる。
2人の間には結婚後すぐ幾人かの子どもが生まれたが、元気に成長したのは女の子のソンジャだけだった。2人はソンジャに愛情をかけ、大切に育てる。
彼女がこの物語の主人公である。
ソンジャが13歳の時、フニは結核で命を落とし、その後母娘は2人で精一杯下宿屋を切り盛りして生計を立てていく。
17歳になったソンジャは市場で一人の身なりのいい男と出会う。名はコ・ハンス。ある日、ソンジャが日本人の学生に陵辱されそうになっているところを助けられたことがきっかけで、二人の距離は急接近。やがてソンジャはハンスの子を身ごもる。しかし、実はハンスには大阪に妻子がいたため、ソンジャと結婚することはできないと打ち明ける。だから、朝鮮の愛人になってくれ、面倒は見る、と。ソンジャはその申し出を拒否し、結局二人は破局を迎える。
ある日、ソンジャとヤンジンが切り盛りする下宿屋に平壌から一人の青年が訪れる。青年の名はイサク。フニと同じく結核を患った牧師であり、体調不良を2人に助けられたこともあって、父無し子を孕ったソンジャを妻として迎え入れる。
影島にて婚礼をすませた夫婦は、イサクの兄ヨセプをたよって大阪の鶴橋へ渡る。
ヨセプには美しく優しい妻キョンヒがいたが、2人は子どもに恵まれずにいた。彼らはイサクからソンジャの事情を聞かされてはいたが、もっともらしい理由をつけて自らを納得させ、イサクとソンジャをあたたかく迎え入れる。イサクは牧師のポストを得るがその給料はままならず、四人の生活はヨセプのビスケット工場での稼ぎにかかっていた。また、ヨセプ自身もそのことを誇りに思い、キョンヒが働きに出ることをよしとしなかった。
ある日、ソンジャとキョンヒが家事をしているところに二人の男がやって来る。実はヨセプは弟夫婦の渡航費を借金でまかなっていたのだ。返済額は213円。ソンジャはハンスからもらった懐中時計を売ってこれを返すが、そのことがヨセプの逆鱗に触れ一悶着おこっている最中にソンジャは産気付き、そのまま無事男の子を出産。ヨセプによってこの子はノアと名付けられる。
第二部 母国 1939〜1962
ノアが6歳になった頃、ソンジャはイサクとの子モーゼスを出産。しかし、モーゼスが生まれてすぐ、教会の同僚が神社参拝を拒否したことにより、イサクは彼らとともに警察に捕まってしまう。ソンジャは毎朝差し入れを持って警察署にむかうが、決して面会は許されなかった。
ソンジャは生活のためキムチを路上で売ることを決意。キョンヒにも話を持ちかける。ヨセプは当然これに反対するが、キョンヒが売りに出ないことを条件にしぶしぶ承諾する。やがてキムチは評判を呼び、焼肉店からスカウトされてソンジャとキョンヒは調理の働き口を得る。
それから2年ほど経過したある日、イサクが釈放され家に戻ってくる。しかしイサクは衰弱しきっており、帰宅した翌日に息をひきとる。
その後、戦況はどんどん悪化していき、日本は慢性的な物資食糧不足に陥る。焼肉店も閉店を余儀なくされるが、そこにハンスが登場する。実はこの焼肉店はハンスのもので、ハンスは売りに出された懐中時計をきっかけにソンジャの消息を知り、彼女たちの生活を支えるため焼肉店での職を与えたのだった。
ハンスはさまざまな情勢に通じており、やがて大阪も空襲に見舞われるから疎開するようソンジャを諭す。ちょうどヨセプが長崎にて高収入の働き口を見つけたこともあり、一家は大阪の家を売り、ソンジャたちはハンスのつてで日本人農家のもとへ、ヨセプは一人長崎へと旅立つ。また、ハンスはソンジャの母ヤンジンもソンジャの元へ招き入れ、二人は久方ぶりの再会を果たす。
やがて日本は終戦を迎える。長崎にいたヨセプは被曝して大怪我を負い、一家は大阪へと舞い戻る。