竹町のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ライラットでの革命も遂に本番へ。様々な不安要素を抱きながらも至った正念場は『灯』がバラバラに活動した1年間を決算するようなもの
彼女らがここまでにどう成長したか、何を成し遂げたかが問われる中で別方面の不安要素として表出したのはアネットの闇か
エルナやティア達は任務が終わった後の明るい未来を考えられる。それは彼女らの特徴であり抱き続ける希望
でも、生来的に他の少女達と異なる人格を持つアネットはそれに迎合できないわけだ
アネットは革命の中心人物ではない。けれど革命に絡むならその要素は危険を齎す可能性がある。そういった面が描かれた巻となったかな
勿論、革命の中心は表紙になっているエルナだね
というか、ライラット編が始まった当初はここまで彼女が革命の中心になとは思っていなかったけど
貴族の生まれとして奉仕精神を持つからこそ困窮する国民の為に腐った王政府を倒そうという運動のシンボルになるのは当然かも知れないけれど、まさかこれ程までに革命精神に適合するとは思わなかった
彼女の存在はそのまま革命の動力となるね
けれど対するニケが『灯』の好きにさせるわけがない
それが描かれたのは中央収容所からの一連の流れか
革命に乗じてリリィ達との合流や革命に影響有る人物を救い出そうとした手際は褒められて然るべきもの
なのに、彼女らの策略を全て読みきりある程度成功させた上で策を乗っ取ったニケは尋常ならざる存在であると判る
それでもリリィ達が成長しているのは確かなんだよね。幾つかの局面ではニケやタナトスを上回るシーンも有った。世界的なスパイや暴力の嵐を前に立ち向かえたなら称賛すべきとも言える
特に表面的には絶体絶命と思われた偽革命が行われた最中にエルナが撃たれたシーンからの逆転劇は素晴らしいもの
この巻で最も驚かされたのは過去においてルーカスとヴィレの双子が実はただ殺されたのではなくニケも藍蝗も出し抜いていた点か
過去編で明かされた藍蝗の正体にも驚かされたけど、やはり双子の実力を前にするとその意外性も霞んでしまう
ニケや藍蝗がどう動くかを完全に制御した上で二人を見逃した
それは双子からのメッセージかな。究極のバランサーである彼が呈したのは争いの無意味さ、暗躍に明け暮れたニケや藍蝗の愚かさ
そうした点を考慮するとエルナ達が革命を成就させる為には己の愚かさを認める必要があると言えるのかもしれない
己の愚かさを見通せない者達は『灯』が作り出した革命の狂乱へと呑まれていく。己の愚かさを認められなかったニケはタナトスの失策や王の亡命により『灯』に敗北した
そして己が愚かと知らなかったアネットが向き合う事になったのは自分を闇の存在と思いこみ見逃していた愛情だね
アネットの愚かさは身の滅びに通じるもの。それを藍蝗に曝け出してしまえばアネットに勝ち目なんて無い
そのような絶望的状況だったからこそ、エルナがアネットの愚かさを受けた上で生き延びて、アネットと同じように愚かになると決断するシーンは本当に良かったよ
これでもうアネットは独りじゃないんだろうね
それにしてもこの巻はどこか不気味さを持つ内容でも有ったような
そもそも革命の4日目が描かれていないのもそうだし、所々情報が欠けたままというのも薄気味悪い
リリィに藍蝗の情報を渡した人物、3人のエルナという修正案を出した人物、双子が散り際に発した「弟たち」が指す対象。革命の後半はニケに捕らえられたとはいえ動向が全く描かれなくなったスージーは気になる
思い返せば白蜘蛛が最期に残した『虹螢』についても判らないまま
現状は『灯』の勝利であるように思える。なのにここから状況を引っくり返し世界に激震を走らせる何かが始まるのだろうか? -
Posted by ブクログ
ネタバレリリィとサラがスパイ養成学校に戻される話が一番好き。なんとリリィ、いじめられていたとは。「女が嫌いな女」タイプではないと思っていたんだけどな。
ゴリッゴリにいじめられぬいた後の最後の反撃は見事でスカッとする。しかも養成学校トップまで脅迫するとは流石。リリィも成長したなぁと最初の駄目っぷりを知っているからこそ感慨深い。
ファルマの兄ダグウィンの希望を叶えるミッションの難易度の高さに関わらず、それをクリアし、且つ孤児院の子どもたちの遊び場まで作ってしまったティアの話も良かった。グレーテのミッションクリアの方法も賢いのだが、私は泥臭く頑張る最近のティアが好きなので、彼女を応援している。
ファルマにはこんなに妹思いの兄がいたのか。この兄妹は二度と会うことはないのだ。何とスパイの世界は酷いことか。
それでも皆、スパイを続ける。ゆるーく過ごしているように見えるリリィたちだが、生半可な覚悟では決して続けていけないんだよね。 -
Posted by ブクログ
作者がコメントで述べているように『スパイ教室』の前日譚であり、クラウスが如何にして今の姿になったかを明かす物語となっているね
クラウスの成長を描くという意味では確かに教室と呼べるものでは有るけれど、どうしたって『焰』は家族と呼びたくなるし、だからこそ『焰』から派生した『灯』もまた一つの家族だと感じられるものだと再確認できたよ
本作を読んで最も意外だったのは初期のクラウスがやんちゃ坊主というか全力で野生児をしていた点かなぁ
そりゃ来歴を考えれば当たり前なんだけど、現在の泰然とした姿勢を当たり前のものとしてみてしまうとかなり意外性を感じてしまうというか
また、後に本編で活躍する事になる人物が登場したり言及が有ったりという点はちょっとしたサービス要素として嬉しくなるね
最初の2年間はまともにコミュニケーションも取れなかった。戦闘能力は高くても人間としてあまりに不足していた。けれど、『焰』の先輩方に育てられて世界最強のスパイへと成長した
それは一息に成長が描かれるのではなく、幾つものエピソードを通して少しずつ成長する彼の姿が描かれたからこそ、そこにはどこまでも『焰』の愛を感じてしまう
でも、それは各話タイトルに現れているように表の物語であるという点が少し物哀しいね…
クラウスは『焰』の愛情を一身に受けるようにして成長した。でもその裏ではフェロニカは一人で世界の暗部を背負っていたし、ギードは裏切りへと突き進んだ。ルーカスとヴィレだって暗部に関わろうとしていたし、きっと描かれていないだけでゲルデやハイジにも何かしら裏は存在するわけで
クラウスはそれらを知らないままに『焰』の崩壊に立ち会った。何も明かされて居なかった事は彼が信頼されていなかったかのように感じてしまいそうになるが、一方でギリギリの瞬間まで彼を表側に留めておきたかったかのように感じられる
でも、それは暗部に立ち入らせないとするものではないから、クラウスが本当の意味で残酷な決断をする為の覚悟を欲した時に背を押す力となっていたね
だからこそ、クラウスを殺せる筈だった銀蝉は失敗し、彼は極限状態から生き残れた。フェロニカが遺した言葉が彼をスパイの世界に留め置かせた
『焰』から受け取った心の炎を分け与えて新たに作り上げた『灯』
それがどのような経緯で生まれたか、クラウスがあの場所にどのような感情を持っているか。それを知れたという意味ではとても良い短編集でしたよ -
Posted by ブクログ
ニケ相手にサラを失うという敗北から始まるこの巻。前巻にて主役のように奮闘したエルナはサラの件だけでなく、自分が救われる側になってしまった事もあってか精神的ダメージは大きいようで
どこに希望があるかも判らない状況。頼れるのは新たに仲間に加わったジビアだけ
革命を目指すエルナ達の反政府活動を思い返せばジビアの行動もその路線に沿ったものになると思っていただけに、彼女の遣り方は面白く感じられたな。エルナやアネットと全く異なる、ジビアにしか出来ない遣り方。
此処にこそクラウスが『灯』をバラバラに暗躍させた価値が活きてくるね
エルナとアネットの活動が全て無駄というわけではない。でもジビアが別方面からアプローチ出来る手段を持っておく事で、一旦手詰まりになった状況でも新たな革命方法を模索できる
そうしてエルナの地下活動、ジビアの交友関係が結実する事で秘密結社『LWS劇団』に行き着くわけだ。
スージーって双子に拾われた当初の弱々しい印象が強かった為か、今巻にて再登場した際のちょっと頭がアレな感じのお嬢さんな感じには少し驚いてしまったり。こんな子が今の『LWS劇団』の代表なのか……
でも、見方を変えれば双子が遺した遣り方が急進的でなかったからこそ、彼女は生き延びる事が出来て、更には危険とある程度の距離を保って暮らせていたと言えるのかもしれないね
ルーカスとヴィレはこの国に幾つもの痕跡を残しているけれど、その最たるものが健全に育つスージーだったように思えるよ。
ただ、『LWS劇団』は秘密結社と言えど、決定的な何かを保有しているわけではない。あくまでも反政府の元締めというだけ。だからそこに加える別の一手が必要になって。ここでようやく表紙を飾る真打ちが登場するわけだ。
モニカとティアが一体何をしていたかは今巻を半分以上読み進めないと判らないという構成が憎いね。彼女らが正体を現した瞬間は驚愕してしまったよ
クラウスが近づくなと忠告したニケの懐に潜り込んだ上で彼女を騙してみせた。それはきっとクラウスですら不可能な荒技
そんな偉業を成し遂げられたからこそ、彼女らの実力が以前と全く異なると理解できる
というか、モニカに至っては成長し過ぎていて、とんでもない存在になってない……?
フェンド連邦で『灯』を裏切った段階で昔のクラウスより強い実力を有していると言及された彼女。けど、今巻の活躍を見る限り、あの時より更に成長し『灯』の一員というレベルに留まらない実力を手にしているように思える。それこそ今ならクラウスに並び立つ実力を披露できるのではないかと期待してしまうよ
だからこそ、モニカを打倒するニケの切り札に驚いてしまったのだけど。
脅威を感じさせない者こそ真の脅威だとすれば、クラウスに並び立ちそうなモニカをして対処が必要と思わせなかった彼の存在はニケにとって最大火力の切り札と言えるのもの。
モニカの急成長に拠って英雄ニケを上回れたと思ったのに、何の布石も無くあのような強者が出てくるなんてね…
敗北の結果を以ってモニカは目標が叶わなかったのかというと、そうではないのが今巻の面白い処
モニカにとって、想いとは知られた事で翠蝶に蹂躙され、無闇に明かした事で仲間の輪に戻り難くなる要因の一つとなったもの
そこから学んだ教訓とは想いは隠し通すべき、想いを露わにすれば利用される。かといって明かさずに居ると大切な人に伝わらない。だからこそモニカはその想いを使うべきタイミングを今回の任務で最大限に意識していたわけだ
仲間にすら知らせない形で自分の想いと願いを成就させたモニカはやはり『灯』の中で最も優れたスパイと言えるのかもしれないと思える終盤だったよ
他方で革命が予想外の道筋を辿りそうな…
真っ当にニケを封じて革命を成功させるかと思いきや、ニケ信仰を増長させる事で革命を加速させるなんて
これは以前に双子がやった事と似ているね。腐敗の中心たる王党派を応援する事で革命に繋げようとした双子の遣り口。形を変えて『LWS劇団』は再起動したと言える
それはもしかしたら2年前の再現かもしれない。今度も国王を退位させられるかも知れない
でもルーカスとヴィレは革命まで辿り着けず死んでしまった。それすらも再現されるというならば『LWS劇団』に潜む本当の悪が何を仕出かすか恐怖を覚えてしまうよ…… -
Posted by ブクログ
ネタバレエルナの成長ぶりが見られると思っていたが、エルナはまだまだ甘かった。それはそうだよね、修羅場を潜り抜けてきてはいるけれど、エルナは天才じゃない。ま、そこが良いのだけれど。
一方で、アネットはますます磨きがかかってきている。躊躇なく人を葬る残酷さが、アネットらしい。今回アネットがいなかったら、エルナは生命が怪しかった。ただ、やはり怖い存在ではある。味方でいる分には良いのだけど。
サラ巻のはずだが、サラの見せ場は結構少なかった。エルナとアネット救出のため、現れたシーンには感動したが、やはり簡単には勝たせてくれないのか。捕まったサラがどうなってしまうのか気になる。
ニケの"最強の敵"感は半端ではなかったし、どうやって彼女を倒すのだろう。洗脳で心を従わせ、それが難しいなら身体に教えこむと言うニケのスタイルは、敵ながらに見事としか言えない。
いよいよ面白くなってきた。国同士の"裏の戦争"の行く末を早く知りたい。
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Posted by ブクログ
最初に表紙を見た際は「これ誰だ…?」って一瞬感じてしまったよ。そのくらい印象が様変わりしたね。それは見た目だけでなく中身も
これまでは分担ごとに別作業・任務に就く事はあっても連携を取らない形でバラバラにスパイ活動を行うなんて無かった
けど今回のライラット王国編はそのバラバラを求められたわけだ
勿論、本人達は納得しているし、任せられるだけの成長を示した背景もある。けどそれを以ってエルナ達が一人前になったと言い切れるわけではなくて
そういった不安定さをこれでもかと感じ取れた巻だったよ
エルナとアネットだけの潜入任務。おまけに目的は革命の実行。戦力的には頼りになっても任務達成という面では元々不安の多い二人
潜入こそ上手く出来ても一度創世軍に見つかった程度で困窮してしまう程度のチームワークと実力。また、エルナとアネットは問題を多数内包するライラット国をどうするのかという点が大きく乖離しているから目的の共有も微妙にズレている
だから上手くいっているように見えて危うい方向に進んでいるなんて当たり前の話で
エルナの失策はあまりにあまりなもの
普通のスパイ相手なら少し近付いたくらいで危機に陥るなんて有り得ない。その点はエルナがニケというスパイの危険度を見誤っていたという点に尽きる
ニケの視界に入った。それだけでエルナの任務は終わりかけた
アネットはエルナの失敗を補う役割を担っているけど、それでニケに敵うわけではない。やはり二人はスパイとしては未熟に過ぎると感じられる程の完敗
革命実行役としては最適かというと疑問符が浮かぶエルナとアネット。けど、他の面々だってギリギリの役目を担っている。そもそもライラットはニケという強大なスパイが居るからこそ分散策を採ったのだろうし
最善の選択が存在するかも判らない難しい局面。クラウス以外に判断できる者が居る訳がなくて
だからこそクラウスはサラの反対意見に感動しつつも厳しく反対したのだろうね
以前のサラならその時点で折れて引き下がるようなクラウスの強硬な態度
ここで現実に負けるより理想と心中したいと決意するとは以前の彼女を知っていれば知っているほど驚かされるね
スパイとしては有り得ない夢。でもサラはその夢を本気で叶えようとしている。その本気は誰もの認識を上回るもの。
以前、サラはアネットの闇を受け止めた。あの時はアネットの理性的でない面を許容した為に受け止められたのだと思っていた
でもその時に生まれた繋がりがサラを『悪』に変えていくとは思わなかったな。勿論、アネットのような完全悪ではないのだけど、人に合わせてばかりのサラはアネットの『悪』に触れる事で変われたのだろうね
生まれ変わったサラだから嘘に嘘を塗り固めるような遣り方でニケを一時的に上回れる
でもサラが本質的に持つ皆の未来を守ろうとする姿勢は失われない。だからサラの《秘武器》はバラバラになったスパイ少女達を繋ぐものであり、革命の希望も失わせないものになる
負けそうだったけど負けに終わらなかったニケとの対面。また、他のスパイ少女達も躍動を始めようとしているようで
ここに謀略の双子が残した『LWS劇団』や『お姫様』はどう関わってくるのかな?